幻獣士の王と呼ばれた男

瑠璃垣玲緒

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第2章

留守番

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町中で買い物を済ませ、魔性植物園に寄った。
事情を話して果実や植物を集める間、この前とは別の魔素が溜まる場所へ連れて行ってもらった。
寝ていたはずが魔素の気配を感じたのか起きて来て、自ら進んで溜まっている場所に歩いて行った。
小さな足では持ち上げて降ろした方が早かっただろうが、意志を尊重したかったから好きにさせた。
気持ちが良いのか頭を上げている様子は微笑ましい。
目的の物を譲ってもらい町を出た。
自宅へ戻ると色々な物が集められていた。
皆んなを労って、町で集めた物を含め、生き餌以外をマジックバックにしまった。
生き餌は容器に移して牛舎の隅に置いた。
火蜥蜴を麒麟に預ける。
丁寧に体を舐めて綺麗にして、ルナに渡していた。
明日火蜥蜴のこと聞きにトラヴァーに行くが、麒麟とクレド以外は留守番することを告げた。
ソルとルナ、スティードが異議を唱えたが、今回は日帰りのつもりで出来るだけ早く帰ること、トラヴァーには幻獣しか入れないことを説明して、渋々納得させた。
成獣になったら連れて行く約束をさせられた。
妖精と精霊はまだ来たばかりで帰るのは嫌だと言ったので、留守中に来客が来た時でも立ち入り許可をしていない場所で大人しくしていることを条件に置いていくことにした。
翌朝火蜥蜴用の携帯食にコッコの茹で卵と、魔物の蜂蜜と牛乳を用意した。
ウォーレンが馬車でやって来た。
籠とマジックバックだけを持って、クレドと麒麟を荷台の後ろに乗せて出発する。
火蜥蜴は横たわった麒麟のお腹の上に乗せて、クレドが上から覆って温めている。
少し早足で進んだため揺れたが、狼犬達の狩りもなく、食事も速度を落として止まらずに交代で食べたため、お昼休憩時間中に到着した。
冒険ギルドに降ろしてもらい、ギルド長に挨拶を兼ねて火蜥蜴をお披露目をして、冒険ギルド職員にトラヴァーの近隣の森の入り口から馬車で行けるところまで送ってもらった。
いちおう門が閉まるまで間に合う時間の2時間前にこの辺りに迎えに来てくれる。
それに間に合わない時には朝にもう一度来ることになった。
馬車から降りて先に食事を済ませると、火蜥蜴はレナードのお腹のポケットに入れた。
仮契約で少しは言葉が分かるようで、大人しく入ってくれた。
クレドに前回の発見場所への先導を頼んで、早歩きで進む。
休憩のため前回の洞穴に行くと調査隊の冒険者が居て、休憩中の付近の警戒を快く引き受けてくれたので、火蜥蜴にコッコの茹で卵を与えることが出来た。
前回の森の帰り同様に、トラヴァーに近づくほどに魔獣や魔物に出会わなくなった。
森の入り口を一歩進むと、妖精達が集まって来た。
《レナードガ来タ。幻獣ヲ連レテ来タ》
伝言ゲームのように次々と現れては、奥へと声が遠ざかっていく。
以前来た場所で待っていると大精霊が現れた。
《良ク来タ。妖精ドモハオラヌヨウダガ、何カ他ニ用カ?》
《はい、火蜥蜴が無事に産まれました。
その報告と育て方を教えていただきたく、早々と来てしまいました》
《ソウカ、ソレハ良カッタガ、同行シタ者ガ教エナカッタノカ?》
《教えてくれましたが、食べ物や注意点などまでは分からないようなので来てしまいました》
《アレラニハ荷ガ重過ギタカ》
《でも一生懸命手伝おうとしてくれましたよ》
《今度ハモウ少し上ノ者ヲ付ヨウ。
トコロデ前回ハ名乗ッテナカッタナ。
我ハ水ノオンディーヌサマノ麾下、ネーベルト言ウ》
《ご丁寧にありがとうございます。
私はレナードという薬師で幻獣使いでもあります。
動物達の薬も作っています》
《火蜥蜴ノ餌ダガ、アレラハ雑食ダガ、肉ヲ多ク食セバ気ガ荒ク、植物ヤ木ノ実ヲ多ク食セバ穏ヤカニナルヨウダ》
《では、ある程度動物性の物を与えれば良く、基本的には草食性の物を与えれば穏やかな性格になるのですね》
《ソウナル。アトハ1ヶ月ハ温カイトコロデ過ゴセバ大丈夫ダ。
ソレ以上ハマタ来タ時ニ教エヨウ》
《ありがとうございます。
ほぼ予想通りでしたので問題無さそうです》
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