幻獣士の王と呼ばれた男

瑠璃垣玲緒

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第2章

馬車

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翌朝、前の日の夜と同じパンとスープの食事を済ませる。
特にトラブルもなく過ごした。
撤収作業をしスティードに荷物を乗せて町の門をくぐるり冒険ギルドに向かう。
幻獣舎に皆を預け、受付嬢の元へ行く。
馬車の出発時間を尋ねると、既に裏庭に用意してあるというので、使わない荷物などを取りに幻獣舎へ行く。
スティードも麒麟の子も、荷物を持つことにこだわるため、いざという時に手放せない重要な物を担当させると喜んだ。残りを荷台の隅に置いてから、幻獣舎内で職員が呼びに来るまで順番にマッサージをしていた。
幻獣達を連れて馬車のところへ行くと、既に出発の準備が整っていた。
研修に行くのは、育成計画責任者として商業ギルドのウォーレンが、他にエヴァと、冒険ギルドのイリアナの2人の女性が行くらしい。
今はルナを荷台に乗せ2人がかりでブラシングをしている。
御者席にウォーレンと並んで座りながら話しを聞くと、研修に誰が行くかで議論になった際、彼女らが日頃の鬱憤を訴えて泣き落としのような形で獲得したらしい。
危険が伴ったり、経験値がないなどの理由で行きたい研修に参加出来ないとか、
変異種の幼体の体調変化は女性のが気付きやすいとか、とにかく勢いに押されたようだ。
2人のブラッシングという名の拷問から解放されたソルとルナは、ストレス発散とばかりに獲物を狩りに行ってしまった。
クレドを追わせ、離れ過ぎないよう注意するよう指示した。
女性2人と妖精と精霊は、馬車の中でファッションショーらしいものをしていた。
人間と一緒にデザイン画を起こし、それを基に魔法や精霊魔法で自分の服を変化させていた。
キャッキャとはしゃぐ声が聞こえてくる。
ソルとルナがホーンラビットをそれぞれが咥えて帰って来た。
ちょうど昼時だということで、街道から少し外れた空き地に移動し食事になった。
ホーンラビットの血抜きと解体は女性2人が担当した。
料理はウォーレンが担当だった。
2人は味音痴らしく、仕事上で料理は禁止されているという理由で。
正確には味付けが禁止だと主張していたが。
2人共手際が良い。
大雑把な者が多い冒険者と違い、丁寧な作業のため比較的綺麗に捌いている。
冒険ギルドは職員全員が解体が出来るよう研修を受けているが、他の職員を納得させるだけの実力はあるようだ。
幻獣や希少種は成体になると毎日食事をしなくても、魔素があれば良い。
一昨日も魔獣をしっかり食べたため、おやつの魔性果実だけで大丈夫だ。
全員に果実を与えると喜んで食べた。
スティードと麒麟の子が寄り添うように座ると、守るように2頭を挟んで横たわる兄弟、その隙間に埋まる妖精と精霊。
クレドだけはレナードの右肩に止まり、毛繕いの後寝ていた。
寛いでいる幻獣達の姿に癒されながら昼食を食べた。
妖精と精霊を以外が女性陣に警戒して近付かないことを除けば、順調に進んだ。
行きと違い、慣れ親しんだ場所へ帰るということが分かるから、兄弟が興奮し過ぎて暴走することがなかったからだ。
先にレナードの家に寄り、リベルタへ持って行く物以外の荷物とトラヴァーの子達以外を降ろす。
ちょうど餌やりついでに庭に泊まって、自分の幻獣達と森に行っていたアーウィンが帰って来た。
「リベルタへ急ぎの用が出来たので、帰って来るまで居てもらっても良いだろうか?」
「構わんよ。
俺の幻獣達もそこの森で自由に走り周るのが好きになったようだ」
豪快に笑って白狼のボスをガシガシと乱暴に見えるが、愛おしそうに撫でていた。
ボスが幻獣で他の5匹は魔獣、全部仮契約を結んでいて、群れで討伐対象を仕留める。
どうやら餌やりついでに庭にテントを張って泊まり、1日森で遊ばせていたようだった。
帰りは貸し馬車に乗って来るのでそれに乗ってリベルタに戻り、馬車を返して欲しいと頼み、家の鍵を渡すと待たせていた馬車でリベルタへ向かう。
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