幻獣士の王と呼ばれた男

瑠璃垣玲緒

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第1章

世話

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それからは日々の日課に餌やりの時間が倍増し、本業のポーションや薬作りが滞った。
仕方なく子供達の食事がてらの素材採取がメインの収入源に変わった。
幸いなのは魔物の赤ちゃんは成長が早いこと。
毎日幼体と子犬達、子馬を連れて森へ行く。子馬と幼体は目の届くところで大人しく草を食んでいるが、子犬達は好奇心のままに駆け回り、雑食で色々突いては逃げ帰って来たり、変なものを食べて戻って来て鳴いていた。
一度養い親だった銀狼が来た時は大変だった。
子馬は怯えてレナードの側を離れず抱き締めてないと念話で叫び続けるし、幼体は銀狼に擦り寄って甘えているし、子犬達は1匹は興奮して飛びかかり、もう1匹は威嚇して吠えてカオス状態だった。
子犬達は銀狼に叱られて大人しくなった。
そして銀狼から賑やかそうで安心したというのと、呆れが混じった念話が送られて来た。
一気に賑やかになった分、幼体も寂しがることは少なくなった。
ただ時々変異種のチビ達は親が恋しいのか、レナードのところに集まってきて撫でてもらいたがった。
鷹はいち早く成長し、訓練も進んで飛べる距離が長くなったので、一緒に森へ行くようになったので、仮契約をして『クレド』と名付けた。
大所帯で森に行くので、以前は良く見かけた小動物や草食系の生き物の姿が見ることが減った。

両ギルドに連絡なしでの訪問を解禁の連絡をした途端、その日の内に羽を怪我した年老いたグリフォンと、我が子を密猟者に攫われかけて重傷を負った水豹の親子が運ばれて来た。
グリフォンの方は幻獣使いに飼われていたが、今回の怪我を機に引退することになったが、治療の間は森の近くのここで過ごさせてやりたいという元主人モルガン氏の希望で預かった。
水豹は雪豹と並んで珍しい魔獣で、最上位種でもあるため、成獣になると水魔法が使えるため人気が高い。
幼獣の間は成長のための肉食でもあるため、親獣は身体能力と魔法で狩りをする。
囮で親子を引き離し、攫おうとしたらしいが、気づいた母獣が戻って戦闘になり、幼獣を庇って傷付き威嚇しているところに、この町の冒険者達が異変に気付きて駆けつけ保護されたという。
保護したパーティメンバーに中級の治療が出来る者がいたため、致命傷の治療は済んでいたが、人間にしか使ったことがないため、不安になってここに連れて来たらしいが。

「流石にタイミングが悪いなぁ、2匹の幻獣を治療出来るほどの魔力はないんだよなぁ」
人が居なくなった部屋でひとりごとをつぶやく。
成体になったばかりで鳥類のクレドでは、銀狼の時のように大きく魔力量が増えることはない。
本業に特に魔法が必要ではなかったので、魔力量を上げるように限界まで使い切る訓練を毎日やる必要もなかった。
しかも我が家には幻獣のほとんどが成体前のため、ほぼ毎日なんらかの気か、食べ物を与える必要があるため、一人暮らしの今は、魔力切れを頻繁に起こす訳にはいかない。
とりあえずは色々なことを町で相談したいからと、ヘルマン氏に簡単に事情を話して、早めに手伝いに来て欲しいと魔電信で頼んだ。
返事はその日のうちに来て、明後日来てくれることになった。
子馬を連れて幻獣舎へ行き、チビ達に明後日にレナードが町に行く間にグリフォンの元主人のモルガン氏が世話をしてくれることと、森にはいけないことを説明した。
子犬達は森へいけないことに不満気だったが、人間が怖い2匹は黙って聞いていた。

翌朝は明日のために早めに森に行き、充分に森を堪能させた。
朝晩とグリフォンと水豹には魔石を使って水の回復魔法をかけ、その後に獣にも効く傷薬を塗っている。
水豹の3匹の子供達は母獣の側を離れないため、幻獣舎に鍵をかけて羽以外は怪我のないグリフォンに様子を見てくれるように頼んでおいた。
成体には魔物の肉を、子供達には魔性果物を食事として与えるが、グリフォンは子供達と半分交換している様子だった。
好きに食べればいいので、そのままにして、後日じっくり話しをしようとレナードは決めたのだった。

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