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第2章

幻獣士誕生

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《話シ合イハ終ワッタナ。名ハ決メタカ?》
《決めてあります。アルバです》
レナードは麒麟の子の正面に立ち片膝を付き、目を合わせる。
《ボクハアルバ?》
《嫌なら変えるけどどうかな?》
《アルバガイイ》
麒麟の嬉しそうに目をキラキラさせてレナードを見上げた。
《仮契約トハ段取リト、聖句ガ違ウ。
先ニ名付ヲスル。
ソシテ聖句ハ『永遠とわ』ニナル》
フェンリルは伏せた状態から立ち上がり、レナードに少しだけ近付く。
《私ガ先ニ宣誓ノ聖句ヲ唱エル。
ソノ後ニ、幻獣ノ名ト聖句ヲ唱エルノダ》
オンディーヌが双方を確認するように見やると宣誓した。
《デハ、獣ノ王ヨ、始ヨ》
【我、獣ノ幻獣王ガ古ノ盟約ニヨリ、創造神クレアーテニ問ウ、本契約ノ許可ヲ- オーソライゼイション -】
辺り一面にキラキラとした光が空から降ってきた。
光が消えるのを確認してからレナードが続ける。
【我、レナード・ボールドウィンが女神タフヴィリアに願う、アルバと永遠の絆を結ぶことを- リガーレ -】
レナードの手のひらから麒麟の子へと光が伸びて全身を包み、額に吸い込まれた。
《仮契約と少し違いますね。
もっと親近感が増すように感じます》
《僕、寂しくないよ!
少し離れているのに抱きしめられてるみたいに感じる!》
いつも沈んでいるように見えたのは寂しいせいだったのかとレナードは反省した。
《次ハ水ノ王ノ番ダナ》
オンディーヌがレナードの前に立つ。
【我、水の精霊王ガ古ノ盟約ニヨリ、真実ノ神ベリタスニ願ウ、眷属ヲ使者トシテ遣ワスコトヲ- マンデイト -】
空中に水色の魔方陣が一瞬現れて消えた。
水の精霊の眷属である中級精霊がレナードの目の前に現れた。
《我ノ代ワリニ、ソナタト共ニ行ク。真名ハ本契約ニナッテシマウカラ教エラレヌガ、仮名ヲ付ケルガ良イ。
用ガナイ時ハ隠レテ居ルガ、名ヲ呼ベバ姿ヲ現シ、ちからヲ貸ス》
《ありがとうございます。
オンディーヌ様にお話ししたい時も頼れば良いのでしょうか?》
《内容ニヨルガ、ネーベルニ頼レ。
我ハココニハオラヌ故》
《承知しました。
アルバと契約を結ぶ許可をいただきありがとうございました》
《構ワヌ》
《礼儀ヲワキマエル者ニハ当然ノコト》
《ネーベル、後ハ任セタゾ》
その言葉を最後にかき消すように消えた。
《ネーベル様、何か大事になったみたいですが良いのでしょうか?》
《王ガ決メラレタコト、心シテ受ケルガ良イ》
《はぁ。では先ず名前を決めますね。
う~ん、ヒュードルはどうだろう?
何処の国の水を意味する言葉なんだけど》
手のひらから精霊に向かって光が飛んで行き、一瞬全身が光って消えた。
《私ハ、ヒュードル!》
嬉しいのか空中でくるりと宙返りした。
《名ガ気ニ入ッタカラ、仮契約ガ成立シタノダ》
状況をネーベルが説明してくれて助かった。
《火蜥蜴ノトコロデヘ戻ッタラ、森ノ入リ口マデ送ロウ》
クレドは突然レナードと麒麟の子の姿が消えて心配していたが、火蜥蜴の面倒もきちんと見てくれていた。
労いを込めて頭を撫でる。
寝ていた火蜥蜴を起こさないように抱き上げてお腹ポケットにソッと入れた。

本人達は全く気付いていないが、今まで人族は仮契約しか出来なかったから幻獣使いしか居なかった。
だが、幻獣と本契約が出来てしまったため、レナードは全く望まないまま、薬師であり、初の幻獣士となってしまった。
そして自分達が人間の歴史上前例がない事を興味本位にしてしまったことを、のちに自慢気にレナードのことを精霊王同僚に話して、叱られることとなり、何故自分達も連れて行かなかったのかと幻獣王達同僚に責め立てられることになるのは別のお話し。
ちなみに過去に他の人族には幻獣士になった者は居たが、公的な文章は何処にも残っておらず、伝説の中の夢物語として一部の地域に残っているのみだった。
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