206 / 267
28 思えば、遠くにまできたもんだね_02
しおりを挟む
* *
何だろうなぁ、……アイツ。
ハルコンは、何か釈然としないまま配膳コーナーで朝の定食を受け取ると、一人で空いた席に向かった。
すると、周囲の学生達が男女年齢問わず、こちらの方をちらりちらりと見てくるのが窺えた。
やはり、先日の武闘大会で、兄達の率いる弱者連合を盛り立て、優勝候補筆頭のイメルダのサークルをコテンパンにしたことが大きかったのかもしれない。
周りの学生達の目は、とても好意的だ。同じくらいの年齢の女子達に至っては、男子アイドルに憧れるような目つきをしていた。
ふふふ。注目されてる、注目されてる。
ハルコンは、前世の晴子の時も含めて、同じ世代の女子達からとても人気があった。
晴子は、身長が170センチくらいでモデル体型。黒髪のロングに、琥珀のような瞳の、まさに絶世の美女だった。
薬学、生物学系の学部に所属した頃から、非凡な人物として注目を集めた。特に理系の女子達に、……。
まぁ晴子としては、こちらに怖気づいて挨拶すらできない男子達なんかよりも、何とか友人になろうと一生懸命近づいてくる、地味な女子達の方に目が向いていった。
その結果が、……晴子を核とする、何人たりとも寄せ付けない絶対領域の出来上がりだ。
あれだけ性格がよく、頭脳も並列処理の天才。ルックスも抜群な彼女が生涯独身だったのは、とにかく周りの女子達から、アイドルの王子のように慕われていたからだ。
でも、そんな晴子は、一部の男子達とあえて距離を詰めて接していた。
そして、そんな男子学生達の多くは、学部を卒業後、大国アルメリア合衆国のハルベルト大学の研究室への留学が決まっていた。
もちろん、優秀な晴子にも上から声がかかっていた。
でも、晴子はハルベルト大学の教授らに対し、いちいち尊大だったり、見下す態度をしてくるため、強い疑念を抱いていた。
特に、「キミがウチの研究室に留学するのなら、ひとつだけ席を用意しておこう。その代わり、キミの師事する○○教授は見捨てるべきだ。彼はもう最先端の人間ではないのだからな!」という傲慢さ。
普段温厚で柔らかい性格の晴子でさえ、この件は、思い出しただけでも腹が立つ。
当時の晴子は、同業とは敵対しないよう細心の注意を払った。
晴子の周囲には、善意と愛で人々が集まっていたものの、晴子は傍に留学組も数名残していた。
「晴子さん、何であんなヤツ、近づかせるのよ! 絶対酷いことするから、相手しちゃダメだよっ!」
そう言って、親身になって忠告してくれる仲間もいたのだが、……。
でも、晴子には晴子なりの合理的な考えがあった。
『親しい者は近くに! 敵対者はより近くに!』
そうすることで、何かこちらが不利益を被る前に、敵対者の行動を把握することが可能だ。
そんな過去の記憶が、ふとハルコンの鼻先をかすめた。
一人で学食の席に着くと、相変わらず注目の的。
でも、周りは皆遠慮して近づこうとしない。
まぁ、いつものことだと思い、パンをスープに浸していると、……。
そんな中、ハルコンの目の前の席に、定食のトレーを置く者がいた。
ちらりと見上げると、それはノーマン・ロスシルドだった。
何だろうなぁ、……アイツ。
ハルコンは、何か釈然としないまま配膳コーナーで朝の定食を受け取ると、一人で空いた席に向かった。
すると、周囲の学生達が男女年齢問わず、こちらの方をちらりちらりと見てくるのが窺えた。
やはり、先日の武闘大会で、兄達の率いる弱者連合を盛り立て、優勝候補筆頭のイメルダのサークルをコテンパンにしたことが大きかったのかもしれない。
周りの学生達の目は、とても好意的だ。同じくらいの年齢の女子達に至っては、男子アイドルに憧れるような目つきをしていた。
ふふふ。注目されてる、注目されてる。
ハルコンは、前世の晴子の時も含めて、同じ世代の女子達からとても人気があった。
晴子は、身長が170センチくらいでモデル体型。黒髪のロングに、琥珀のような瞳の、まさに絶世の美女だった。
薬学、生物学系の学部に所属した頃から、非凡な人物として注目を集めた。特に理系の女子達に、……。
まぁ晴子としては、こちらに怖気づいて挨拶すらできない男子達なんかよりも、何とか友人になろうと一生懸命近づいてくる、地味な女子達の方に目が向いていった。
その結果が、……晴子を核とする、何人たりとも寄せ付けない絶対領域の出来上がりだ。
あれだけ性格がよく、頭脳も並列処理の天才。ルックスも抜群な彼女が生涯独身だったのは、とにかく周りの女子達から、アイドルの王子のように慕われていたからだ。
でも、そんな晴子は、一部の男子達とあえて距離を詰めて接していた。
そして、そんな男子学生達の多くは、学部を卒業後、大国アルメリア合衆国のハルベルト大学の研究室への留学が決まっていた。
もちろん、優秀な晴子にも上から声がかかっていた。
でも、晴子はハルベルト大学の教授らに対し、いちいち尊大だったり、見下す態度をしてくるため、強い疑念を抱いていた。
特に、「キミがウチの研究室に留学するのなら、ひとつだけ席を用意しておこう。その代わり、キミの師事する○○教授は見捨てるべきだ。彼はもう最先端の人間ではないのだからな!」という傲慢さ。
普段温厚で柔らかい性格の晴子でさえ、この件は、思い出しただけでも腹が立つ。
当時の晴子は、同業とは敵対しないよう細心の注意を払った。
晴子の周囲には、善意と愛で人々が集まっていたものの、晴子は傍に留学組も数名残していた。
「晴子さん、何であんなヤツ、近づかせるのよ! 絶対酷いことするから、相手しちゃダメだよっ!」
そう言って、親身になって忠告してくれる仲間もいたのだが、……。
でも、晴子には晴子なりの合理的な考えがあった。
『親しい者は近くに! 敵対者はより近くに!』
そうすることで、何かこちらが不利益を被る前に、敵対者の行動を把握することが可能だ。
そんな過去の記憶が、ふとハルコンの鼻先をかすめた。
一人で学食の席に着くと、相変わらず注目の的。
でも、周りは皆遠慮して近づこうとしない。
まぁ、いつものことだと思い、パンをスープに浸していると、……。
そんな中、ハルコンの目の前の席に、定食のトレーを置く者がいた。
ちらりと見上げると、それはノーマン・ロスシルドだった。
141
お気に入りに追加
966
あなたにおすすめの小説
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?
夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。
気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。
落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。
彼らはこの世界の神。
キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。
ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。
「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活
高梨
ファンタジー
ストレス社会、労働社会、希薄な社会、それに揉まれ石化した心で唯一の親友を守って私は死んだ……のだけれども、死後に閻魔に下されたのは願ってもない異世界転生の判決だった。
黒髪ロングのアメジストの眼をもつ美少女転生して、
接客業後遺症の無表情と接客業の武器営業スマイルと、勝手に進んで行く周りにゲンナリしながら彼女は異世界でくらします。考えてるのに最終的にめんどくさくなって突拍子もないことをしでかして周りに振り回されると同じくらい周りを振り回します。
中性パッツン氷帝と黒の『ナンでも?』できる少女の恋愛ファンタジー。平穏は遙か彼方の代物……この物語をどうぞ見届けてくださいませ。
無表情中性おかっぱ王子?、純粋培養王女、オカマ、下働き大好き系国王、考え過ぎて首を落としたまま過ごす医者、女装メイド男の娘。
猫耳獣人なんでもござれ……。
ほの暗い恋愛ありファンタジーの始まります。
R15タグのように15に収まる範囲の描写がありますご注意ください。
そして『ほの暗いです』
異世界転生したら何でも出来る天才だった。
桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。
だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。
そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。
===========================
始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。
平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]
ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。
「さようなら、私が産まれた国。
私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」
リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる──
◇婚約破棄の“後”の話です。
◇転生チート。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^
◇なので感想欄閉じます(笑)
5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる