角の生えたサルたち

西洋司

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なら、協定はもうしばらくの間、有効だな?_02

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 事件後、五砲家本家は、……総力を以って報復に専念した。

 結果、銀行側に多数の行方不明者が出ることになるのだけれど。
 でも、恐ろしいことに噂のひとつも起こらず、……マスコミが騒ぐこともなければ、警察も沈黙を貫き通していた。

 阿瑠琉の街の人々は、本家が再び力を示したことを歓迎。
 ショッピングモール再開発の計画が一度見直しになっても、誰も異論を唱える者はなかった。

 現在、ヨウ姉さんは本家にて身柄を保護されている。
 今回の件もあり、彼女はかねてからの希望どおり、ニューヨークの美術学校に留学する旨を両親に伝えると、2人はその決断をとても喜んでくれた。

 母親がいつ頃から留学する予定かと訊ねると、来年の春休みを以って、高校に休職願を出すとのこと。
 まだ半年先のことではあるけれど、できればそれまでの間、本家にて留学の準備を進めたいのだという。

 ヨウ姉さんは、アトリエ兼住居の山小屋から持ち出せるものを全て持ち出すと、本家の自室に閉じこもって、朝から晩まで絵画三昧の生活を送っている。

 たまにショウタとシノが彼女の部屋を訪れると、その作品を見ていろいろと注文を伝えている様子。
 2人の反応に、ヨウ姉さんはそれなりの手ごたえを感じているようだ。

 そんなある日のこと、……ショウタがそろそろ未来に戻ると伝えて来た。
 
 本家の敷地の隅にある土蔵の中に、ホノオの家族4名とマホ、それにシノ、ショウタの計7名で入った。
 中は朝日が差し込んで、くだんの作品を覆った紫色のサテンの布が、……キラキラと輝いていた。

 一同は、曾祖父の残した絵画を改めてじっと見る。

「はいっ、これで間違いありませんっ!!」

 ショウタは、この桑の葉を持つ少女の絵画がアイコンであることを正式に認めた。
 ホノオの父親から恭しく受け取り、それを携えて未来に帰還することを改めて伝えるのだ。

「ショウタ君、……この時代は、楽しかったかい?」

 穏やかな笑顔でホノオの父親が訊ねた。

「はい、とても楽しかったです。皆様にはこの3年間大変お世話になりましたっ!」

 そう言って、屈託なく朗らかに笑うショウタ。

「何だか寂しくなるな。いつだってこっちに戻って来ていいんだぞっ!」

 ホノオの言葉にショウタはちょっち感激した様子で。任務が完了したら今度は遊びに来ることを伝えると、……2人は、お互いの拳と拳をコツンと当ててニィッと笑い合った。

 マホが、あなたにはホンとお世話になったわ、いろいろと相談に乗ってくれてありがとうね、と言うと。

「そりゃぁ、マホさんはボクの義理のお母さんになるんだから、……これ位、当然だよっ!!」

 ショウタの言葉に、マホは湯気が出る位真っ赤な顔になる。
 へへへっと、悪戯っぽく笑うショウタ。
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