88 / 97
いっつも対抗意識バリバリ_01
しおりを挟む
タイムトリップから数日後、……今度こそホンとの祭りが始まった。
だけど、現実の前夜祭はトリップ・リアリティの世界で体験したように、全長2尺6寸のロケット花火で追い駆けられるような危険なものでは決してない。
五甲山の中腹までの道のりを地元の子供達が花火で照らし、その年のカップル達が行儀良く並んで登るという、何とも女子ウケしたイベントなのだ。
男子にはワリとどうでもいいことだが、女子からすると、……エスコートする男子の優しさとか侠気とか、いろいろと判断できる大事なイベントなのだそうで。
トリップ・リアリティにおいては、ホノオはマホとカップルを組んで積極的に参加したのだが、……でも、現実世界において、こんなカップル限定のイベントに参加するのは、かなり恥ずかしい。
マホにそれとなく訊いてみると。
「まだ、……私達は、カップルという程ではないから」
何だか消え入りそうな声で言われてしまった。
彼女の様子が妙にしおらしくてかわいかったので、まぁ今年は見送ってもいっかとホノオは思った。
聞いた話によると、今年は例年に比べ、参加カップルの数がかなり多かったらしい。
それも、真善美高の2年生がダントツに多いのだとか。ホンと何でだろ?
シノとショウタも、記念に参加するのかなぁと思ったけど。2人ともパスとのことで。
それでも、この前夜祭イベントには興味があったようで、……麓から皆で見物することにした。
すると、観客の中にゴリオやリンゴ達もいて、同じように見物していた。
ホノオが声をかけると、リンゴは首を何度も横に振って猛烈に否定する。
「あぁっ、もうムリムリッ! 何かアレに参加したらさぁ、街公認になっちゃうじゃん! だからパスだよっ!!」
ゴリオは彼女の言葉を横で聞きながら、何とも言えない顔つきをしていた。
まぁ、コイツらは当分今のまんまなのかもなぁとホノオは思った。
その代わりと言っては何だが、翌日の本祭天女祭り神前行事として、真善美高と改進高の2校による対抗戦が急遽行われることになった。
何でも先日の騒ぎの後、ゴリオ達とマホ達生徒会との話し合いで決まったそうで。
祭りの実行委員会にも顔の利くヨウ姉さんのツテもあり、本年度の演者は、両校の有志で行うことに決まったのだ。
「リンゴ。明日は私達真善美高が勝ちに行くわよっ! 精々吠え面かいてなさいっ!」
マホが凄んで睨みつけると、リンゴは気圧されることなくニヤリと不敵な笑みを浮かべ、
「お嬢に凄まれても全然怖くねぇ。何だかヒヨコさんがピヨピヨと囀っているみたいっ! いやっ、ゆで卵が何か喚いているのかなぁ!?」
そう言って、腹の底から哄笑するのだ。
何でコイツらって、……いつもいっつも対抗意識バリバリなんだろう? とホノオは思った。
「まぁまぁ、ママさん落ち着いて!」
シノの言葉に、マホは酷く取り乱すと、
「誰がキミの母親かっ!?」
でも、言い終える間もなく、……ハッと驚いた顔をして、シノのことをまじまじと見た。
顔のつくり、背格好は言われてみると、どことなく自分に似てなくもない。
でも、胸が、特にお胸がっ!? シノのボイン具合に、思わず悲鳴を上げそうになるマホ。
「誰が父親よっ? 一体誰っ!?」
マホの必死の問いかけに対し、シノは内緒っ! とだけ言って笑った。
形のいい唇を一本指でシーっと構えて悪戯っぽく笑う、……その表情に、マホは酸っぱい顔になる。
でもまぁ、ブレないのもコイツらの取り柄のひとつなのかな? ホノオは一人納得するのだった。
だけど、現実の前夜祭はトリップ・リアリティの世界で体験したように、全長2尺6寸のロケット花火で追い駆けられるような危険なものでは決してない。
五甲山の中腹までの道のりを地元の子供達が花火で照らし、その年のカップル達が行儀良く並んで登るという、何とも女子ウケしたイベントなのだ。
男子にはワリとどうでもいいことだが、女子からすると、……エスコートする男子の優しさとか侠気とか、いろいろと判断できる大事なイベントなのだそうで。
トリップ・リアリティにおいては、ホノオはマホとカップルを組んで積極的に参加したのだが、……でも、現実世界において、こんなカップル限定のイベントに参加するのは、かなり恥ずかしい。
マホにそれとなく訊いてみると。
「まだ、……私達は、カップルという程ではないから」
何だか消え入りそうな声で言われてしまった。
彼女の様子が妙にしおらしくてかわいかったので、まぁ今年は見送ってもいっかとホノオは思った。
聞いた話によると、今年は例年に比べ、参加カップルの数がかなり多かったらしい。
それも、真善美高の2年生がダントツに多いのだとか。ホンと何でだろ?
シノとショウタも、記念に参加するのかなぁと思ったけど。2人ともパスとのことで。
それでも、この前夜祭イベントには興味があったようで、……麓から皆で見物することにした。
すると、観客の中にゴリオやリンゴ達もいて、同じように見物していた。
ホノオが声をかけると、リンゴは首を何度も横に振って猛烈に否定する。
「あぁっ、もうムリムリッ! 何かアレに参加したらさぁ、街公認になっちゃうじゃん! だからパスだよっ!!」
ゴリオは彼女の言葉を横で聞きながら、何とも言えない顔つきをしていた。
まぁ、コイツらは当分今のまんまなのかもなぁとホノオは思った。
その代わりと言っては何だが、翌日の本祭天女祭り神前行事として、真善美高と改進高の2校による対抗戦が急遽行われることになった。
何でも先日の騒ぎの後、ゴリオ達とマホ達生徒会との話し合いで決まったそうで。
祭りの実行委員会にも顔の利くヨウ姉さんのツテもあり、本年度の演者は、両校の有志で行うことに決まったのだ。
「リンゴ。明日は私達真善美高が勝ちに行くわよっ! 精々吠え面かいてなさいっ!」
マホが凄んで睨みつけると、リンゴは気圧されることなくニヤリと不敵な笑みを浮かべ、
「お嬢に凄まれても全然怖くねぇ。何だかヒヨコさんがピヨピヨと囀っているみたいっ! いやっ、ゆで卵が何か喚いているのかなぁ!?」
そう言って、腹の底から哄笑するのだ。
何でコイツらって、……いつもいっつも対抗意識バリバリなんだろう? とホノオは思った。
「まぁまぁ、ママさん落ち着いて!」
シノの言葉に、マホは酷く取り乱すと、
「誰がキミの母親かっ!?」
でも、言い終える間もなく、……ハッと驚いた顔をして、シノのことをまじまじと見た。
顔のつくり、背格好は言われてみると、どことなく自分に似てなくもない。
でも、胸が、特にお胸がっ!? シノのボイン具合に、思わず悲鳴を上げそうになるマホ。
「誰が父親よっ? 一体誰っ!?」
マホの必死の問いかけに対し、シノは内緒っ! とだけ言って笑った。
形のいい唇を一本指でシーっと構えて悪戯っぽく笑う、……その表情に、マホは酸っぱい顔になる。
でもまぁ、ブレないのもコイツらの取り柄のひとつなのかな? ホノオは一人納得するのだった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
イラスト部(仮)の雨宮さんはペンが持てない!~スキンシップ多めの美少女幽霊と部活を立ち上げる話~
川上とむ
青春
内川護は高校の空き教室で、元気な幽霊の少女と出会う。
その幽霊少女は雨宮と名乗り、自分の代わりにイラスト部を復活させてほしいと頼み込んでくる。
彼女の押しに負けた護は部員の勧誘をはじめるが、入部してくるのは霊感持ちのクラス委員長や、ゆるふわな先輩といった一風変わった女生徒たち。
その一方で、雨宮はことあるごとに護と行動をともにするようになり、二人の距離は自然と近づいていく。
――スキンシップ過多の幽霊さんとスクールライフ、ここに開幕!
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる