角の生えたサルたち

西洋司

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いっつも対抗意識バリバリ_01

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 タイムトリップから数日後、……今度こそホンとの祭りが始まった。

 だけど、現実の前夜祭はトリップ・リアリティの世界で体験したように、全長2尺6寸のロケット花火で追い駆けられるような危険なものでは決してない。

 五甲山の中腹までの道のりを地元の子供達が花火で照らし、その年のカップル達が行儀良く並んで登るという、何とも女子ウケしたイベントなのだ。

 男子にはワリとどうでもいいことだが、女子からすると、……エスコートする男子の優しさとか侠気とか、いろいろと判断できる大事なイベントなのだそうで。

 トリップ・リアリティにおいては、ホノオはマホとカップルを組んで積極的に参加したのだが、……でも、現実世界において、こんなカップル限定のイベントに参加するのは、かなり恥ずかしい。

 マホにそれとなく訊いてみると。

「まだ、……私達は、カップルという程ではないから」

 何だか消え入りそうな声で言われてしまった。
 彼女の様子が妙にしおらしくてかわいかったので、まぁ今年は見送ってもいっかとホノオは思った。

 聞いた話によると、今年は例年に比べ、参加カップルの数がかなり多かったらしい。
 それも、真善美高の2年生がダントツに多いのだとか。ホンと何でだろ?

 シノとショウタも、記念に参加するのかなぁと思ったけど。2人ともパスとのことで。
 それでも、この前夜祭イベントには興味があったようで、……麓から皆で見物することにした。

 すると、観客の中にゴリオやリンゴ達もいて、同じように見物していた。
 ホノオが声をかけると、リンゴは首を何度も横に振って猛烈に否定する。

「あぁっ、もうムリムリッ! 何かアレに参加したらさぁ、街公認になっちゃうじゃん! だからパスだよっ!!」

 ゴリオは彼女の言葉を横で聞きながら、何とも言えない顔つきをしていた。
 まぁ、コイツらは当分今のまんまなのかもなぁとホノオは思った。

 その代わりと言っては何だが、翌日の本祭天女祭り神前行事として、真善美高と改進高の2校による対抗戦が急遽行われることになった。

 何でも先日の騒ぎの後、ゴリオ達とマホ達生徒会との話し合いで決まったそうで。
 祭りの実行委員会にも顔の利くヨウ姉さんのツテもあり、本年度の演者は、両校の有志で行うことに決まったのだ。

「リンゴ。明日は私達真善美高が勝ちに行くわよっ! 精々吠え面かいてなさいっ!」

 マホが凄んで睨みつけると、リンゴは気圧されることなくニヤリと不敵な笑みを浮かべ、

「お嬢に凄まれても全然怖くねぇ。何だかヒヨコさんがピヨピヨと囀っているみたいっ! いやっ、ゆで卵が何か喚いているのかなぁ!?」

 そう言って、腹の底から哄笑するのだ。
 何でコイツらって、……いつもいっつも対抗意識バリバリなんだろう? とホノオは思った。

「まぁまぁ、ママさん落ち着いて!」

 シノの言葉に、マホは酷く取り乱すと、

「誰がキミの母親かっ!?」

 でも、言い終える間もなく、……ハッと驚いた顔をして、シノのことをまじまじと見た。

 顔のつくり、背格好は言われてみると、どことなく自分に似てなくもない。
 でも、胸が、特にお胸がっ!? シノのボイン具合に、思わず悲鳴を上げそうになるマホ。

「誰が父親よっ? 一体誰っ!?」

 マホの必死の問いかけに対し、シノは内緒っ! とだけ言って笑った。
 形のいい唇を一本指でシーっと構えて悪戯っぽく笑う、……その表情に、マホは酸っぱい顔になる。

 でもまぁ、ブレないのもコイツらの取り柄のひとつなのかな? ホノオは一人納得するのだった。
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