角の生えたサルたち

西洋司

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スパイの親玉_01

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「あぁ、昨晩シノから聞いたんだけどさ。アイツ毒飲まされてるって!? 一体、何やらかしたんだよ?」

 ショウタは、伝えるべきか迷ったように力なく頭を掻いていたけれど、意を決した様子で、

「前の現場でヘマやらかしてさ。それが発覚して、怒った群衆に捕まって無理やり毒を飲まされたんだよ。まぁ運がないよね、シノのヤツは……」

 そんな酷いことになっていたのか。あれだけ陽気で飄々としてかわいらしいのに。

「なら、残り2か月っていうのは?」

「時限式で溶融するカプセルを飲まされているからね。だから、……それまでは大丈夫だよ!」

 とりあえず、じわじわと蝕んでいく毒ではないと知り、多少気持ちが落ち着いた。

「なぁ、オマエらの未来世界では、こんなことってよくある話なのか?」

「あまりないね」

 ショウタによると、シノはバルボラ機関のエージェントの中では、突出して成績優秀なのだそうで。そもそも他の課員達は、彼女ほど熱心には働いていないのだとか。
 
 なんでも未来世界は世界戦争真っただ中にあり、課員は平和な過去世界に行ったら、もうそれは安全で飯も空気も美味くてかなり居心地が良いワケで。なるべくなら戦利品を持ち帰らずに、だらだらとそこで過ごすのが当たり前なのだとか。

 まぁ要するにサポタージュだよね。国の中枢の機関なのに、稼ぎ頭の働きアリは、ほんの数パーセントっつうヤツだな。

 だけどさぁ、オレにそんなこと言ってて大丈夫かコイツ!?

「まぁ、……シノは機関の課員の中では別枠だからね」

「何それ?」

「ボクって、向こうの世界では貴族の子供なんだよ。まぁバルボラ機関のエージェントの大半がそんな感じかな。だけど、シノは戦災孤児で、叩き上げで今の地位を築いて来たからさ。皇帝の覚えはいいんだけど、……でも、仲間ウチでは人気がないんだよね」

「何だよ、……それ」

 包み隠さずオレに告げるショウタの顔。自称貴族の子弟と言うだけあって、やたら整っているだけに、かえって邪悪な雰囲気が醸し出されている感じだぜ。

 とにかくワカったことは、ショウタとシノは水と油の関係にあるということだな。
 少なくとも、ショウタはシノのことをあまり好意的には見ていない気がする。

 さすがに、シノに不利になるような嘘話をでっち上げることはないと思うけど。まぁ、……要注意かもな。
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