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第2話 甘い恋のトラップ(1)★
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隆之は暇を見つけては、風俗店『Oasis』に足繁く通い詰めていた。
あれから二か月が経とうとしているが、週に一度という頻度には我ながら驚きである。
他に金を使うような趣味があるわけでもないし、結婚資金だって持て余していた。それに、何よりもナツと過ごす時間に価値を見出しつつあったのだ。失恋の傷はまだまだ癒えないけれど、ナツはいつだって嫌なことを忘れさせてくれて、心に安らぎを与えてくれる――店に通う理由なんてそれだけで十分だった。
そうして今日も、隆之は仕事終わりに店へ訪れる。案内された個室でいつもどおり待っていれば、程なくしてナツがやって来た。
「隆之さん! 今日も指名してくれてありがとーっ!」
元気よく挨拶をして、早速腕を絡めてくる。甘えるように上目づかいで見つめられ、隆之の胸はドキドキとした。これがこの店での通常営業なのだろうが、ナツは人懐っこい性格をしているし、スキンシップの多さに未だ慣れず戸惑ってしまう。
「ねっ、コスプレの貸し出しはどうする?」
ひとまずソファーに座ったところで、ナツがそんなことを訪ねてきた。隆之は首を傾げる。
「コスプレ?」
「予約したときに見なかった? 今日はレンタル無料の日なんだよ?」
せっかくだから、とタブレットでカタログを見せられる。そこには競泳パンツや際どい下着をはじめとして、様々なコスチュームの写真が載っていた。
「何故、競泳パンツがあるんだ……?」
「アハハッ、隆之さん的にはそのあたりはないっしょ? あとはサッカーとかバスケのユニフォーム、学校の制服あたりが人気かな?」
正直なところ、あまり興味はなかった。とはいえ、何でもいいと答えるのもどうかと思い、ふと目に止まったものを指差すことにする。
「じゃあ、これで」
選んだのは学校の制服――学ランだった。ナツは一つ返事で受付に電話を入れ、コスチュームが届けられる間にシャワーを済ませようという話になった。
浴室から出ると、早速ナツがコスチュームに袖を通す。
「じゃじゃーん! どう? DKっぽい?」
学ランを着たナツはとにかく違和感がなく、まるで本物の高校生のように見えた。
思わずじっと見つめてしまっていたらしく、それに気づいたナツがイタズラっ子の笑みでこちらを見上げてくる。
「あっれ~だんまり? それとも見惚れちゃった?」
揶揄するように言われて、隆之は慌てて顔を逸らした。
どうかしてる。日常生活で見かけるような格好だというのに、可愛いと思ってしまった――なんてさすがに言えない。
「っ、別に……ただ似合ってると思っただけで」
「へへ、ありがとっ。なんかイメプレの指定ある?」
「なんだって?」
「イメプレだよ、イメージプレイ! うーんとねぇ、『先輩後輩の設定でエッチしたい』とか、『レイプみたいな感じがいい』みたいな。すごい人は台本まで用意してくるよ?」
「そ、そんなことまでやっているのか!?」
「そりゃ、お客様のご要望に応えるのがお仕事ですから?」
そういうことをしている客もいるのだろうことは容易に想像がついたが、頭を抱える思いだった。
(なんて破廉恥な。俺なら絶対注文しないぞ……)
しかしナツは平然としていて、むしろノリ気の様子だ。これではこちらも腹を括るしかあるまい。
「……わかった。ナツに任せるよ」
「そう? じゃあ定番どころで、隆之さんのこと『先生』って呼んでいい? 呼び方変えるだけだし、隆之さんはいつもどおりでいいからさ」
「あ、ああ」
ぎこちなく返事をすると、ベッドへと誘われた。ナツが仰向けに寝転び、その上に隆之が覆い被さるような体勢になる。
「キスしよ、先生――」
呼称が変わった途端に、ナツの雰囲気までもが変わった気がした。
言われるままに唇を重ね、何度か軽く触れ合わせるだけの口づけを繰り返していたが、次第に深いものへと変化していく。舌を差し入れると、ナツが積極的に絡めてきて、クチュクチュと甘ったるい水音が響いた。
(何というか、いけないことをしているかのような……)
隆之は学ランの上からナツの体に触れてみる。そっとボタンを外していけば、ますます興奮が高まるようだった。
「ねえ、先生。おっぱい触ってよ?」
ナツが隆之の手を取って自分の胸元へと持っていく。
Yシャツの布地越しでもわかるほどに、そこはツンと立ち上がっていた。そのまま指先で弄ってみれば、ナツが気持ちよさげに吐息を漏らす。
「ん、は……っ」
「ここ、気持ちいのか?」
「うん……きもちい、いっぱい触ってほし――」
ナツが囁くように言いながら、自らYシャツの前を開けてみせる。ぷっくりと腫れた乳首は赤く色付いており、隆之は目を奪われた。
誘われるように手を伸ばして、親指と人差し指でくにくにと押し潰したり、引っ張ったりして刺激を与える。そのたびにナツは体をビクつかせ、こちらの欲情を煽った。
あれから二か月が経とうとしているが、週に一度という頻度には我ながら驚きである。
他に金を使うような趣味があるわけでもないし、結婚資金だって持て余していた。それに、何よりもナツと過ごす時間に価値を見出しつつあったのだ。失恋の傷はまだまだ癒えないけれど、ナツはいつだって嫌なことを忘れさせてくれて、心に安らぎを与えてくれる――店に通う理由なんてそれだけで十分だった。
そうして今日も、隆之は仕事終わりに店へ訪れる。案内された個室でいつもどおり待っていれば、程なくしてナツがやって来た。
「隆之さん! 今日も指名してくれてありがとーっ!」
元気よく挨拶をして、早速腕を絡めてくる。甘えるように上目づかいで見つめられ、隆之の胸はドキドキとした。これがこの店での通常営業なのだろうが、ナツは人懐っこい性格をしているし、スキンシップの多さに未だ慣れず戸惑ってしまう。
「ねっ、コスプレの貸し出しはどうする?」
ひとまずソファーに座ったところで、ナツがそんなことを訪ねてきた。隆之は首を傾げる。
「コスプレ?」
「予約したときに見なかった? 今日はレンタル無料の日なんだよ?」
せっかくだから、とタブレットでカタログを見せられる。そこには競泳パンツや際どい下着をはじめとして、様々なコスチュームの写真が載っていた。
「何故、競泳パンツがあるんだ……?」
「アハハッ、隆之さん的にはそのあたりはないっしょ? あとはサッカーとかバスケのユニフォーム、学校の制服あたりが人気かな?」
正直なところ、あまり興味はなかった。とはいえ、何でもいいと答えるのもどうかと思い、ふと目に止まったものを指差すことにする。
「じゃあ、これで」
選んだのは学校の制服――学ランだった。ナツは一つ返事で受付に電話を入れ、コスチュームが届けられる間にシャワーを済ませようという話になった。
浴室から出ると、早速ナツがコスチュームに袖を通す。
「じゃじゃーん! どう? DKっぽい?」
学ランを着たナツはとにかく違和感がなく、まるで本物の高校生のように見えた。
思わずじっと見つめてしまっていたらしく、それに気づいたナツがイタズラっ子の笑みでこちらを見上げてくる。
「あっれ~だんまり? それとも見惚れちゃった?」
揶揄するように言われて、隆之は慌てて顔を逸らした。
どうかしてる。日常生活で見かけるような格好だというのに、可愛いと思ってしまった――なんてさすがに言えない。
「っ、別に……ただ似合ってると思っただけで」
「へへ、ありがとっ。なんかイメプレの指定ある?」
「なんだって?」
「イメプレだよ、イメージプレイ! うーんとねぇ、『先輩後輩の設定でエッチしたい』とか、『レイプみたいな感じがいい』みたいな。すごい人は台本まで用意してくるよ?」
「そ、そんなことまでやっているのか!?」
「そりゃ、お客様のご要望に応えるのがお仕事ですから?」
そういうことをしている客もいるのだろうことは容易に想像がついたが、頭を抱える思いだった。
(なんて破廉恥な。俺なら絶対注文しないぞ……)
しかしナツは平然としていて、むしろノリ気の様子だ。これではこちらも腹を括るしかあるまい。
「……わかった。ナツに任せるよ」
「そう? じゃあ定番どころで、隆之さんのこと『先生』って呼んでいい? 呼び方変えるだけだし、隆之さんはいつもどおりでいいからさ」
「あ、ああ」
ぎこちなく返事をすると、ベッドへと誘われた。ナツが仰向けに寝転び、その上に隆之が覆い被さるような体勢になる。
「キスしよ、先生――」
呼称が変わった途端に、ナツの雰囲気までもが変わった気がした。
言われるままに唇を重ね、何度か軽く触れ合わせるだけの口づけを繰り返していたが、次第に深いものへと変化していく。舌を差し入れると、ナツが積極的に絡めてきて、クチュクチュと甘ったるい水音が響いた。
(何というか、いけないことをしているかのような……)
隆之は学ランの上からナツの体に触れてみる。そっとボタンを外していけば、ますます興奮が高まるようだった。
「ねえ、先生。おっぱい触ってよ?」
ナツが隆之の手を取って自分の胸元へと持っていく。
Yシャツの布地越しでもわかるほどに、そこはツンと立ち上がっていた。そのまま指先で弄ってみれば、ナツが気持ちよさげに吐息を漏らす。
「ん、は……っ」
「ここ、気持ちいのか?」
「うん……きもちい、いっぱい触ってほし――」
ナツが囁くように言いながら、自らYシャツの前を開けてみせる。ぷっくりと腫れた乳首は赤く色付いており、隆之は目を奪われた。
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