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おまけSS クリスマスデート・リベンジ(2)

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「っ、人多いし――はぐれるのだけは、嫌だから」

 気恥ずかしげに頬を染め、そんなことを言ってのける侑人。不意打ちを食らった高山は、思わずドキッとしてしまった。

(ああ、ったく)

 どこまでも愛しくてたまらない――。
 高山は侑人の手を捕まえると、しっかりと指を絡めた。そして、それを隠すかのようにコートのポケットへと仕舞いこんでみせる。

「ちょっ……」
「嫌か?」

 侑人は動揺を見せたものの、振り払うような真似はしなかった。小さく「ううん」と否定すると、そっと手を握り返してくる。

 そのいじらしさに、今すぐ抱きしめてしまいたい衝動に駆られたが、高山はぐっと我慢して微笑みを返した。ポケットの中で恋人繋ぎをしたまま、ゆったりとした足取りで歩いていく。

「……高山さんの手、あったかい」
「子供体温だ、って?」
「んなこと言ってないじゃん」

 冷たい海風を感じながらも、繋いだ手から温もりが伝わってくる。
 そうしてしばらく歩くうち、高さ十メートルほどの大きなクリスマスツリーが見えてきた。煌びやかなLED電球で装飾されたモミの木は、まさに圧巻の一言である。

「すげえな」
「うん、綺麗――」

 高山が感嘆の声をあげれば、侑人もうっとりとした様子で呟いた。幻想的な光景を前に、つい二人して見入ってしまう。

 ややあって、侑人が躊躇いがちに口を開く気配がした。

「――……」

 だが、もごもごと口の中に消えていく。
 高山はふわりと笑みを浮かべると、軽く侑人の顔を覗き込んだ。

「どうした?」

 そう訊ねて、自ら伝えてくれるのを待つ。
 しばし口ごもったのち、やがて侑人は意を決したように言葉を紡いだ。

「いや、その――人生、何があるかわからないもんだなって。こんな光景、俺には無縁だと思ってたから」

 言いつつ、顔を上げて見つめてくる。その瞳はどこか潤んでいて、周囲のイルミネーションにも劣らぬ輝きを帯びていた。

「なんていうかさ、全部、高山さんのおかげ。上手く言葉にできないけど……ありがとう」

 こちらが見惚れているうちにも、相手の言葉は続いて、柔らかな微笑みを向けられる。
 高山は今度こそ参ってしまった。大きな胸の高鳴りとともに、強くこみ上げてくるものを感じてならない。

「……そんなのお互い様だ。侑人が応えてくれたからこそ、今があるんだし」

 静かにそう告げて、しばし見つめ合う。

 この一年で、二人の関係も随分と進展した。結婚を前提に付き合うという宣言通り、来年には挙式を予定しており、互いの両親への挨拶も済ませたところだ。

 侑人への想いは、なおも変わらないどころか、日に日に愛しさが増していく気さえする。今だって、隠れて繋いだこの手を離したくなどない。

「な、なんか……雰囲気にのまれたかも」
「おいおい、この期に及んで恥ずかしがるなって」
「うるさい」

 ややあって気恥ずかしさが勝ってきたのか、侑人がそっぽを向く。
 その仕草に高山は笑みを浮かべながらも、そっと耳元へと唇を寄せた。

「今、すっげえキスしたい気分になった」

 心のままに甘ったるく囁けば、侑人はびくりと肩を跳ねさせて、「っ――!?」と言葉にならない声を発する。よほど恥ずかしかったのか、耳まで真っ赤になって固まってしまった。

「な、に言ってんだよ……っ」
「なにって、思ったことをそのまま言っただけだが?」
「はあ……もう。高山さんって、ほんっとエロオヤジなんだから」

 小さく息をついて、呆れ混じりに言う侑人。
 が、それもいつものことで、満更でもない様子なのが見て取れた。高山がクスクスと笑うと、侑人も眉尻を下げてはにかむ。

 その後も二人は互いに身を寄せあい、ロマンチックなイルミネーションとともに、甘い時間を堪能したのだった。


    ◇


 後日。デスクで外回り営業の支度をしながら、ふと感慨にふける高山の姿があった。

 視線の先にあったのは、重厚感のあるハイブランドのボールペン。手に馴染む太いボディで、気品を感じさせるそれは、侑人からのクリスマスプレゼントである。

 なんでも当人が言うには、

『営業職だし、そういった細かいところも見られるだろ? 高山さんのことだから日頃からいいヤツ使ってるんだろうけど、複数あっても困らないと思うし』

 ……とのことだ。ただ、他にも理由があったらしく、

『それに、ペンなら気兼ねなく持っていられるかなって……その、一緒に』

 と、仕舞いには照れくさそうに口にしていた。

 つまりはお揃いのものを持ちたい、ということだろう。あまりに恋人らしいし、侑人がそのようなことを考えてくれたのが、どうしようもなく嬉しくてたまらなくなる。

(さて、今日も一日頑張るとするか)

 高山は口元が緩むのを感じながら、丁寧な手つきでボールペンをペンケースにしまう。
 それからコートと鞄を手に取ると、意気揚々と営業先へと向かったのだった。
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感想 11

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みんなの感想(11件)

ゆずみつ
2024.11.28 ゆずみつ

初めまして!
6話まで読みました✨
ずっとドキドキしながら読んでいます😍
そして‥★の書き方も‥

好みです♡♡

高山先輩の余裕があるようで、実はないところもグッときます!!
最後まで楽しく読ませて頂きます😊

有村千代
2024.11.29 有村千代

ゆずみつさん、コメントありがとうございます🙌
ドキドキしながら読んでいただけて大変嬉しいです!
そういったシーンの描写も好みだといっていただけて…✨
年上らしさを見せてくれる高山さんですが、実は…というの私も好きなのでニンマリしました☺️💕
関係性が進展した二人、この後もお付き合いいただけますと幸いです!

解除
るる
2024.05.18 るる
ネタバレ含む
有村千代
2024.05.18 有村千代

るるさん、いつもありがとうございます🙌
嬉しいお言葉の数々にニンマリしました、光栄です!
ベッタベタな夢を見てしまう侑人~というオチでした😂
オメガパロもこの二人ならしっくりきますね…! 侑人がΩで、高山さんがαで子供ができて~と妄想が膨らみます✨

解除
マイルアポ
2024.05.18 マイルアポ
ネタバレ含む
有村千代
2024.05.18 有村千代

マイルアポさん、いつもありがとうございます🙏
まさに夢の光景…! そう言っていただけて嬉しいです、モチベがあがります!
またそのうち何かしら更新できれば~と思っております😊

解除

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