ゲイ卒したいのに、何故かスパダリセフレに溺愛&求婚されてます!

有村千代

文字の大きさ
上 下
107 / 115
おまけコンテンツ

おまけSS 夏真っ盛り…なアツアツ♡

しおりを挟む
「高山さん! 暑い、重い……暑い~っ!!」

 夏の盛り。侑人はリビングで暑苦しさに悶えていた。

 というのも、先ほどから高山がべったりと張りついているのだ。外は茹だるような暑さで、帰宅するなりクーラーをガンガン効かせたのだが――ソファーに寝転がった途端にこれである。

 しかも、ただ抱きつくだけでは飽き足らず、頬や首すじに唇を押し当ててきたり、服の中に手を突っ込んできたりと好きにされている。ついでに引き剥がそうと躍起になっても、びくともしないのが余計に腹立たしい。

「おいこらっ……せっかく冷房効かせたってのに」
「んー? 設定温度、もう少し下げるか?」
「そういう問題じゃねーし! ああもう、なんでそんなベタベタしたがるんだよっ」

 侑人がそう叫ぶと、高山はようやく顔を上げてくれた。

「なんだ、悪いかよ?」
「……正直、夏場は暑くてやだ」

 恨めしげな目を向けつつ、ぼそりと呟く。すると、ため息が小さく返ってきたのだった。

「はいはい、わかったよ」

 高山は身を起こすと、そっと距離を置いてみせる。
 意外すぎる反応に、侑人は驚いて目を瞬かせた。てっきり、うやむやにされるかと思ったのだが。

(あ~涼しい……)

 高山が離れたことで、ようやく体感温度も下がってくる。侑人はのびのびとソファーに寝転がるも、なんだか少し落ち着かない心地だった。


    ◇


(いや、さすがに距離置きすぎだろ!?)

 高山は数日経っても、今までと打って変わって淡白な態度だ。

 普段どおりに話はするが、抱きつかれたり、キスされたりといったことが一切なくなった。寝るときだって、すぐに寝息を立てているし、夜の営みもすっかりお預け状態である。
 言い出したのはこちらだし、ありがたいはずなのだが――こうなると寂しさが募るというかなんとやら。

 ……と、悶々としながらリビングで過ごしていたら、高山が帰宅した。
 とうとう我慢しきれなくなった侑人は、その大きな体に思いきって抱きつく。

「おいおい。シャワーも浴びてねえし、汗臭いぞー?」

 高山は困ったように笑うも、身を離そうとはしなかった。侑人は胸元にぐりぐりと頭を擦りつけながら、返事をする。

「気にならないから、べつにいいし」
「ったく。夏場は暑くて、嫌なんじゃなかったのか?」
「……ごめん」
「ん?」
「やっぱ、高山さんにそうやって避けられると……ちょっと寂しいっていうか」

 正直に打ち明けると、高山が微かに笑う気配がした。優しく頭を撫でられて、侑人も心地よさに目を細めたのだが――、

「まあ俺も、こうなることを期待していたわけだが」
「なっ!?」

 とんでもないことを言われ、侑人は勢いよく顔を上げた。すると、高山のニヤけ顔が目に入り、さらに顔が熱くなってしまう。

「もしかして、わざと……っ」
「さあ、どうだろうな?」
「も、もう知らない!」

 しかし、そんな反応もお見通しだとばかりに抱き寄せられては、もはやどうしようもない。そのまま腕の中に閉じ込められて、低い囁きが降ってくる。

「で、どうする? 一緒に風呂でも入るか?」
「っ!」

 ――結局、この甘さにほだされてしまうのだ。
 侑人はムッと眉根を寄せながらも、静かに頷くほかなかった。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

Sweet☆Sweet~蜂蜜よりも甘い彼氏ができました

葉月めいこ
BL
紳士系ヤクザ×ツンデレ大学生の年の差ラブストーリー 最悪な展開からの運命的な出会い 年の瀬――あとひと月もすれば今年も終わる。 そんな時、新庄天希(しんじょうあまき)はなぜかヤクザの車に乗せられていた。 人生最悪の展開、と思ったけれど。 思いがけずに運命的な出会いをしました。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

ACCOMPLICE

子犬一 はぁて
BL
欠陥品のα(狼上司)×完全無欠のΩ(大型犬部下)その行為は同情からくるものか、あるいは羨望からくるものか。  産まれつき種を持たないアルファである小鳥遊駿輔は住販会社で働いている。己の欠陥をひた隠し「普通」のアルファとして生きてきた。  新年度、新しく入社してきた岸本雄馬は上司にも物怖じせず意見を言ってくる新進気鋭の新人社員だった。彼を部下に据え一から営業を叩き込むことを指示された小鳥遊は厳しく指導をする。そんな小鳥遊に一切音を上げず一ヶ月働き続けた岸本に、ひょんなことから小鳥遊の秘密を知られてしまう。それ以来岸本はたびたび小鳥遊を脅すようになる。  お互いの秘密を共有したとき、二人は共犯者になった。両者の欠陥を補うように二人の関係は変わっていく。 ACCOMPLICEーー共犯ーー ※この作品はフィクションです。オメガバースの世界観をベースにしていますが、一部解釈を変えている部分があります。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

酔った俺は、美味しく頂かれてました

雪紫
BL
片思いの相手に、酔ったフリして色々聞き出す筈が、何故かキスされて……? 両片思い(?)の男子大学生達の夜。 2話完結の短編です。 長いので2話にわけました。 他サイトにも掲載しています。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

処理中です...