84 / 116
おまけコンテンツ
おまけSS 甘やかされて甘やかして♡
しおりを挟む
風呂上がりのリビングにて。侑人はソファーに腰掛け、高山に髪を乾かしてもらっていた。
「……髪くらい、自分で乾かせるってのに」
などとぼやくも、相手は知ったことではない。ブオーッ、というドライヤーの音に混ざって鼻歌が聞こえてくる。
「侑人って、髪サラサラで触り心地いいよな」
「聞いちゃいねーし」
「うん? お前だって喜んでくれるし、一石二鳥だろ」
カチッとドライヤーのスイッチが切られる。
どうやら髪が乾いたらしく、高山は感触を確かめるかのように梳いてきた。
「そりゃ、嬉しいんだけどさ」
侑人は心地よさに目を細める。
あれやこれやと、世話を焼かれるのが嫌なわけではない。むしろ大好きだ。
ただ、こうも尽くされてばかりだと、不公平な気がしてならないというか――たまに気が引けてしまうのである。
(俺だって、高山さんのこと……)
『ベッタベタに甘やかしてやりたい』と高山は言うが、それにしたって損得の兼ね合いは大事だと思うし、こちらだって相手を想う気持ちは同じなのだ。
相変わらず髪を梳いていた手を取ると、侑人は意を決して言ってみせた。
「ねえ、高山さん。たまには俺にも何かさせてよ」
その言葉に、高山は少し考える素振りをしてから笑みを浮かべたのだった。
「こんなことで本当にいいのかよ?」
戸惑いを滲ませるこちらに対し、高山はソファーに寝転がって、頭を膝の上に乗せてくる。――高山が提案してきたのは膝枕だった。
「なに言ってんだ。俺を癒すことができるのは、侑人だけなんだぜ? 自分じゃ上手くできないことをしてもらうのが、一番いいに決まってるだろ?」
「そうは言っても……首とか痛くねーの? 男の膝とか硬いばかりだろうに」
「いや? やっぱいいな、こういうの――すげえ落ち着く」
すっかりリラックスした様子で、高山が身を委ねてくる。
何気なく頭を撫でてやれば、気持ちよさそうに目が細められて、侑人は胸がドキドキとするのを感じた。
(……もっと、いろいろしてやりたい)
そう思うとともに、あることを思いついた。いったん席を外させてもらい、寝室の小物入れから目的のものを取り出す。
戻ってきた侑人の手にあったのは、梵天付きの耳かきだった。
「まさかとは思うが、それって」
「せ、せっかくだし……耳かきとかどう?」
「また随分とベタだな?」
「いいだろ、べつにっ」
ほら、とソファーに座って膝をぽんぽんと叩く。
高山は促されるまま寝転がり、再びこちらの膝に頭を預けてきた。からかうような言葉を口にしながらも、どこか期待しているようである。
「じゃあ――その、失礼します」
髪を避けつつ耳朶に触れ、ゆっくりと耳かきを滑り込ませる。
すると、高山がわずかに身じろいだ。浅い部分を触ったにすぎないが、その反応に思わず手が止まる。
「ごめん、痛かった?」
「いや、少し驚いただけだ。続けてくれ」
「う、うん」
耳かきを持ちなおし、慎重に中を探っていく。
硬くなった耳垢を掻き出してやれば、高山は心地よさそうに息を吐いた。
「……気持ちいい」
ぽつりと呟かれた言葉に、つい照れてしまう。
太腿への重みが増すのを感じながら、侑人は耳の中を丁寧に掃除していった。
他人の耳かきをするなんて初めてだから、勝手がわからなかったが、そのうちにだんだんと要領がつかめてくる。
「高山さん、反対向いて?」
耳かきを引き抜き、先端をティッシュで拭いながら声をかけた。続いて反対側も――と思ったのだが、高山の返事がない。
「高山さん?」
見れば、高山は安心しきった様子で寝入っていた。すうすうと穏やかな寝息が聞こえてくる。
(俺に癒されるのって、本当なんだ……)
日頃からそうなのだろうか。何でもそつなくこなせる男だというのに、自分のことを必要としてくれているのが、嬉しくてたまらなくなる。
侑人はじわじわと満たされながら、手を伸ばしてブランケットを手繰り寄せた。そしてそれを、膝の上で眠る恋人にそっとかけてやる。
(なんか、ちょっと可愛いかも)
いつも甘やかされてばかりだが、こんなのも悪くない。
侑人は目尻を下げ、優しく高山の頭を撫でながら寝顔を眺め続けた。
「……髪くらい、自分で乾かせるってのに」
などとぼやくも、相手は知ったことではない。ブオーッ、というドライヤーの音に混ざって鼻歌が聞こえてくる。
「侑人って、髪サラサラで触り心地いいよな」
「聞いちゃいねーし」
「うん? お前だって喜んでくれるし、一石二鳥だろ」
カチッとドライヤーのスイッチが切られる。
どうやら髪が乾いたらしく、高山は感触を確かめるかのように梳いてきた。
「そりゃ、嬉しいんだけどさ」
侑人は心地よさに目を細める。
あれやこれやと、世話を焼かれるのが嫌なわけではない。むしろ大好きだ。
ただ、こうも尽くされてばかりだと、不公平な気がしてならないというか――たまに気が引けてしまうのである。
(俺だって、高山さんのこと……)
『ベッタベタに甘やかしてやりたい』と高山は言うが、それにしたって損得の兼ね合いは大事だと思うし、こちらだって相手を想う気持ちは同じなのだ。
相変わらず髪を梳いていた手を取ると、侑人は意を決して言ってみせた。
「ねえ、高山さん。たまには俺にも何かさせてよ」
その言葉に、高山は少し考える素振りをしてから笑みを浮かべたのだった。
「こんなことで本当にいいのかよ?」
戸惑いを滲ませるこちらに対し、高山はソファーに寝転がって、頭を膝の上に乗せてくる。――高山が提案してきたのは膝枕だった。
「なに言ってんだ。俺を癒すことができるのは、侑人だけなんだぜ? 自分じゃ上手くできないことをしてもらうのが、一番いいに決まってるだろ?」
「そうは言っても……首とか痛くねーの? 男の膝とか硬いばかりだろうに」
「いや? やっぱいいな、こういうの――すげえ落ち着く」
すっかりリラックスした様子で、高山が身を委ねてくる。
何気なく頭を撫でてやれば、気持ちよさそうに目が細められて、侑人は胸がドキドキとするのを感じた。
(……もっと、いろいろしてやりたい)
そう思うとともに、あることを思いついた。いったん席を外させてもらい、寝室の小物入れから目的のものを取り出す。
戻ってきた侑人の手にあったのは、梵天付きの耳かきだった。
「まさかとは思うが、それって」
「せ、せっかくだし……耳かきとかどう?」
「また随分とベタだな?」
「いいだろ、べつにっ」
ほら、とソファーに座って膝をぽんぽんと叩く。
高山は促されるまま寝転がり、再びこちらの膝に頭を預けてきた。からかうような言葉を口にしながらも、どこか期待しているようである。
「じゃあ――その、失礼します」
髪を避けつつ耳朶に触れ、ゆっくりと耳かきを滑り込ませる。
すると、高山がわずかに身じろいだ。浅い部分を触ったにすぎないが、その反応に思わず手が止まる。
「ごめん、痛かった?」
「いや、少し驚いただけだ。続けてくれ」
「う、うん」
耳かきを持ちなおし、慎重に中を探っていく。
硬くなった耳垢を掻き出してやれば、高山は心地よさそうに息を吐いた。
「……気持ちいい」
ぽつりと呟かれた言葉に、つい照れてしまう。
太腿への重みが増すのを感じながら、侑人は耳の中を丁寧に掃除していった。
他人の耳かきをするなんて初めてだから、勝手がわからなかったが、そのうちにだんだんと要領がつかめてくる。
「高山さん、反対向いて?」
耳かきを引き抜き、先端をティッシュで拭いながら声をかけた。続いて反対側も――と思ったのだが、高山の返事がない。
「高山さん?」
見れば、高山は安心しきった様子で寝入っていた。すうすうと穏やかな寝息が聞こえてくる。
(俺に癒されるのって、本当なんだ……)
日頃からそうなのだろうか。何でもそつなくこなせる男だというのに、自分のことを必要としてくれているのが、嬉しくてたまらなくなる。
侑人はじわじわと満たされながら、手を伸ばしてブランケットを手繰り寄せた。そしてそれを、膝の上で眠る恋人にそっとかけてやる。
(なんか、ちょっと可愛いかも)
いつも甘やかされてばかりだが、こんなのも悪くない。
侑人は目尻を下げ、優しく高山の頭を撫でながら寝顔を眺め続けた。
97
お気に入りに追加
650
あなたにおすすめの小説

平凡な男子高校生がイケメンに愛される日々、フェロモンって存在するのか?
mamaマリナ
BL
どこにでもいるような平凡な男子高校生の俺だか、何故か男に好かれやすい。あることをきっかけで知り合った、イケメンエリートサラリーマンとの恋模様。
俺は、ノーマルなはずだったのに。
イケメン(エリートサラリーマン)×平凡(男子高校生)

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。


【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(3/14)ストック更新終わりました!幕間を挟みます。また本筋練り終わりましたら再開します。待っててくださいね♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

付き合って一年マンネリ化してたから振られたと思っていたがどうやら違うようなので猛烈に引き止めた話
雨宮里玖
BL
恋人の神尾が突然連絡を経って二週間。神尾のことが諦められない樋口は神尾との思い出のカフェに行く。そこで神尾と一緒にいた山本から「神尾はお前と別れたって言ってたぞ」と言われ——。
樋口(27)サラリーマン。
神尾裕二(27)サラリーマン。
佐上果穂(26)社長令嬢。会社幹部。
山本(27)樋口と神尾の大学時代の同級生。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる