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おまけSS 愛しい君の寝顔(第5.5話)
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(なんか、あったかくて……気持ちいい――)
そんな思いとともに、侑人はゆっくりと瞼を開く。カーテンの隙間から差し込む朝日が眩しく、ぼんやりとした意識で瞬きを繰り返していたのだが、
「っ!?」
視界に飛び込んできた光景に、一気に意識が覚醒する。
目の前にあったのは高山の寝顔だった。侑人のことを抱きかかえるように寝ていて――と思いきや、こちらもこちらで、何故だか高山のシャツをがっしり掴んでいるではないか。
(そうだ、高山さんが泊まってくれて……だけどなんでっ!?)
昨日の出来事を思い出すも、高山に背を向けて寝ていたはずで、このような恥ずかしい姿になっている理由がわからない。
やたらとぐっすり寝られた気がするし、体も随分と楽になっているのはありがたいけれど、ちょっといただけないものがある。侑人はどうにか抜け出そうと身じろいだ。
(起こさないように、そーっと――)
が、どうやら逆効果だったらしい。高山がさらに抱き寄せてきて、侑人はその胸元へと顔を埋める形になってしまうのだった。
「ん……侑人」
掠れた低音で名前を呼ばれ、思わずドキッとする。
一瞬起きたのかとも思ったが違ったようだ。高山はこちらを抱き枕のように抱え直して、再び寝息をたて始める。
もう身動きなど取れるはずもなく、侑人は観念して大人しくするほかなかった。
(何なんだよ、この状況は!)
恨みがましい気持ちで、高山の顔を見上げる。しかし、ささくれ立った気持ちもすぐに失せてしまった。
悔しいが、高山は本当に整った顔立ちをしていると思う。凛々しい眉に、すっと通った鼻筋。睫毛も長くて、唇は――と、見ていて飽きないというか、思わず見惚れるように観察してしまう。
初めて一夜をともにし、普段は見ることのできない寝顔を前にする。こんな機会でなければ照れくさくて、まじまじと見つめることなどできないだろう。
「………………」
ふと思い立ち、ちょっとした好奇心で手を伸ばしてみる。
指先で頬に触れてみれば、見た目よりも柔らかい。そのまま輪郭をなぞっていくのだが、眉間に皺が寄ったのを見て、パッと手を引っ込めた。
「――侑人?」
今度こそ目が覚めたらしい。
侑人は反射的に顔を伏せ、身を固くして寝たふりを決め込む。
対して高山はというと、こちらの額に手をやって体温を測っているようだった。熱が下がっていることに安堵した様子を見せ、続けざまに髪を梳いてくる。
「朝飯できたら起こすから、まだ寝てろよ」
優しい手つきにドキドキしていたら、高山がそのような言葉を残して部屋を出ていった。
侑人が目を開けたのは、それからしばらくしてのことだ。
(うわああぁーっ!)
心の中で絶叫し、真っ赤になった顔を両手で抑える。
とてもじゃないが、今の言葉は独り言とは思えなかった。考えれば考えるほど恥ずかしくなってきて、居たたまれない気持ちでいっぱいになる。
(っ、もう……いろいろやばい)
恥ずかしくて――けれど、それ以上に高山の思いやりが嬉しくて。
熱の余韻に浮かされたまま、侑人は一人で悶々とするのだった。
そんな思いとともに、侑人はゆっくりと瞼を開く。カーテンの隙間から差し込む朝日が眩しく、ぼんやりとした意識で瞬きを繰り返していたのだが、
「っ!?」
視界に飛び込んできた光景に、一気に意識が覚醒する。
目の前にあったのは高山の寝顔だった。侑人のことを抱きかかえるように寝ていて――と思いきや、こちらもこちらで、何故だか高山のシャツをがっしり掴んでいるではないか。
(そうだ、高山さんが泊まってくれて……だけどなんでっ!?)
昨日の出来事を思い出すも、高山に背を向けて寝ていたはずで、このような恥ずかしい姿になっている理由がわからない。
やたらとぐっすり寝られた気がするし、体も随分と楽になっているのはありがたいけれど、ちょっといただけないものがある。侑人はどうにか抜け出そうと身じろいだ。
(起こさないように、そーっと――)
が、どうやら逆効果だったらしい。高山がさらに抱き寄せてきて、侑人はその胸元へと顔を埋める形になってしまうのだった。
「ん……侑人」
掠れた低音で名前を呼ばれ、思わずドキッとする。
一瞬起きたのかとも思ったが違ったようだ。高山はこちらを抱き枕のように抱え直して、再び寝息をたて始める。
もう身動きなど取れるはずもなく、侑人は観念して大人しくするほかなかった。
(何なんだよ、この状況は!)
恨みがましい気持ちで、高山の顔を見上げる。しかし、ささくれ立った気持ちもすぐに失せてしまった。
悔しいが、高山は本当に整った顔立ちをしていると思う。凛々しい眉に、すっと通った鼻筋。睫毛も長くて、唇は――と、見ていて飽きないというか、思わず見惚れるように観察してしまう。
初めて一夜をともにし、普段は見ることのできない寝顔を前にする。こんな機会でなければ照れくさくて、まじまじと見つめることなどできないだろう。
「………………」
ふと思い立ち、ちょっとした好奇心で手を伸ばしてみる。
指先で頬に触れてみれば、見た目よりも柔らかい。そのまま輪郭をなぞっていくのだが、眉間に皺が寄ったのを見て、パッと手を引っ込めた。
「――侑人?」
今度こそ目が覚めたらしい。
侑人は反射的に顔を伏せ、身を固くして寝たふりを決め込む。
対して高山はというと、こちらの額に手をやって体温を測っているようだった。熱が下がっていることに安堵した様子を見せ、続けざまに髪を梳いてくる。
「朝飯できたら起こすから、まだ寝てろよ」
優しい手つきにドキドキしていたら、高山がそのような言葉を残して部屋を出ていった。
侑人が目を開けたのは、それからしばらくしてのことだ。
(うわああぁーっ!)
心の中で絶叫し、真っ赤になった顔を両手で抑える。
とてもじゃないが、今の言葉は独り言とは思えなかった。考えれば考えるほど恥ずかしくなってきて、居たたまれない気持ちでいっぱいになる。
(っ、もう……いろいろやばい)
恥ずかしくて――けれど、それ以上に高山の思いやりが嬉しくて。
熱の余韻に浮かされたまま、侑人は一人で悶々とするのだった。
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