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第9話 結婚式と、それから…(2)
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「侑人おぉ~!」
侑人の兄である恭介が駆け寄ってきて、勢いよくハグしてきた。その瞳には涙が滲んでいる。
「あーもう泣いてんのかよ。まだ早いって」
「だって、俺の可愛い弟が婿入りするんだぞ!? 笑顔で送り出したいのは山々だが、寂しくて寂しくて……うう、タキシード姿なんて見たら込み上げてくるものがっ!」
「ったく。仕方ないなあ、兄さんは……」
呆れつつも、侑人は背中をぽんぽんと叩いてやる。
恭介の背後には両親の姿があって、目が合うなり微笑みを交わした。当初は息子のカミングアウトに動揺していたようだったが、すぐにあたたかい言葉で受け入れてくれたときのことは記憶に新しい。
父と母、そして高山の親族とも会話を交わして、チャペル内に足を踏み入れる。
真っ先に視界に入ったのは真っ赤なバージンロード。そしてその先、祭壇奥の壮大なステンドグラスだった。ちょうど太陽光が差し込み、辺り一帯を幻想的な雰囲気に彩るそれは、まさに圧巻の一言に尽きる。
ほどなくして牧師とのリハーサルを執り行い、挙式の段取りを確認すれば――いよいよそのときだ。
スタッフの合図を受けて、あらためてチャペルへと入場する。
(う、わっ)
足を踏み入れた途端、ぶわりと感動が押し寄せてくるのを感じた。
緊張しながらも高山のエスコートでバージンロードを歩き、一歩一歩と進みながら祭壇までたどり着く。
厳かな雰囲気の中、式は粛々と進んでいった。牧師による開式の辞から始まり、順番に結婚の誓約を交わす。
心臓が高鳴って手足も緊張で震えていたが、それも最初のうちだけだった。高山と手を重ねながら見つめ合えば、自然と気持ちが落ち着いていくのを感じた。
「I do.《誓います》」
牧師の問いかけにそう答え、誓いの言葉を復唱する。いついかなるときも互いを愛し、人生のあらゆる面で支え合うことを約束する。
そうして、感動の瞬間。指輪の交換へと至ったのだった。
「――……」
高山がリングピローから指輪を摘み上げ、侑人もそれに合わせて左手を差し出す。
二人が選んだのは、永遠の象徴であるメビウスの輪がモチーフのプラチナリングだ。シンプルなデザインでありながらも上品な輝きを放ち、内側には互いのイニシャルと今日の日付が刻印されている。
やがて、高山の手によって指輪がゆっくりと薬指にはめられた。その瞬間、侑人は言葉にできないほどの幸福感に包まれる。
そして高山もまた、同じ思いだったに違いない。高山の眼差しはどこまでも優しく慈愛に満ちていて、思わず見惚れてしまうほどだった。
(高山さん――)
牧師から指輪を受け取り、今度はこちらが高山の左手薬指に通す。
今日という日を迎えるまでさまざまなことがあった。本当に結婚するのだという実感を噛みしめながら指輪をつけ終えれば、牧師による宣言があり――今をもって二人は正式に《夫夫》となったのだった。
「……っ」
牧師の言葉を聞いて、侑人は目頭が熱くなった。
参列している誰もが自分たちの結婚を祝福してくれている。その事実が嬉しくて、知らずのうちに涙がこぼれ落ちていた。
こんなタイミングで泣くだなんて我ながら情けない。が、涙はとめどなく溢れてくる。
『侑人』
声には出さなかったが、高山の唇がそう動いた気がした。
高山はジャケットの内ポケットからハンカチを取り出すと、そっと目元を拭ってくれる。その優しい手つきにますます泣きそうになったけれど、侑人はぐっと堪えて顔を上げた。
「………………」
もう大丈夫だと目で訴えれば、高山は安心したように笑みを深め、緩やかに唇を寄せてくる。
――最後に誓いのキスを交わし、式は滞りなく終了したのだった。
侑人の兄である恭介が駆け寄ってきて、勢いよくハグしてきた。その瞳には涙が滲んでいる。
「あーもう泣いてんのかよ。まだ早いって」
「だって、俺の可愛い弟が婿入りするんだぞ!? 笑顔で送り出したいのは山々だが、寂しくて寂しくて……うう、タキシード姿なんて見たら込み上げてくるものがっ!」
「ったく。仕方ないなあ、兄さんは……」
呆れつつも、侑人は背中をぽんぽんと叩いてやる。
恭介の背後には両親の姿があって、目が合うなり微笑みを交わした。当初は息子のカミングアウトに動揺していたようだったが、すぐにあたたかい言葉で受け入れてくれたときのことは記憶に新しい。
父と母、そして高山の親族とも会話を交わして、チャペル内に足を踏み入れる。
真っ先に視界に入ったのは真っ赤なバージンロード。そしてその先、祭壇奥の壮大なステンドグラスだった。ちょうど太陽光が差し込み、辺り一帯を幻想的な雰囲気に彩るそれは、まさに圧巻の一言に尽きる。
ほどなくして牧師とのリハーサルを執り行い、挙式の段取りを確認すれば――いよいよそのときだ。
スタッフの合図を受けて、あらためてチャペルへと入場する。
(う、わっ)
足を踏み入れた途端、ぶわりと感動が押し寄せてくるのを感じた。
緊張しながらも高山のエスコートでバージンロードを歩き、一歩一歩と進みながら祭壇までたどり着く。
厳かな雰囲気の中、式は粛々と進んでいった。牧師による開式の辞から始まり、順番に結婚の誓約を交わす。
心臓が高鳴って手足も緊張で震えていたが、それも最初のうちだけだった。高山と手を重ねながら見つめ合えば、自然と気持ちが落ち着いていくのを感じた。
「I do.《誓います》」
牧師の問いかけにそう答え、誓いの言葉を復唱する。いついかなるときも互いを愛し、人生のあらゆる面で支え合うことを約束する。
そうして、感動の瞬間。指輪の交換へと至ったのだった。
「――……」
高山がリングピローから指輪を摘み上げ、侑人もそれに合わせて左手を差し出す。
二人が選んだのは、永遠の象徴であるメビウスの輪がモチーフのプラチナリングだ。シンプルなデザインでありながらも上品な輝きを放ち、内側には互いのイニシャルと今日の日付が刻印されている。
やがて、高山の手によって指輪がゆっくりと薬指にはめられた。その瞬間、侑人は言葉にできないほどの幸福感に包まれる。
そして高山もまた、同じ思いだったに違いない。高山の眼差しはどこまでも優しく慈愛に満ちていて、思わず見惚れてしまうほどだった。
(高山さん――)
牧師から指輪を受け取り、今度はこちらが高山の左手薬指に通す。
今日という日を迎えるまでさまざまなことがあった。本当に結婚するのだという実感を噛みしめながら指輪をつけ終えれば、牧師による宣言があり――今をもって二人は正式に《夫夫》となったのだった。
「……っ」
牧師の言葉を聞いて、侑人は目頭が熱くなった。
参列している誰もが自分たちの結婚を祝福してくれている。その事実が嬉しくて、知らずのうちに涙がこぼれ落ちていた。
こんなタイミングで泣くだなんて我ながら情けない。が、涙はとめどなく溢れてくる。
『侑人』
声には出さなかったが、高山の唇がそう動いた気がした。
高山はジャケットの内ポケットからハンカチを取り出すと、そっと目元を拭ってくれる。その優しい手つきにますます泣きそうになったけれど、侑人はぐっと堪えて顔を上げた。
「………………」
もう大丈夫だと目で訴えれば、高山は安心したように笑みを深め、緩やかに唇を寄せてくる。
――最後に誓いのキスを交わし、式は滞りなく終了したのだった。
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