上 下
25 / 110

第4話 恋に落ちたあの日のこと(5)★

しおりを挟む
 掠れた声で告げ、ゆっくりと腰を引いていく。ギリギリまで引き抜いてから再び奥を穿てば、侑人は悲鳴じみた声を上げた。

「ひあっ、う……ああっ! 待って……あ、うっ」

 待ってやりたがったが止まらない。高山は激しく腰を振りたくる。
 侑人は顔をぐしゃぐしゃにして喘いでいた。が、なにも苦痛ばかりを感じているわけではないようだ。その証拠に、彼のものは再び熱を帯びて反り返っているし、先端からは蜜が滴っている。

(突っ込まれて勃たせてるとか、マジかよ)

 見るからに快楽に溺れているというのに、本人は気がついていないというアンバランスさといったら。愛おしいと思うと同時に、ほのかな加虐心が芽生えてくるのを感じてならなかった。

(……もっと、乱れさせてやりたい)

 もっとよがらせて、自分を求めてほしい――そんな欲求に駆られて、侑人の両膝をがっしりと抱え込む。胸につくほど折り曲げたのちに、高山は真上から叩きつけるようにして自身を穿ってみせた。

「あっ! うそ、あ……ああぁ……っ」

 侑人が髪を振り乱して身悶える。すすり泣きながらも二度目の絶頂を迎えたようで、自身の顔にまで精液を浴びせかけていた。
 同時に内壁が激しく痙攣し、自身をきつく締め付ける。

「っ、締まる」

 高山も限界が近かった。ラストスパートをかけるべく、荒々しいピストン運動を再開させる。
 侑人はされるがままに揺さぶられていた。

「んあっ、あ! あ、すご……いぃっ」
「俺も、すごくいい」

 息も絶え絶えに言葉を交わすと、高山は侑人の腰を掴み直す。

 もはや理性など欠片も残っていないのだろう。意味のある言葉を紡げなくなったらしい侑人は、口の端から唾液を垂らしてひたすらに喘いでいた。
 その痴態に煽られて、高山も上り詰めていく。そうして一際強く突き上げた瞬間、とうとう限界が訪れた。

「……くっ」
「あっ、あああぁ――!」

 熱い飛沫をコンドームの中に放つ。
 侑人もまた達したらしく、高山は最後の一滴まで絞り取られる感覚を覚えながら脱力した。

「大丈夫か?」

 汗で張りついた前髪を払ってやりつつ声をかける。そんなことをしながらも、冷静になった途端に後悔の念がどっと押し寄せてきた。

(やっちまったな……)

 いくらなんでも容易く煽られすぎだ。
 無理をさせてしまった自覚があるだけに、かなりバツが悪い。相手からしたら初めてのセックスで、しかも友人が可愛がっていた後輩だというのに――考えれば考えるほど、頭を抱えたくなってくる。

 とはいえ、いつまでも考え込んでいるわけにもいかず、ひとまず後処理をしようと思い立ったのだが、

「瀬名?」

 不意に侑人がしがみついてきてドキリとする。
 どうしたのかと覗き込もうとしたが、侑人は肩口に顔を埋めたまま動こうとしなかった。

「……先輩」

 ぐず、という鼻をすする音。
「先輩」とは一体誰のことを指しているのだろう。本城か、それとも――いや、自惚れる余地などあるものか。

「………………」

 高山は胸がちくりと痛むのを感じながらも、優しく抱きしめ返したのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした

なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。 「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」 高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。 そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに… その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。 ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。 かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで… ハッピーエンドです。 R18の場面には※をつけます。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

将軍の宝玉

なか
BL
国内外に怖れられる将軍が、いよいよ結婚するらしい。 強面の不器用将軍と箱入り息子の結婚生活のはじまり。 一部修正再アップになります

浮気な彼氏

月夜の晩に
BL
同棲する年下彼氏が別の女に気持ちが行ってるみたい…。それでも健気に奮闘する受け。なのに攻めが裏切って…?

毒/同級生×同級生/オメガバース(α×β)

ハタセ
BL
βに強い執着を向けるαと、そんなαから「俺はお前の運命にはなれない」と言って逃げようとするβのオメガバースのお話です。

処理中です...