ゲイ卒したいのに、何故かスパダリセフレに溺愛&求婚されてます!

有村千代

文字の大きさ
上 下
12 / 115

第2話 十年越しの初デート(5)

しおりを挟む
 そう思って目をつぶれば、唇が触れるよりも先に額同士がこつんとぶつかった。驚いて目を開けば、至近距離で視線が交わって心臓が飛び跳ねた。

「まあ、いいさ。これからじっくりわからせてやる」

 言って、高山が席を外そうとする。身構えていた侑人は、肩透かしを食らった気分で固まった。

(今のはセックスになだれ込む流れだろ!?)

 今までの経験上、てっきりそこまで考えていたというのに。ついぼんやりとしていたら、高山はしたり顔でこちらを見てきた。

「なに赤くなってんだよ。もしかして期待でもしたか?」
「うっせえよ!」

 図星を突かれ、ソファーにあったクッションに顔を埋める。高山はフッと笑うなり、侑人の髪をかき回してきた。

「時間も時間だし、腹減ったろ? とりあえず飯食おうぜ」

 時刻は正午を過ぎていた。釈然としないが、言われてみれば空腹感を感じる気がする。

「あー……でも、飯どうすんの? 外食くらいならしてもいいけど」
「せっかくだから俺が作るよ。食えないもんとかって特になかったよな?」
「う、うん。ないけど――作るなら、俺もなんか手伝おうか?」
「いや、お前はゆっくりしてろよ。テレビとか自由に見てていいからさ」

 言って、キッチンの方へ向かう高山。
 侑人は言われたとおりにテレビをつけてみる。が、なんとも落ち着かずに、「……やっぱ手伝う」と結局申し出たのだった。

 
 


 それからしばらくして、テーブルの上には二人分の料理が並べられた。
 カルボナーラをメインに、フランスパンのガーリックトースト、生ハムのサラダ。どれも美味しそうな見た目をしており、純粋に食欲がそそられるのを感じた。

 さらには、高山が白ワインのボトルを持ち出してくる。

「この前、取引先から貰ったんだ。せっかくだから一緒に飲もうぜ」
「ちょ、昼間から酒飲むつもりかよ」
「たまの休日なんだからいいだろ?」

 高山は慣れた手つきでコルク栓を抜くと、グラスから数センチ離して静かにワインを注いだ。ふわりと芳醇な香りが漂ってくる。

「そんじゃ、乾杯」

 目の位置までグラスを持ち上げて高山が笑う。こちらも同じように応えて、ワインを口に含んだ。

「美味い――」

 フルーティーな味わいと香りが鼻から抜けていく。ワインは辛口でしっかりとした酸味がありながらも、飲みやすい口当たりだ。

「ああ、なかなかいいな。料理にも合いそうだ」

 言いつつ、高山は早速ガーリックトーストを手にしている。侑人も真似をして一口齧りついてみた。

「っ、うっま……!」

 カリッという香ばしい音に続いて、口の中にガーリックバターの風味が広がる。ワインと合わせることでまた違った味わいになり、つまみにもちょうどいい病みつきになる一品だ。

「そいつはよかった。パスタの方はどうだ?」
「ん、こっちも美味い。カルボナーラとか、家で出来るもんなんだな」

 もちろんのこと、メインとなるカルボナーラも絶品だった。卵とチーズの濃厚な味わいが舌の上でとろけ、そこに黒胡椒のアクセントが加わることで絶妙なバランスを生み出している。
 どれもこれも本当に美味い――副菜である生ハムサラダも含め、感心せざるを得ない。つい手が止まらなくなる。

「そう言ってもらえると、こっちも作った甲斐があるってもんだ。前に比べて料理上手くなっただろ?」

 高山がワインを注ぎながら得意げに笑った。素直に褒めすぎたかもしれない。
 侑人は若干恥ずかしくなり、微妙に話題を逸らすことにした。

「その前に、ちゃんと自炊してたんだなって」
「そりゃ当然。お前は?」
「スーパーの弁当がほとんどで、あとは冷食とかレトルトで済ませてる」
「マジかよ、栄養偏りそうだな。そもそも飽きねえの?」
「男の一人暮らしなんてそんなもんだろ。俺も最初のうちは自炊してたけどさ」
「なるほどな。――なあ、俺と一緒に住めば、毎日こういった飯食わせてやれるぞ?」
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

処理中です...