11 / 116
第2話 十年越しの初デート(4)
しおりを挟む「って、いきなりお家デートかよっ!」
高山の住むマンションの一室に招かれ、開口一番に突っ込む。てっきり外出するものだと思っていただけに拍子抜けだ。
「だってお前、ゲイっぽい雰囲気見せたくないんだろ? 男二人でデートスポット歩いたり、外食したりとかさ」
「あ……」
言われて気がつく。確かにそういった行為はハードルが高く思えるし、どうにも人目を気にしてしまうものがあった。
本人も言ったかどうか定かでないようなことを、高山は覚えていたというのか。侑人は思わぬところで嬉しさを感じてしまった。
(いやいやっ、なに甘ったるいこと考えてんだよ。高山さんはいつもどおりだってのに、俺ばっか意識してバカみたいじゃん)
そう思うと腹が立ってくる。
高山はさっさと靴を脱いで部屋に上がり込んでいた。侑人が複雑な心境で後を追えば、綺麗に片づけられたリビングダイニングに通される。
広々とした空間は、いかにもお洒落なデザイナーズマンションといった雰囲気だ。家具や家電も品が良いものを取り揃えてあり、モデルハウスのような印象さえ受ける。
「なんだか懐かしいな。こうしてうち来んの、学生のとき以来だよな」
「あの頃は安アパートのワンルームだっただろ。……自慢か、この高給取りめ」
普段はあまり意識しないのだが、やはり住む世界が違うのだと突きつけられた気分だ。
こちらは日用品メーカー営業職。対して高山は外資系製薬会社MR――エリートサラリーマンもいいところである。
(くそっ、やっぱ遊ばれてたりとか……。今までだって、全然そういった素振り見せてこなかったし)
一人で百面相する侑人をよそに、高山はやはりいつもどおりで。
「どうした、さっきから顔が面白いぞ」
平然とそんなことを言ってくるものだから、ついカチンときてしまう。侑人は苛立ちを露わにするかのように、どっかりとソファーへ腰を下ろした。
「べつにっ。ただ、この部屋にどんだけの人数連れ込んだのかなあって思っただけ」
嫌味ったらしく言ってのければ、苦笑が返ってくる。
「おいおい心外だな。確かに昔はそれなりに遊んでいたが、今はそんな気もしねえし、もうお前だけだっての」
「え、冗談だろ」
「なに、まだ信じられないって言うのかよ?」
高山は呆れたようにため息をつくと、侑人の隣に腰を下ろした。
「高山さ……っ」
「侑人」
高山の手がこちらへ伸びてきて、やんわりと肩を抱かれる。
ふわりと香った香水の匂いが鼻腔を刺激し、侑人はドキリとした。いきなりのことで動揺するも、高山は構わずに耳元へと顔を寄せてくる。
「好きだ」
低く甘い囁きが鼓膜を揺さぶった。たった一言だというのに、全身が火照ったように熱くなっていく。
「だからっ……んなこと突然言われても。つか、名前で呼ぶなって」
居たたまれなさに侑人は身を引こうとするも、高山がそれを許さない。肩に回された手に力が込められて、ますます距離が縮まった。
「――……」
顔が近い。吐息を感じるほどの距離に鼓動が激しくなる。
(キスされる……っ)
74
お気に入りに追加
649
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

平凡な男子高校生がイケメンに愛される日々、フェロモンって存在するのか?
mamaマリナ
BL
どこにでもいるような平凡な男子高校生の俺だか、何故か男に好かれやすい。あることをきっかけで知り合った、イケメンエリートサラリーマンとの恋模様。
俺は、ノーマルなはずだったのに。
イケメン(エリートサラリーマン)×平凡(男子高校生)

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。


ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる