ゲイ卒したいのに、何故かスパダリセフレに溺愛&求婚されてます!

有村千代

文字の大きさ
上 下
11 / 115

第2話 十年越しの初デート(4)

しおりを挟む




「って、いきなりお家デートかよっ!」

 高山の住むマンションの一室に招かれ、開口一番に突っ込む。てっきり外出するものだと思っていただけに拍子抜けだ。

「だってお前、ゲイっぽい雰囲気見せたくないんだろ? 男二人でデートスポット歩いたり、外食したりとかさ」
「あ……」

 言われて気がつく。確かにそういった行為はハードルが高く思えるし、どうにも人目を気にしてしまうものがあった。
 本人も言ったかどうか定かでないようなことを、高山は覚えていたというのか。侑人は思わぬところで嬉しさを感じてしまった。

(いやいやっ、なに甘ったるいこと考えてんだよ。高山さんはいつもどおりだってのに、俺ばっか意識してバカみたいじゃん)

 そう思うと腹が立ってくる。

 高山はさっさと靴を脱いで部屋に上がり込んでいた。侑人が複雑な心境で後を追えば、綺麗に片づけられたリビングダイニングに通される。
 広々とした空間は、いかにもお洒落なデザイナーズマンションといった雰囲気だ。家具や家電も品が良いものを取り揃えてあり、モデルハウスのような印象さえ受ける。

「なんだか懐かしいな。こうしてうち来んの、学生のとき以来だよな」
「あの頃は安アパートのワンルームだっただろ。……自慢か、この高給取りめ」

 普段はあまり意識しないのだが、やはり住む世界が違うのだと突きつけられた気分だ。
 こちらは日用品メーカー営業職。対して高山は外資系製薬会社MR――エリートサラリーマンもいいところである。

(くそっ、やっぱ遊ばれてたりとか……。今までだって、全然そういった素振り見せてこなかったし)

 一人で百面相する侑人をよそに、高山はやはりいつもどおりで。

「どうした、さっきから顔が面白いぞ」

 平然とそんなことを言ってくるものだから、ついカチンときてしまう。侑人は苛立ちを露わにするかのように、どっかりとソファーへ腰を下ろした。

「べつにっ。ただ、この部屋にどんだけの人数連れ込んだのかなあって思っただけ」

 嫌味ったらしく言ってのければ、苦笑が返ってくる。

「おいおい心外だな。確かに昔はそれなりに遊んでいたが、今はそんな気もしねえし、もうお前だけだっての」
「え、冗談だろ」
「なに、まだ信じられないって言うのかよ?」

 高山は呆れたようにため息をつくと、侑人の隣に腰を下ろした。

「高山さ……っ」
「侑人」

 高山の手がこちらへ伸びてきて、やんわりと肩を抱かれる。
 ふわりと香った香水の匂いが鼻腔を刺激し、侑人はドキリとした。いきなりのことで動揺するも、高山は構わずに耳元へと顔を寄せてくる。

「好きだ」

 低く甘い囁きが鼓膜を揺さぶった。たった一言だというのに、全身が火照ったように熱くなっていく。

「だからっ……んなこと突然言われても。つか、名前で呼ぶなって」

 居たたまれなさに侑人は身を引こうとするも、高山がそれを許さない。肩に回された手に力が込められて、ますます距離が縮まった。

「――……」

 顔が近い。吐息を感じるほどの距離に鼓動が激しくなる。

(キスされる……っ)
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

処理中です...