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第6話 信頼の証とつながる心(3)★
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「あ、待て……っ」
待ったをかけると、羽柴の動きがぴたりと止まった。
「すみません。そういう雰囲気かと思ったんすけど」
「いや、構わない。構わないんだが……今日は、プレイを絡めるようなことはしないでほしい」
「えっ、どうして?」
「君、それを言わせるのか?」
ムッとしてみせるも、羽柴はいまいちピンときていないらしい。
犬飼はやれやれとばかりに息をつくと、羞恥を耐え忍んで言ってのけた。
「恋人として、その、初めての営みなんだろ。サブスペースに入ったら、何がなんだかわからなくなるし……下手に飛びたくないんだ」
それくらい察しろ、と胸元を小突いてやる。
羽柴はようやく合点がいったとばかりに、頷いてみせた。
「はいっ」
照れくさそうに笑って、顔中にキスの雨を降らせていく。押し倒されている体勢も相まってか、犬飼は大型犬にじゃれつかれているみたいだと思った。
「おい、がっつきすぎだっ……するなら、ベッドに」
たしなめるようにして、犬飼は羽柴の胸をやんわりと押し返す。
「ベッドに行こう」という意を込めての言葉だったのだが、相手はそうは捉えなかったらしい。羽柴は犬飼を横抱きにするなり、軽々と持ち上げたのだった。
「仰せのままに」
「!?」
(――誰が「ベッドに連れていけ」などと言った!?)
抗議すらできずに、足早に寝室まで運ばれてしまう。
こちらをベッドに横たえると、羽柴は熱っぽい顔で見下ろしてきた。
そこには確かな情欲が宿っていて、うっかり見惚れてしまったのも束の間――羽柴はネクタイに手をかけたと思うと、荒々しく一息で引き抜いてみせる。
次いでYシャツのボタンを忙しなく外していき、照明が点いていない薄暗がりのなか、その肉体美を惜しげもなく晒したのだった。
(わかってはいたが……脱ぐと、すごいな)
犬飼はごくりと生唾を飲む。
露わになった上半身は均整がとれていて、鍛え上げられた筋肉が各所についていた。元ラグビー部というだけあって肩幅も広く、同じ男として羨ましいものがある。
この体に抱かれるのかと想像しただけで、なんだか頭が沸騰しそうな勢いだった。
「俺、男相手とか初めてっすけど、優しくするんで」
どうやら、緊張しているのはお互い様らしい。ぽつりと呟かれた言葉に、少しだけ余裕が戻ってくるのを感じて、犬飼はフッと笑みをこぼした。
「むしろ、女より頑丈だと思うが」
「蓮也さん。そういう問題じゃないですよ」
「いいよ、本能のままに求めてくれて――俺らはDomとSubなんだから」
手首を掴んで引き寄せると、挑発するように口角を上げてみせる。
羽柴は一瞬息を呑んでから、わかりやすく口を尖らせた。
「あんま煽ると、どうなっても知りませんからね」
「意気地なしのくせに、性欲だけは一丁前だな?」
「……ちょっと黙って」
減らず口を封じ込めるかのように、キスで唇を塞がれ、口腔内を余すことなく愛撫される。
犬飼が羽織っていたYシャツは、いつの間にかはだけさせられていた。羽柴は首筋から鎖骨まで口づけたのち、おもむろに身を起こし、その一糸まとわぬ姿をしげしげと見つめてくる。
「蓮也さん、綺麗な体してる」
「なに言ってるんだ。裸なんて、もう何度も見ているだろ」
「いや、そうなんすけど。やらしい目で見ていいんだと思ったら、つい――こんなところにも、ほくろがあるとか知りませんでしたし」
言って、脚の付け根の際どい部分に口づける。
そこには小さなほくろがあるのだが、思ってもみない羽柴の言動に、犬飼はカッと頬を赤らめた。
待ったをかけると、羽柴の動きがぴたりと止まった。
「すみません。そういう雰囲気かと思ったんすけど」
「いや、構わない。構わないんだが……今日は、プレイを絡めるようなことはしないでほしい」
「えっ、どうして?」
「君、それを言わせるのか?」
ムッとしてみせるも、羽柴はいまいちピンときていないらしい。
犬飼はやれやれとばかりに息をつくと、羞恥を耐え忍んで言ってのけた。
「恋人として、その、初めての営みなんだろ。サブスペースに入ったら、何がなんだかわからなくなるし……下手に飛びたくないんだ」
それくらい察しろ、と胸元を小突いてやる。
羽柴はようやく合点がいったとばかりに、頷いてみせた。
「はいっ」
照れくさそうに笑って、顔中にキスの雨を降らせていく。押し倒されている体勢も相まってか、犬飼は大型犬にじゃれつかれているみたいだと思った。
「おい、がっつきすぎだっ……するなら、ベッドに」
たしなめるようにして、犬飼は羽柴の胸をやんわりと押し返す。
「ベッドに行こう」という意を込めての言葉だったのだが、相手はそうは捉えなかったらしい。羽柴は犬飼を横抱きにするなり、軽々と持ち上げたのだった。
「仰せのままに」
「!?」
(――誰が「ベッドに連れていけ」などと言った!?)
抗議すらできずに、足早に寝室まで運ばれてしまう。
こちらをベッドに横たえると、羽柴は熱っぽい顔で見下ろしてきた。
そこには確かな情欲が宿っていて、うっかり見惚れてしまったのも束の間――羽柴はネクタイに手をかけたと思うと、荒々しく一息で引き抜いてみせる。
次いでYシャツのボタンを忙しなく外していき、照明が点いていない薄暗がりのなか、その肉体美を惜しげもなく晒したのだった。
(わかってはいたが……脱ぐと、すごいな)
犬飼はごくりと生唾を飲む。
露わになった上半身は均整がとれていて、鍛え上げられた筋肉が各所についていた。元ラグビー部というだけあって肩幅も広く、同じ男として羨ましいものがある。
この体に抱かれるのかと想像しただけで、なんだか頭が沸騰しそうな勢いだった。
「俺、男相手とか初めてっすけど、優しくするんで」
どうやら、緊張しているのはお互い様らしい。ぽつりと呟かれた言葉に、少しだけ余裕が戻ってくるのを感じて、犬飼はフッと笑みをこぼした。
「むしろ、女より頑丈だと思うが」
「蓮也さん。そういう問題じゃないですよ」
「いいよ、本能のままに求めてくれて――俺らはDomとSubなんだから」
手首を掴んで引き寄せると、挑発するように口角を上げてみせる。
羽柴は一瞬息を呑んでから、わかりやすく口を尖らせた。
「あんま煽ると、どうなっても知りませんからね」
「意気地なしのくせに、性欲だけは一丁前だな?」
「……ちょっと黙って」
減らず口を封じ込めるかのように、キスで唇を塞がれ、口腔内を余すことなく愛撫される。
犬飼が羽織っていたYシャツは、いつの間にかはだけさせられていた。羽柴は首筋から鎖骨まで口づけたのち、おもむろに身を起こし、その一糸まとわぬ姿をしげしげと見つめてくる。
「蓮也さん、綺麗な体してる」
「なに言ってるんだ。裸なんて、もう何度も見ているだろ」
「いや、そうなんすけど。やらしい目で見ていいんだと思ったら、つい――こんなところにも、ほくろがあるとか知りませんでしたし」
言って、脚の付け根の際どい部分に口づける。
そこには小さなほくろがあるのだが、思ってもみない羽柴の言動に、犬飼はカッと頬を赤らめた。
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