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第6話 信頼の証とつながる心(2)★

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 心からそう言うと、羽柴が柔らかく手を取ってきた。心底ホッとしたように息をついて、赤くなった顔を伏せる。

「俺、Domになってよかった。初めてそう思いました」

 その言葉に、犬飼は小さく頷いて微笑みかけた。

 DomとSubの関係は運命的だのなんだの――人はみな口を揃えて言うが、今この瞬間だけは信じたくもなってしまう。
 ダイナミクスという本能レベルで惹かれ合ったのだから、それこそ〝運命〟以外の何ものでもないだろうと。きっと、いつかこうなることを、無意識のうちに期待していたのではなかろうか。

「そういえば、まだ『すべてを捧げたい』としか言ってなかったな」
「え?」

 思い出したように呟けば、羽柴がきょとんとして顔を上げる。
 犬飼は頬が熱くなる感覚を覚えながらも、相手の目を真っ直ぐに見つめた。

「俺も君のことが好きだ、羽柴」
「――……」
「君にとって、こちらの方がより伝わるだろ?」

 小首を傾げて問いかけるも、相手の反応を見れば一目瞭然だ。
 羽柴は動揺を隠せない様子で、耳まで真っ赤になってしまっている。それから間もなくして、わなわなと唇を震わせたかと思えば、

「蓮也さん、すげー好き……大好きっ」

 と、感情を露わにするかのように、勢いよく抱きついてくるのだった。

 犬飼は驚きつつも、その勢いをしっかりと受け止めてみせる。体が密着して、心臓の音が聞こえてしまうのが、恥ずかしくてならなかったが――この鼓動ごと羽柴への想いが伝わるならば、それでもいいと思えた。
 ただ、抱きしめてくる力が強すぎるというのは、ちょっとした難点かもしれない。

「羽柴、力込めすぎだ」

 苦笑しつつ背中を叩くと、羽柴はハッとして体を離した。

 二人の間に甘酸っぱい雰囲気が漂い、至近距離で視線を交わし合う。
 先に仕掛けてきたのは、羽柴の方だった。羽柴はこちらの顎に指を添え、ゆっくりと顔を近づけてくる。
 犬飼はそれに応えるように、静かに瞼を下ろした。

「ん……」

 羽柴の唇が犬飼のそれに重ねられる。
 ちゅっ、と音を立てて離れていったかと思えば、すぐにまた角度を変えて口づけられた。今度は長く触れ合わせ、時折、むようにして感触を楽しんでくる。

 犬飼はくすぐったさを覚えて笑い混じりだったが、そのうちに唇を舌先で舐められて、不覚にもドキリとさせられた。瞼を薄く開けると、熱っぽい眼差しとかち合う。

 そして、相手の侵入を容易く許してしまうのだった。

「っ、は」

 歯列を割って、羽柴の舌が口内を探ってくる。
 ぬるりとした感触に身震いするも、伝わってくる温もりがひどく心地いい。コマンドを使われているわけでもないのに、頭がふわふわとしてしまう。

(くそ……上手いな)

 気がついたときには主導権を奪われていた。
 上顎をくすぐられれば、思わず鼻にかかった声が漏れ出て、その反応に気をよくしたらしい羽柴がさらに責め立ててくる。

「んっ……ふ」

 口腔内を蹂躙していた舌がこちらを捕まえて、逃がさないとばかりに絡めとられてしまう。
 犬飼はすがりつくように、羽柴のYシャツを掴んだ。ぬるぬると擦り合わされるたびに、甘い痺れが背筋を駆け抜けてたまらなくなる。

「っ、羽柴」

 酸素を求めて口を開けば、その隙さえ許されずに深く口づけられた。そのまま肩を押され、床の上に押し倒されてしまうと、羽柴の大きな体が覆い被さってくる。

 羽柴はなおも唇を貪り続けて、ようやく解放された頃には、互いに肩で息をするのがやっとだった。

「………………」

 二人の間に伸びた銀糸が、ぷつりと途切れる。
 しばし無言のまま見つめ合っていたが、羽柴の手がそろりと伸びて、犬飼の頬を撫でてきた。首輪の存在を確かめるかのように首筋を辿ったのち、胸元へと下っていく。
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