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第4話 甘酸っぱいデートと波乱(6)★
しおりを挟む「っふ、は……」
まるで口淫でもされているかのようだ。犬飼はうっとりとした表情を浮かべ、指の付け根まで舌を這わせようとする。
伝わってくる生温かさと、ねっとりと絡みつく感触。そして何よりも、あの犬飼が淫らな姿を晒しているという事実に、羽柴の頭は沸騰寸前だった。
(なんか、やばい……)
言いようのない高揚感が、羽柴を支配していく。
人差し指を口腔内に押し込めば、犬飼は当然のごとく受け入れ、ちゅくちゅくと音を立てて舐めしゃぶってきた。それこそ、男のものに奉仕するかのようで、羽柴の欲望がずくりと疼きだす。
「蓮也、甘えてるの? 俺の指おいしい?」
そう問いかけながらも中指を追加し、二本の指で上顎を擦ってみせた。
犬飼はこくこくと頷いたのちに、くぐもった声を上げる。
「ふ、ぁ……おいひ……」
その口元はよだれが滴っているにも関わらず、本人に何ら気にする様子はない。
目の前の淫猥な光景に、羽柴は知らず知らずのうちに鼻息を荒くさせていた。ひたすら顔が熱くて、なんだか嫌な汗までかいている気がする。
そんなこちらの胸中など露知らず、犬飼は一心不乱といった様子だ。
口腔から指を抜こうとすると、名残惜しげに舌が追いすがってきたが、あやすようにして言い聞かせる。それでも犬飼は口を開けたまま、物欲しそうな顔で見つめてきた。
(ああ、もっと服従させたい――)
高揚感なんてものではない。突如として生まれた黒い感情が、羽柴の心を巣食う。
「Kneel」
衝動のままに繰り出したのは、Subの基本的な姿勢。「Sit」とは区別して用いられる、《跪け》というニュアンスのコマンドだった。
犬飼は弾かれたようにソファーから降り、羽柴の前まで移動する。それから、床にぺたんと尻をついて座り込んだ。
どこまでも従順な犬飼は、まさに躾けがなされた飼い犬のようで、羽柴の支配欲を満たしていく。
しかし、跪かせるだけではまだ足りない。今度は指ではなく、自分のもので喉奥まで犯して、犯し尽くして――。
羽柴はごくりと生唾を飲み込んだのち、相手の後頭部に手を回して、力任せに引き寄せた。
「Lick」
有無を言わさぬ口調でコマンドを発する。それは紛れもなく自身の声だったが、他人の空似としか思えなかった。
犬飼は驚く素振りを見せたものの、戸惑う様子はなく、羽柴の股ぐらへと顔を埋めてくる。テーパードパンツのボタンを外すなり、ファスナーを歯で挟んで、ゆっくりと引き下ろしにかかった。
「んっ、ふ――」
ジジジッ……と生々しい音がして、下着越しに怒張したものがあらわになる。
犬飼はすかさず鼻を擦りつけ、雄の匂いを堪能するかのように息を吸ってみせた。布地の上から先端を食むと、唇でやわやわと刺激を与えてくる。
羽柴はじれったいような快感に、思わず吐息を漏らした。
すると、犬飼も察したのだろう。下着のゴムに噛みつくなり、器用にもそのままずり下ろしていく。
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