上 下
28 / 63

第4話 甘酸っぱいデートと波乱(6)★

しおりを挟む

「っふ、は……」

 まるで口淫でもされているかのようだ。犬飼はうっとりとした表情を浮かべ、指の付け根まで舌を這わせようとする。
 伝わってくる生温かさと、ねっとりと絡みつく感触。そして何よりも、あの犬飼が淫らな姿を晒しているという事実に、羽柴の頭は沸騰寸前だった。

(なんか、やばい……)

 言いようのない高揚感が、羽柴を支配していく。

 人差し指を口腔内に押し込めば、犬飼は当然のごとく受け入れ、ちゅくちゅくと音を立てて舐めしゃぶってきた。それこそ、男のものに奉仕するかのようで、羽柴の欲望がずくりと疼きだす。

「蓮也、甘えてるの? 俺の指おいしい?」

 そう問いかけながらも中指を追加し、二本の指で上顎を擦ってみせた。
 犬飼はこくこくと頷いたのちに、くぐもった声を上げる。

「ふ、ぁ……おいひ……」

 その口元はよだれが滴っているにも関わらず、本人に何ら気にする様子はない。
 目の前の淫猥な光景に、羽柴は知らず知らずのうちに鼻息を荒くさせていた。ひたすら顔が熱くて、なんだか嫌な汗までかいている気がする。

 そんなこちらの胸中など露知らず、犬飼は一心不乱といった様子だ。
 口腔から指を抜こうとすると、名残惜しげに舌が追いすがってきたが、あやすようにして言い聞かせる。それでも犬飼は口を開けたまま、物欲しそうな顔で見つめてきた。

(ああ、もっと――)

 高揚感なんてものではない。突如として生まれた黒い感情が、羽柴の心を巣食う。

Kneelおすわり

 衝動のままに繰り出したのは、Subの基本的な姿勢。「Sitおすわり」とは区別して用いられる、《跪け》というニュアンスのコマンドだった。
 犬飼は弾かれたようにソファーから降り、羽柴の前まで移動する。それから、床にぺたんと尻をついて座り込んだ。

 どこまでも従順な犬飼は、まさに躾けがなされた飼い犬のようで、羽柴の支配欲を満たしていく。
 しかし、跪かせるだけではまだ足りない。今度は指ではなく、自分のもので喉奥まで犯して、犯し尽くして――。

 羽柴はごくりと生唾を飲み込んだのち、相手の後頭部に手を回して、力任せに引き寄せた。

Lick舐めて

 有無を言わさぬ口調でコマンドを発する。それは紛れもなく自身の声だったが、他人の空似としか思えなかった。

 犬飼は驚く素振りを見せたものの、戸惑う様子はなく、羽柴の股ぐらへと顔を埋めてくる。テーパードパンツのボタンを外すなり、ファスナーを歯で挟んで、ゆっくりと引き下ろしにかかった。

「んっ、ふ――」

 ジジジッ……と生々しい音がして、下着越しに怒張したものがあらわになる。

 犬飼はすかさず鼻を擦りつけ、雄の匂いを堪能するかのように息を吸ってみせた。布地の上から先端をむと、唇でやわやわと刺激を与えてくる。

 羽柴はじれったいような快感に、思わず吐息を漏らした。
 すると、犬飼も察したのだろう。下着のゴムに噛みつくなり、器用にもそのままずり下ろしていく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

有能社長秘書のマンションでテレワークすることになった平社員の俺

高菜あやめ
BL
【マイペース美形社長秘書×平凡新人営業マン】会社の方針で社員全員リモートワークを義務付けられたが、中途入社二年目の営業・野宮は困っていた。なぜならアパートのインターネットは遅すぎて仕事にならないから。なんとか出社を許可して欲しいと上司に直談判したら、社長の呼び出しをくらってしまい、なりゆきで社長秘書・入江のマンションに居候することに。少し冷たそうでマイペースな入江と、ちょっとビビりな野宮はうまく同居できるだろうか? のんびりほのぼのテレワークしてるリーマンのラブコメディです

Sweet☆Sweet~蜂蜜よりも甘い彼氏ができました

葉月めいこ
BL
紳士系ヤクザ×ツンデレ大学生の年の差ラブストーリー 最悪な展開からの運命的な出会い 年の瀬――あとひと月もすれば今年も終わる。 そんな時、新庄天希(しんじょうあまき)はなぜかヤクザの車に乗せられていた。 人生最悪の展開、と思ったけれど。 思いがけずに運命的な出会いをしました。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

初体験

nano ひにゃ
BL
23才性体験ゼロの好一朗が、友人のすすめで年上で優しい男と付き合い始める。

年上の恋人は優しい上司

木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。 仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。 基本は受け視点(一人称)です。 一日一花BL企画 参加作品も含まれています。 表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!! 完結済みにいたしました。 6月13日、同人誌を発売しました。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

おだやかDomは一途なSubの腕の中

phyr
BL
リユネルヴェニア王国北の砦で働く魔術師レーネは、ぽやぽやした性格で魔術以外は今ひとつ頼りない。世話をするよりもされるほうが得意なのだが、ある日所属する小隊に新人が配属され、そのうち一人を受け持つことになった。 担当することになった新人騎士ティノールトは、書類上のダイナミクスはNormalだがどうやらSubらしい。Domに頼れず倒れかけたティノールトのためのPlay をきっかけに、レーネも徐々にDomとしての性質を目覚めさせ、二人は惹かれ合っていく。 しかしティノールトの異動によって離れ離れになってしまい、またぼんやりと日々を過ごしていたレーネのもとに、一通の書類が届く。 『貴殿を、西方将軍補佐官に任命する』 ------------------------ ※10/5-10/27, 11/1-11/23の間、毎日更新です。 ※この作品はDom/Subユニバースの設定に基づいて創作しています。一部独自の解釈、設定があります。 表紙は祭崎飯代様に描いていただきました。ありがとうございました。 第11回BL小説大賞にエントリーしております。

処理中です...