幼馴染みとアオハル恋事情

有村千代

文字の大きさ
上 下
20 / 77

第4話 幼馴染みには戻れない(2)

しおりを挟む
(ズリネタに使って、ホントすんません……)
 おかげで胸中は罪悪感や羞恥心でいっぱいだ。自分ではいつもどおりに接していたつもりだったが、知らずのうちに、ぎこちなさが出てしまっていたらしい。
 安田や沢村が気づいているということは、間違いなく明本人も気づいているだろう。ちょっとそれはマズい気がする。
 明とは友達として良好な関係でいたいし、完全にこちらの都合だが、こんなことでギクシャクしたくはない――千佳はおずおずと明の方へ歩み寄った。
「明、このあとメシ行かね? 安田と沢村は用事あるみてーだから、二人なんだけどさ」
 言いながらも、まともに顔を合わせられない自分にハッとする。ここ最近、ずっとこうだったのだろうか。
 明はこちらをじっと見てから、小さく嘆息した。
「そうだな。駅前でなんか食うか」
 明がいつものように淡々と答える。
 特に変わったところは見当たらない。そのことに安堵した反面、彼がどう考えているのか気になって、千佳はどこか落ち着かなかった。



 帰りのHRを終え、千佳と明は二人で教室を出る。帰り際、安田らに「ちゃんと仲直りしろよ」と茶々を入れられたが、「だから違ぇよ!」と一蹴した。
「なに話してたんだ、アイツらと」
 昇降口でスニーカーに履き替えていると、明がぽつりと尋ねてくる。先ほどのやり取りを聞いて気になったのだろう。
 千佳は内心動揺しながらも、正直に答えることにした。
「俺と明が、ケンカでもしてるんじゃないかって」
「確かにお前、最近おかしいっつーか。元気ないように見えたしな」
 やはりあからさまに態度に出ていたようだ。わかってはいたけれど、本人の口から直接きいたら、申し訳なさが一気に押し寄せてきた。
「俺としては、そーゆーつもりなかったんだけど。なんつったらいいのか……」
「なに? もしかして、この前のことでも意識してんのかよ――クソ童貞」
「ぬわあああっ!?」
 学校で話していい話題ではない。明の声を打ち消すように、千佳は大きな声で叫んで胸倉に掴みかかった。
「ンなワケあっか! ヘンなこと思い出させるな、バカ野郎!」
 勢いのままに怒鳴ってから、はたと我に返る。周囲の生徒たちが何事かと見ていた。
 千佳は慌てて手を離し、明も襟元を整える――外野からしたら、本当に喧嘩をしていると思われかねない。
「……最悪。俺が童貞なのバレたらどーすんだよ」
 小声で言って背を向ける。言うまでもなく問題はそこではないし、こんなの単なる誤魔化しにすぎない。
しおりを挟む
□おまけイラスト・漫画はコチラから
https://poipiku.com/401008/
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

思い出して欲しい二人

春色悠
BL
 喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。  そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。  一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。  そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。

たまにはゆっくり、歩きませんか?

隠岐 旅雨
BL
大手IT企業でシステムエンジニアとして働く榊(さかき)は、一時的に都内本社から埼玉県にある支社のプロジェクトへの応援増員として参加することになった。その最初の通勤の電車の中で、つり革につかまって半分眠った状態のままの男子高校生が倒れ込んでくるのを何とか支え抱きとめる。 よく見ると高校生は自分の出身高校の後輩であることがわかり、また翌日の同時刻にもたまたま同じ電車で遭遇したことから、日々の通勤通学をともにすることになる。 世間話をともにするくらいの仲ではあったが、徐々に互いの距離は縮まっていき、週末には映画を観に行く約束をする。が……

処理中です...