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第2話 好きだと気づいたところで(3)

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(あれって、男……だよな?)
 すっかり女子が来るものとばかり思っていたので、拍子抜けしてしまう。華奢で可愛らしい顔立ちではあるが、どこからどう見たって同性だ。
 おそらくは千佳の知らない友人に違いない――などと判断しつつも、彼らが薄暗い小道へと進んでいくので違和感を感じる。
 一体どこへ向かおうというのか。気になって追ってみると、二人が階段を上がっていく姿が見えた。
 そこから続く路地は、千佳にとって異世界といっても過言ではないものだった。
 裏路地によくある住宅街かと思えば、ラブホテルばかり立ち並んでいるのだ。これはいわゆる《ラブホテル街》ではなかろうか。
(……嘘、だろ)
 動揺している間にも、明たちはその中の一つに入っていく。人目避けの塀ですぐに見えなくなったが、あまりに信じられない光景に、千佳はホテルの前で立ちすくむしかない。
 ところがそれも束の間。ぽんっと肩を叩かれてギクリとした。
「ユウキくん? もう、ホテルのロビーで待ち合わせって言ったのに~」
 振り向けば、見知らぬ男が微笑んでいた。シルバー系のマッシュヘアに、艶やかな肌が印象的で、美人と称するのがぴったりな風貌――《オネエ系》という言葉が頭に浮かんだ。
「え、えっと?」
「あらやだ、写真で見るよりずっと可愛いじゃない。はやく可愛がってあげた~い」
「ひうっ!?」
 甘ったるい囁きとともに臀部を撫でられる。全身が総毛立ち、ざあっと一気に血の気が引いた気がした。
 勿論のこと心当たりはないし、相手は他の誰かと勘違いしているのだろう。場所も場所であれば、この状況はマズい気がする。
「あの、待ってくださっ」
「ふふ、ウブで可愛いんだから。とりあえず中に入りましょ?」
「ちょっ、だから待てっての!」
「いいからいいから。アタシ、うんと優しくするタイプだから安心して?」
 クイッと腰を抱き寄せられたかと思えば、あれよあれよのうちにホテル内へと案内されてしまう。
 千佳の頭はすっかり混乱していて、事態の収拾がつかない。だけれども、
「人違い! 人違いだから、俺っ!」
 ロビーに入ったところで、やっとのことで伝える。
 声を上げた途端、パネルで客室を選んでいたであろう先客がこちらを見たのがわかった。
「お前……」
 言うまでもなく、声の主は明だった。千佳が目を向けると、彼は怒ったように眉を吊り上げてこちらに向かってくる。
「何してんだよ、こんなところでっ」
「っわ!」
 強い力で腕を掴まれ、力づくで《オネエ系》から引き剥がされた。そのままホテルの外に連れ出される。
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