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第2話 俺ら、付き合ってみっか?(3)★
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「え? な、なに、今……なにして……」
犬塚はそっと自分の唇を撫でる。それから、一気に耳まで赤くなったかと思うと、ひたすらに口をパクパクとさせた。
「あ……わ、わっ」
「うわっ、わりィ! そんなに嫌だったかよ――いや、そりゃそうだよな!?」
犬塚は瞳を潤ませて、今にも泣き出してしまいそうな様子だ。
冷静になって考えれば、それも無理のないことだろう。同性から突然キスされたら誰だって引くに決まっている。不破自身、まさかこのような行動に出るとは思っていなかったし、相手が犬塚以外だったら気持ち悪いと感じていたはずだ。
「ち、違くって! お、俺、はじめてだったから……」
「それ、最悪じゃねーか!」
勢いに任せた行動など、ろくなことにならない。不破は深く反省しつつ、「すまなかった」と改めて謝罪した。
その一方、犬塚は首を大きく横に振って、なんとか言葉を紡ごうとするのだが、
「……う、うう~っ」
どう言えばいいのかわからないといった感じで、結局は涙目のまま黙り込んでしまった。
身長差のせいで、自然と上目づかいになってしまうのがずるい。犬塚の反応をこちらの都合よく受け取っていいものか、と悩む間もなく、不破はまたしても衝動的に犬塚の体を抱きしめてしまった。
「あ……」
「犬塚。嫌だったら、ちゃんと抵抗しろよな」
静かに告げて再び唇を重ねる。一旦離すと、今度は角度を変えてもう一度。
薄く瞼を開けて確認すれば、犬塚は瞳を閉じてこちらのキスに応えていた。それを確認して、舌先でちょんと唇に触れてみる。
「……っ」
びくりと肩を震わせたものの、やはり不破のことを押し返そうとはしない。されるがままの犬塚に、不破はさらに口づけを深くした。
「んっ、ん!?」
口内へ舌を侵入させると、犬塚は驚いたように声を漏らす。さすがに拒まれるかと思ったが、やがてこちらの背に腕を回して、ぎゅうとしがみついてくるのだった。
(マジかよ……)
予期せぬ反応に、信じられない気持ちでいっぱいになる。だが、同時にこの行為を許されているのだという事実に、胸の奥が熱くなってどうしようもない。
不破は何も考えられなくなって、次第に大胆になっていった。歯列をなぞるように舐め、上顎をくすぐり、しまいには舌を犬塚のものと絡ませる。犬塚が苦しそうにしているのはわかったが、歯止めなどきかなかった。
「ふ、あっ……せんぱ……」
唇の隙間からは時折甘い吐息が漏れ、ますます不破の理性を狂わせる。
もっと触れたい一心で、不破はその華奢な体を強く抱きしめた。
「犬塚」
「んっ……ふ」
くちゅ、ぢゅる、と互いの唾液が混ざり合う音を聞きながら、犬塚の口腔を思う存分堪能する。犬塚もまた、拙いながらも小さな舌で懸命についてこようとするのがいじらしく、愛おしさが溢れてくるようだった。
(ヤベ、止まんねェ……)
どれくらいの時間、そうしていただろう。
気がつけば、知らずのうちに犬塚のことを壁際に追いつめていたようで、彼はつま先立ちのまま身動きが取れない状態になっていた。いくらなんでも調子に乗りすぎたかもしれない、とようやく唇を離す。
犬塚は不破の腕の中でぐったりとしていた。顔はすっかり蕩けていて、口からは飲み込みきれなかった唾液が垂れてしまっている――艶っぽい表情に、不破はごくりと生唾を飲み込んだ。
しかし、ドキッとするのも束の間、犬塚は気を失うかのように膝から崩れ落ちたのだった。
「おい、犬塚っ? 犬塚ー!?」
声をかけても、意識が遠のいているのか返事がない。不破は慌ててその場にしゃがみ込むと、犬塚を抱えて保健室へと向かったのだった。
犬塚はそっと自分の唇を撫でる。それから、一気に耳まで赤くなったかと思うと、ひたすらに口をパクパクとさせた。
「あ……わ、わっ」
「うわっ、わりィ! そんなに嫌だったかよ――いや、そりゃそうだよな!?」
犬塚は瞳を潤ませて、今にも泣き出してしまいそうな様子だ。
冷静になって考えれば、それも無理のないことだろう。同性から突然キスされたら誰だって引くに決まっている。不破自身、まさかこのような行動に出るとは思っていなかったし、相手が犬塚以外だったら気持ち悪いと感じていたはずだ。
「ち、違くって! お、俺、はじめてだったから……」
「それ、最悪じゃねーか!」
勢いに任せた行動など、ろくなことにならない。不破は深く反省しつつ、「すまなかった」と改めて謝罪した。
その一方、犬塚は首を大きく横に振って、なんとか言葉を紡ごうとするのだが、
「……う、うう~っ」
どう言えばいいのかわからないといった感じで、結局は涙目のまま黙り込んでしまった。
身長差のせいで、自然と上目づかいになってしまうのがずるい。犬塚の反応をこちらの都合よく受け取っていいものか、と悩む間もなく、不破はまたしても衝動的に犬塚の体を抱きしめてしまった。
「あ……」
「犬塚。嫌だったら、ちゃんと抵抗しろよな」
静かに告げて再び唇を重ねる。一旦離すと、今度は角度を変えてもう一度。
薄く瞼を開けて確認すれば、犬塚は瞳を閉じてこちらのキスに応えていた。それを確認して、舌先でちょんと唇に触れてみる。
「……っ」
びくりと肩を震わせたものの、やはり不破のことを押し返そうとはしない。されるがままの犬塚に、不破はさらに口づけを深くした。
「んっ、ん!?」
口内へ舌を侵入させると、犬塚は驚いたように声を漏らす。さすがに拒まれるかと思ったが、やがてこちらの背に腕を回して、ぎゅうとしがみついてくるのだった。
(マジかよ……)
予期せぬ反応に、信じられない気持ちでいっぱいになる。だが、同時にこの行為を許されているのだという事実に、胸の奥が熱くなってどうしようもない。
不破は何も考えられなくなって、次第に大胆になっていった。歯列をなぞるように舐め、上顎をくすぐり、しまいには舌を犬塚のものと絡ませる。犬塚が苦しそうにしているのはわかったが、歯止めなどきかなかった。
「ふ、あっ……せんぱ……」
唇の隙間からは時折甘い吐息が漏れ、ますます不破の理性を狂わせる。
もっと触れたい一心で、不破はその華奢な体を強く抱きしめた。
「犬塚」
「んっ……ふ」
くちゅ、ぢゅる、と互いの唾液が混ざり合う音を聞きながら、犬塚の口腔を思う存分堪能する。犬塚もまた、拙いながらも小さな舌で懸命についてこようとするのがいじらしく、愛おしさが溢れてくるようだった。
(ヤベ、止まんねェ……)
どれくらいの時間、そうしていただろう。
気がつけば、知らずのうちに犬塚のことを壁際に追いつめていたようで、彼はつま先立ちのまま身動きが取れない状態になっていた。いくらなんでも調子に乗りすぎたかもしれない、とようやく唇を離す。
犬塚は不破の腕の中でぐったりとしていた。顔はすっかり蕩けていて、口からは飲み込みきれなかった唾液が垂れてしまっている――艶っぽい表情に、不破はごくりと生唾を飲み込んだ。
しかし、ドキッとするのも束の間、犬塚は気を失うかのように膝から崩れ落ちたのだった。
「おい、犬塚っ? 犬塚ー!?」
声をかけても、意識が遠のいているのか返事がない。不破は慌ててその場にしゃがみ込むと、犬塚を抱えて保健室へと向かったのだった。
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