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第1話 あなたの舎弟にしてください!(3)★
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◇
不破の《自称舎弟》こと犬塚は、隙あらば付きまとってきた。
昼休みになれば、わざわざ教室にやって来て購買部の使いっぱしりを買って出るし、授業が終われば、不破の住んでいる学生寮(学生会館)まで荷物を持とうとする。おかげで周囲の目が気になって仕方ないというか、現にちょっとした噂になっているくらいだ。
そうして、かれこれ一週間が経ち、不破はすっかり辟易していた。
(いや、さすがにしつけェわ!)
数日で気が済むだろうと高を括っていたものの、一向にその気配がないのだ。
今もこうして寮の自室まで押し掛けてきて、犬塚は甲斐甲斐しく掃除をしている。下校時の荷物持ちだけでは飽き足らずに、だ。
「先輩はすごいなあ~。俺、高校で一人暮らしとか考えたこともなかったです」
「実家はクソ田舎で遊ぶとこねェし、早く親元離れたかっただけだよ」
ベッドの上に腰掛けて、気怠げに会話をする。
その態度をどう取ったのか、犬塚がニコニコしながらこちらに近づいてきた。
「先輩っ、疲れてるなら肩でも揉みましょうか?」
またもや目を輝かせて。いい加減、どうにかならないものだろうか。
「お前なあ。いつまでこんなこと続けるつもりだよ」
「へ……?」
きょとんとした顔つきになったあと、犬塚は不思議そうに首を傾げた。そのようなことを言われるとは思っていなかった、といったところだろう。
「恩があるつったって、もう十分だろ。これ以上、テメェの世話になる理由なんてねェよ」
「でも、俺……俺はもっと不破先輩に――」
言いかけて、ぐっと唇を噛む。そんな犬塚の様子を眺めながら、不破は小さく嘆息した。
「……そうだな。そんなに言うなら、シモの世話でもしてもらうか」
わざとらしく声を落として口にすると、犬塚は気まずそうに目を泳がせた。
「え、ええ~っと。それってつまり……」
「最近、女と遊んでねェから溜まってんだ。男でも手コキくらいはできんだろ? 自分でシてるときと同じようにすりゃいーんだからよ」
さすがに言いすぎただろうか。しかし、こうでもしなければ突き放せないと思ったのだ。
(これでコイツも懲りんだろ。こんなガキに、いつまでも付き合ってられっかっての)
少しの間ならいいものの、いくら何でも度が過ぎる。
不破にとって、犬塚は単なる後輩であり、それ以上でもそれ以下でもない。ここまでしつこく付きまとわれると、いずれ鬱陶しいという気持ちが勝ってしまうだろう。そうなる前にきっぱりと縁を切るべきだ。
ショックを受けているのか、犬塚は黙ったまま俯いていた。が、やがて何か決意したように顔を上げて、
「わ、わかりました!」
真っ赤になってそんなことを言ってくるものだから、今度は不破の方が動揺してしまう。
「ちょっ、なんでそうなる! フツーありえねェだろ!?」
「だって、先輩のお役に立てるなら何でもさせてほしいですっ」
言うなり、犬塚はしゃがみ込んで、恐る恐る不破のズボンへと手を伸ばす。布地越しに股間を撫でながら、さらに顔を赤くさせた。
「わ、すごい……先輩のおっきい」
その呟きに、何故か愚息が反応して膨らんでしまう。
いくら恩返しとはいえ、ここまでする必要があるだろうか。正直、このような展開になるとはまったく予想していなかった。
不破の《自称舎弟》こと犬塚は、隙あらば付きまとってきた。
昼休みになれば、わざわざ教室にやって来て購買部の使いっぱしりを買って出るし、授業が終われば、不破の住んでいる学生寮(学生会館)まで荷物を持とうとする。おかげで周囲の目が気になって仕方ないというか、現にちょっとした噂になっているくらいだ。
そうして、かれこれ一週間が経ち、不破はすっかり辟易していた。
(いや、さすがにしつけェわ!)
数日で気が済むだろうと高を括っていたものの、一向にその気配がないのだ。
今もこうして寮の自室まで押し掛けてきて、犬塚は甲斐甲斐しく掃除をしている。下校時の荷物持ちだけでは飽き足らずに、だ。
「先輩はすごいなあ~。俺、高校で一人暮らしとか考えたこともなかったです」
「実家はクソ田舎で遊ぶとこねェし、早く親元離れたかっただけだよ」
ベッドの上に腰掛けて、気怠げに会話をする。
その態度をどう取ったのか、犬塚がニコニコしながらこちらに近づいてきた。
「先輩っ、疲れてるなら肩でも揉みましょうか?」
またもや目を輝かせて。いい加減、どうにかならないものだろうか。
「お前なあ。いつまでこんなこと続けるつもりだよ」
「へ……?」
きょとんとした顔つきになったあと、犬塚は不思議そうに首を傾げた。そのようなことを言われるとは思っていなかった、といったところだろう。
「恩があるつったって、もう十分だろ。これ以上、テメェの世話になる理由なんてねェよ」
「でも、俺……俺はもっと不破先輩に――」
言いかけて、ぐっと唇を噛む。そんな犬塚の様子を眺めながら、不破は小さく嘆息した。
「……そうだな。そんなに言うなら、シモの世話でもしてもらうか」
わざとらしく声を落として口にすると、犬塚は気まずそうに目を泳がせた。
「え、ええ~っと。それってつまり……」
「最近、女と遊んでねェから溜まってんだ。男でも手コキくらいはできんだろ? 自分でシてるときと同じようにすりゃいーんだからよ」
さすがに言いすぎただろうか。しかし、こうでもしなければ突き放せないと思ったのだ。
(これでコイツも懲りんだろ。こんなガキに、いつまでも付き合ってられっかっての)
少しの間ならいいものの、いくら何でも度が過ぎる。
不破にとって、犬塚は単なる後輩であり、それ以上でもそれ以下でもない。ここまでしつこく付きまとわれると、いずれ鬱陶しいという気持ちが勝ってしまうだろう。そうなる前にきっぱりと縁を切るべきだ。
ショックを受けているのか、犬塚は黙ったまま俯いていた。が、やがて何か決意したように顔を上げて、
「わ、わかりました!」
真っ赤になってそんなことを言ってくるものだから、今度は不破の方が動揺してしまう。
「ちょっ、なんでそうなる! フツーありえねェだろ!?」
「だって、先輩のお役に立てるなら何でもさせてほしいですっ」
言うなり、犬塚はしゃがみ込んで、恐る恐る不破のズボンへと手を伸ばす。布地越しに股間を撫でながら、さらに顔を赤くさせた。
「わ、すごい……先輩のおっきい」
その呟きに、何故か愚息が反応して膨らんでしまう。
いくら恩返しとはいえ、ここまでする必要があるだろうか。正直、このような展開になるとはまったく予想していなかった。
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