3 / 37
第1話 あなたの舎弟にしてください!(2)
しおりを挟む
「あのあのっ、入学してからずっと先輩のこと探してたんです。お礼も言えずじまいだったし……だから、こうしてまた会うことができて嬉しいんです」
彼の目はどこまでも純粋だった。正直、こういったタイプには慣れていなくて調子が狂ってしまう。
不破は昔から不良と間違われがちで、なにかと敬遠されてきたほうだ。交友範囲も狭ければ、部活動にも入ったことがないしで年下との接し方がわからない。
「そーかよ」
「はいっ! 先輩、先日はどうもありがとうございました! そして、俺をあなたの舎弟にしてください!」
「結局、そこに繋がってくんのか……」
「この日のために髪も染めたし、学ランもばっちり着崩したんですよ! 先輩の隣にいてもおかしくないようにって」
言って、彼は得意げな顔をする。
短く切りそろえられた茶髪に、制服である学ランの下にはパーカー。一見すると素行が良くないように見えるものの、童顔のせいでいまいち締まらない。
一方、不破は黒髪だし、制服も彼ほど着崩していないのだが、見た目で言ったら自分の方がよほど――と少しだけ考えて、やめた。
「そもそも俺は、不良じゃねェって」
「えっ?」
「だから、舎弟は無理」
不破はため息をついて、頭を軽く小突いた。これで話は終わりだとばかりに踵を返そうとしたのだが、相手はそれを良しとしない。
「待ってくださいいい~っ!」
泣きつくようにして腕にしがみつかれる。見かけによらず強い力だった。
「おまっ……しがみつくんじゃねェ!」
「だって俺、どーしても不破先輩に恩返ししたいんです! お役に立ちたいんです!」
まるで捨てられた子犬のようだ。こんなふうに訴えかけられては、無下にするのも良心が痛む――不破は小さく舌打ちをした。
「わーったよ! 気が済むまで好きにすりゃいーだろ!」
半ばヤケになって言う。すると、相手の表情がぱっと明るくなった。
「やったあ! これからよろしくお願いします、兄貴!」
「……『兄貴』はやめろ」
「じゃあ『先輩』でっ」
彼は嬉しそうに笑うと、不破の手を再び握ってぶんぶんと振り回す。それから、名を名乗ったのだった――犬塚拓哉、と。
面倒なことになってしまい、不破はもう一度、大きなため息をついた。
彼の目はどこまでも純粋だった。正直、こういったタイプには慣れていなくて調子が狂ってしまう。
不破は昔から不良と間違われがちで、なにかと敬遠されてきたほうだ。交友範囲も狭ければ、部活動にも入ったことがないしで年下との接し方がわからない。
「そーかよ」
「はいっ! 先輩、先日はどうもありがとうございました! そして、俺をあなたの舎弟にしてください!」
「結局、そこに繋がってくんのか……」
「この日のために髪も染めたし、学ランもばっちり着崩したんですよ! 先輩の隣にいてもおかしくないようにって」
言って、彼は得意げな顔をする。
短く切りそろえられた茶髪に、制服である学ランの下にはパーカー。一見すると素行が良くないように見えるものの、童顔のせいでいまいち締まらない。
一方、不破は黒髪だし、制服も彼ほど着崩していないのだが、見た目で言ったら自分の方がよほど――と少しだけ考えて、やめた。
「そもそも俺は、不良じゃねェって」
「えっ?」
「だから、舎弟は無理」
不破はため息をついて、頭を軽く小突いた。これで話は終わりだとばかりに踵を返そうとしたのだが、相手はそれを良しとしない。
「待ってくださいいい~っ!」
泣きつくようにして腕にしがみつかれる。見かけによらず強い力だった。
「おまっ……しがみつくんじゃねェ!」
「だって俺、どーしても不破先輩に恩返ししたいんです! お役に立ちたいんです!」
まるで捨てられた子犬のようだ。こんなふうに訴えかけられては、無下にするのも良心が痛む――不破は小さく舌打ちをした。
「わーったよ! 気が済むまで好きにすりゃいーだろ!」
半ばヤケになって言う。すると、相手の表情がぱっと明るくなった。
「やったあ! これからよろしくお願いします、兄貴!」
「……『兄貴』はやめろ」
「じゃあ『先輩』でっ」
彼は嬉しそうに笑うと、不破の手を再び握ってぶんぶんと振り回す。それから、名を名乗ったのだった――犬塚拓哉、と。
面倒なことになってしまい、不破はもう一度、大きなため息をついた。
1
お気に入りに追加
95
あなたにおすすめの小説
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(10/21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
※4月18日、完結しました。ありがとうございました。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる