130 / 142
extra2
おまけSS ここに居ない君を想う ★
しおりを挟む
「早く帰ってきても、何もすることねーな……」
玲央はベッドに横たわり、小さく呟いた。今日は仕事が早く片付き――また、アルバイトも入れてなかったため――、思わぬ余暇ができてしまったのだった。
夕食も済ませたし、入浴も済ませた。こんなときに同棲相手の雅がいれば、恋人としてすることもあるだろうが……、
(一人だと、どうしたらいいんだか)
四月になり、雅は全寮制の警察学校で生活することとなった。
かれこれ会えない日々が一か月近く続いている。夜や土日の自由時間になればスマートフォンで通話ができるものの、こちらの都合上なかなか時間が合わず、寂しさを感じざるを得ない。
「雅……」
知らずのうちに、愛おしい名が口をついて出た。湯冷めでもしたのか、肌寒さに温もりが恋しくなる。
(アイツのデカい腕に抱かれたい。骨ばった手で触られて、がっつくようにキスされて、それで……)
いつから自分は、こうも弱くなったのだろう。胸が打ち震える感覚を覚えて、なんだか泣きたい気分になってくる。
ああ、切なさばかりが膨れあがってどうしようもない――あれこれと考えていると、無意識的に手が下腹部へと向かっていった。
「……ん」
ここにいない恋人を求めて、自身は緩やかに主張をしていた。
おずおずと下着の中からそれを取り出し、包み込むようにぎゅっと握り込む。根本からゆっくりと手を動かしていった。
「は……っ、ん、雅……」
彼のことを想って、己を慰めるのは何回目だろうか。虚しさにじんわりと涙が浮かんだ。
「んっ、雅――さびしい……っ」
本人の前では絶対に口にしないであろう言葉を繰り返しながら、手の動きを速めていく。
先走りが滲んできたところで、先端を重点的に責めるも、玲央の体はこの程度では満足しない体になっていた。
『玲央さん、こっちも欲しい?』
頭の中で聞こえた声に、胸がズキズキと疼く。体液で濡れた手をさらに下へ持っていき、そっと秘所に宛がうと、躊躇うことなく中指を侵入させた。
「っ、あ」
最近になって覚えた慰め方だ。少し前までは、頼まれでもしない限りやらなかった行為だというのに、今ではプライドも何もかも崩れ落ちていた。
「あっ、あぁ……ッ」
しこりのある敏感な部分を指先でなぞれば、悦ぶように窄まりがきゅうきゅうと収縮する。圧をかけながら強く擦ったり、叩くように勢いよく刺激を与えたりして、興奮を高めていった。
「ん、あっ、みやびっ……もっと」
辛抱ならずに空いていた手で屹立を扱くと、さすがの快感にガクガクと腰が震えだす。限界を迎えたのは間もなくだった。
「みや、び……みやびッ――」
名を呼びながら欲望を解放させる。白濁が飛び散ってシーツを汚すも、気にする余地などなかった。
「っ……何してんだろうな、俺……」
自慰行為をしたというのに少しもすっきりしない。それどころか、より切なさを感じるのだった。
スマートフォンが電子音を発したのは、それから一時間後のことだ。
玲央は即座に画面をタップして通話を始める。言うまでもないが、待ちに待った雅からの通話だった。
『わっ、出るの早い』
真っ先にそのようなことを言われ、つい言葉が出なくなってしまう。今のは自分でも恥ずかしい。
『もしかして、待っていてくれたんですか?』
「う、うっせ!」
否定するのも相手を楽しませるだけだと思い、短く言い返す。雅はクスクスと笑った。
『えへへ、嬉しいです』
「ンなことより、そっちはどうなんだよ? ちゃんとやれそうなのか?」
『あー……』
居たたまれなさに話題を振ると、雅が苦笑する気配がした。
『まるで監獄のようで辛いです。正直、もう辞めたいです』
「………………」
『なーんて思っちゃうんですけど。やっぱり玲央さんの声聞いてると、元気出てきますね』
「お前な」
『あ、心配しました?』
「フツーにしたわ、クソが」
『あははっ。だけど実際、忙しすぎてクヨクヨしている時間もあまりなくて……』
その後も、当たり障りない程度に互いの近況を話し合ったのだが、雅も――先ほどの発言にはドキリとさせられたものの――元気そうで安心した。
ただ、楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
時間にしてわずか五分程度の通話。もちろんのこと、長電話など許されていない。
『じゃあ、今日はこの辺りで』
「あ……」
別れを告げようとする雅に、思わず声をかけてしまいそうになって、はたと踏みとどまる。「寂しい」「まだこうしていたい」と言えたら、どんなにいいだろうか。
(こっちが年上だってのに言えっこない。ましてや、困らせるだけだってわかってるのに)
『どうしました?』
玲央の様子に気づいたのか、雅が問いかけてくる。慌てて玲央は取り繕った。
「悪ィ、なんでもねーわ。そんじゃな」
『あ、ちょっと待って』
待ったをかけて雅は、
『玲央さん、大好きです。おやすみなさい、いい夢見てくださいね』
「……おう。じゃあな」
そう言葉を交わして通話を終えた――いや、終えてしまった。
遅れて自分の不甲斐なさに気づいて、玲央は頭を抱える。あそこは「好きだ」の一言でも返すべきだったはずだ。
「あああ~っ……俺ってヤツは!」
決して、雅の言葉を流したわけではない。たった一言とはいえ、言われた瞬間に胸の高鳴りを感じ、思わぬところでまた愛情を感じてしまった。
「俺だって……好きだよ、雅……」
枕に顔をうずめながら呟く。
通話したばかりだというのに、もう話したくなってどうしようもない。
(……どうせなら夢で会えたらいいのに)
思いを馳せながら瞳を閉じると、不思議とすぐに眠りはやってきた。なんとなく彼の存在を感じた気がした。
玲央はベッドに横たわり、小さく呟いた。今日は仕事が早く片付き――また、アルバイトも入れてなかったため――、思わぬ余暇ができてしまったのだった。
夕食も済ませたし、入浴も済ませた。こんなときに同棲相手の雅がいれば、恋人としてすることもあるだろうが……、
(一人だと、どうしたらいいんだか)
四月になり、雅は全寮制の警察学校で生活することとなった。
かれこれ会えない日々が一か月近く続いている。夜や土日の自由時間になればスマートフォンで通話ができるものの、こちらの都合上なかなか時間が合わず、寂しさを感じざるを得ない。
「雅……」
知らずのうちに、愛おしい名が口をついて出た。湯冷めでもしたのか、肌寒さに温もりが恋しくなる。
(アイツのデカい腕に抱かれたい。骨ばった手で触られて、がっつくようにキスされて、それで……)
いつから自分は、こうも弱くなったのだろう。胸が打ち震える感覚を覚えて、なんだか泣きたい気分になってくる。
ああ、切なさばかりが膨れあがってどうしようもない――あれこれと考えていると、無意識的に手が下腹部へと向かっていった。
「……ん」
ここにいない恋人を求めて、自身は緩やかに主張をしていた。
おずおずと下着の中からそれを取り出し、包み込むようにぎゅっと握り込む。根本からゆっくりと手を動かしていった。
「は……っ、ん、雅……」
彼のことを想って、己を慰めるのは何回目だろうか。虚しさにじんわりと涙が浮かんだ。
「んっ、雅――さびしい……っ」
本人の前では絶対に口にしないであろう言葉を繰り返しながら、手の動きを速めていく。
先走りが滲んできたところで、先端を重点的に責めるも、玲央の体はこの程度では満足しない体になっていた。
『玲央さん、こっちも欲しい?』
頭の中で聞こえた声に、胸がズキズキと疼く。体液で濡れた手をさらに下へ持っていき、そっと秘所に宛がうと、躊躇うことなく中指を侵入させた。
「っ、あ」
最近になって覚えた慰め方だ。少し前までは、頼まれでもしない限りやらなかった行為だというのに、今ではプライドも何もかも崩れ落ちていた。
「あっ、あぁ……ッ」
しこりのある敏感な部分を指先でなぞれば、悦ぶように窄まりがきゅうきゅうと収縮する。圧をかけながら強く擦ったり、叩くように勢いよく刺激を与えたりして、興奮を高めていった。
「ん、あっ、みやびっ……もっと」
辛抱ならずに空いていた手で屹立を扱くと、さすがの快感にガクガクと腰が震えだす。限界を迎えたのは間もなくだった。
「みや、び……みやびッ――」
名を呼びながら欲望を解放させる。白濁が飛び散ってシーツを汚すも、気にする余地などなかった。
「っ……何してんだろうな、俺……」
自慰行為をしたというのに少しもすっきりしない。それどころか、より切なさを感じるのだった。
スマートフォンが電子音を発したのは、それから一時間後のことだ。
玲央は即座に画面をタップして通話を始める。言うまでもないが、待ちに待った雅からの通話だった。
『わっ、出るの早い』
真っ先にそのようなことを言われ、つい言葉が出なくなってしまう。今のは自分でも恥ずかしい。
『もしかして、待っていてくれたんですか?』
「う、うっせ!」
否定するのも相手を楽しませるだけだと思い、短く言い返す。雅はクスクスと笑った。
『えへへ、嬉しいです』
「ンなことより、そっちはどうなんだよ? ちゃんとやれそうなのか?」
『あー……』
居たたまれなさに話題を振ると、雅が苦笑する気配がした。
『まるで監獄のようで辛いです。正直、もう辞めたいです』
「………………」
『なーんて思っちゃうんですけど。やっぱり玲央さんの声聞いてると、元気出てきますね』
「お前な」
『あ、心配しました?』
「フツーにしたわ、クソが」
『あははっ。だけど実際、忙しすぎてクヨクヨしている時間もあまりなくて……』
その後も、当たり障りない程度に互いの近況を話し合ったのだが、雅も――先ほどの発言にはドキリとさせられたものの――元気そうで安心した。
ただ、楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
時間にしてわずか五分程度の通話。もちろんのこと、長電話など許されていない。
『じゃあ、今日はこの辺りで』
「あ……」
別れを告げようとする雅に、思わず声をかけてしまいそうになって、はたと踏みとどまる。「寂しい」「まだこうしていたい」と言えたら、どんなにいいだろうか。
(こっちが年上だってのに言えっこない。ましてや、困らせるだけだってわかってるのに)
『どうしました?』
玲央の様子に気づいたのか、雅が問いかけてくる。慌てて玲央は取り繕った。
「悪ィ、なんでもねーわ。そんじゃな」
『あ、ちょっと待って』
待ったをかけて雅は、
『玲央さん、大好きです。おやすみなさい、いい夢見てくださいね』
「……おう。じゃあな」
そう言葉を交わして通話を終えた――いや、終えてしまった。
遅れて自分の不甲斐なさに気づいて、玲央は頭を抱える。あそこは「好きだ」の一言でも返すべきだったはずだ。
「あああ~っ……俺ってヤツは!」
決して、雅の言葉を流したわけではない。たった一言とはいえ、言われた瞬間に胸の高鳴りを感じ、思わぬところでまた愛情を感じてしまった。
「俺だって……好きだよ、雅……」
枕に顔をうずめながら呟く。
通話したばかりだというのに、もう話したくなってどうしようもない。
(……どうせなら夢で会えたらいいのに)
思いを馳せながら瞳を閉じると、不思議とすぐに眠りはやってきた。なんとなく彼の存在を感じた気がした。
0
お気に入りに追加
229
あなたにおすすめの小説
【完結】女装ロリィタ、職場バレしました
若目
BL
ふわふわ揺れるリボン、フリル、レース。
キラキラ輝くビジューやパール。
かぼちゃの馬車やガラスの靴、白馬の王子様に毒リンゴ、ハートの女王やトランプの兵隊。
ケーキにマカロン、アイシングクッキーにキャンディ。
蔦薔薇に囲まれたお城や猫脚の家具、花かんむりにピンクのドレス。
ロココにヴィクトリアン、アールデコ……
身長180センチ体重80キロの伊伏光史郎は、そのたくましい見かけとは裏腹に、子どもの頃から「女の子らしくてかわいいもの」が大好きな25歳。
少女趣味が高じて、今となってはロリィタファッションにのめり込み、週末になると大好きなロリィタ服を着て出かけるのが習慣となっていた。
ある日、お気に入りのロリィタ服を着て友人と出かけていたところ、職場の同僚の小山直也と出くわし、声をかけられた。
自分とは体格も性格もまるっきり違う小山を苦手としている光史郎は困惑するが……
小柄な陽キャ男子×大柄な女装男子のBLです
【完結・BL】DT騎士団員は、騎士団長様に告白したい!【騎士団員×騎士団長】
彩華
BL
とある平和な国。「ある日」を境に、この国を守る騎士団へ入団することを夢見ていたトーマは、無事にその夢を叶えた。それもこれも、あの日の初恋。騎士団長・アランに一目惚れしたため。年若いトーマの恋心は、日々募っていくばかり。自身の気持ちを、アランに伝えるべきか? そんな悶々とする騎士団員の話。
「好きだって言えるなら、言いたい。いや、でもやっぱ、言わなくても良いな……。ああ゛―!でも、アラン様が好きだって言いてぇよー!!」
潜入した僕、専属メイドとしてラブラブセックスしまくる話
ずー子
BL
敵陣にスパイ潜入した美少年がそのままボスに気に入られて女装でラブラブセックスしまくる話です。冒頭とエピローグだけ載せました。
悪のイケオジ×スパイ美少年。魔王×勇者がお好きな方は多分好きだと思います。女装シーン書くのとっても楽しかったです。可愛い男の娘、最強。
本編気になる方はPixivのページをチェックしてみてくださいませ!
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21381209
万華の咲く郷
四葩
BL
日本最大の花街、吉原特区。陰間茶屋『万華郷』は、何から何まで規格外の高級大見世だ。
皆の恐れる美人鬼遣手×売れっ子人たらし太夫を中心に繰り広げられる、超高級男娼たちの恋愛、友情、仕事事情。
恋人以外との性関係有。リバ有。濡れ場にはタイトルに※を付けています、ご注意下さい。
番外編SSは別冊にて掲載しております。
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは一切、関係ございません。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした
雨宮里玖
BL
《あらすじ》
昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。
その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。
その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。
早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。
乃木(18)普通の高校三年生。
波田野(17)早坂の友人。
蓑島(17)早坂の友人。
石井(18)乃木の友人。
理香は俺のカノジョじゃねえ
中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる