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おまけSS 酔っ払いにほだされて…

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 その夜、大樹は誠のことを背負いながら思った。本当に世話の焼けるバカ犬だと。
 自宅に連れ帰ってくるなり、適当にベッドの上に転がす。誠は赤ら顔でうつらうつらとしていた。
 今日は同期の雅も交えて居酒屋で夕食をともにし、飲酒をしたのだが、己の限界を知らない誠はすっかり酔いつぶれてしまったようだ。
(ひとまず、水でも飲ませておくか)
 寝る前に水分補給をさせた方がいいだろうと思い立つ。
 ところが、背後からずしりと重いものが覆い被さってきた。抵抗するすべもなく、思わず体勢を崩してしまう。
「だいきぃ~」
 考えるまでもないが、誠が抱きついていた。
「あのなあ」
「ちゅー、しよ?」
 甘ったれた声で言ったかと思えば、誠は返事も待たずに口づけてくる。何度かこちらの唇を啄むと、とろんとした瞳で微笑んだ。
「へへ~っ」
「お前、完全に酔って……」
 言い終える前に再び唇が重ねられる。ちゅっと音を立てながら何度も吸いつかれれば、次第に煽られている気分になり、
「………………」
 そのうち、相手の唇を貪るように自ら口づけていた。
 口元が開いた頃合いを見計らって舌先を差し込み、歯列を割り、上顎をくすぐって――ふと違和感に気づく。
(……誠?)
 どうにも反応が鈍いと思って、唇を離す。
 それと同時に、どさりと誠が体重を預けてきた。
「おい、まさか」
 静かに寝息が聞こえる。そんな馬鹿なとは思うのだが、彼はすっかり眠りこけていた。
(このバカ犬!)
 なんとも形容しがたい熱をどう鎮めたらいいのか。一人で治めろとでも言うのだろうか。
 幸せそうに眠る愛くるしい顔が、今は腹立たしくて仕方がなかった。

    ◇

 翌日。朝食を用意していると、誠が怪訝な顔で話しかけてきた。
「お前、なんでずっと眉間に皺寄せてんだよ?」
「誰かさんのせいでな」
「え、俺なんかした!?」
「昨夜のこと覚えてないのか?」
 うーん、と誠は考えて、
「あれっ? つーか、俺、どうやって帰ってきたんだっけ?」
「っ……」
 完全に頭にきて、朝食の乗ったプレートをドンッとテーブルに置く。誠は「ひっ」と小さく呻いた。
「だ、大樹~? どおしたのかなあ~っ?」
「……どうお仕置きしたものか考えてたところだ」
 低く言って睨みつける。昨夜の欲求不満も含め、今日はもう手加減をしてやるつもりはなかった。
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