××な君にヒロイン役は似合わない

有村千代

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season2

scene13-03 ★

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 その後、二人の姿はカラオケ店からそう遠くないラブホテル――同性利用可のホテルをインターネットで検索したのだった――にあった。
 フロントに備え付けてある写真パネルで部屋を選ぶと、そのまま鍵を受け取って、狭いエレベーターに乗り込む。
 目的の階層に着くなり、素早く部屋の中に入った。
 部屋の内装はアジアンモダンテイストの落ち着いたものだったが、中央に大きなベッドが設置してあって、どう考えても“そういった場所”なのだと意識してしまう。
「大樹……あの、さ」
 小さく呟き、体の疼きをどうにかしたくて身を寄せる。
 すると、コートを脱がされてベッドに誘導された。もじもじしながらベッドの上に座れば、後ろから抱きすくめられて、誠の小さな体は大樹の膝の間にすっぽりと収まった。
「飼い犬の躾は、ちゃんとしてるつもりだったんだけど」
 言いつつ上着に手をかけられて、うなじにゆっくりと唇を這わせられる。
「んぅ、ん……っ」
 それだけで、腰の奥にズキズキという重い疼きを覚えた。
 早く欲しい、と顔を横に向けて、せがむように大樹を見つめる。すぐに彼の目つきが鋭いものになった。
「そんな物欲しそうな顔、あの人にも見せてたのか?」
「ち、ちがっ」
 返ってくるのは冷ややかな目、言葉……だというのに、今や、快感を煽る材料にしかならなかった。息が苦しくなるほどに心臓が早鐘となって脈打つ。
「……いいよ。欲しいんだろ」
 大樹がベルトを外してくる。強引にジーンズを下ろされ、湿り気を帯びた下着が露わになった。
 誠のものは痛いくらいに膨張しており、軽く揉まれるだけで自然と腰が浮いた。
「あ……っ、ん……」 
「とりあえず、さっさと抜いておくか」
「え? あっ――」
 下着も早々に剥がれて、屹立を力強く握り込まれる。先端からは先走りがとろとろと伝い、いつ爆発してもおかしくないくらいに脈打っていた。
「このままじゃ辛いだろ」
「あ、あぁっ」
 先走りを塗りつけるようにして上下に擦られる。指の腹で柔らかく締めつけられる感覚に息が弾み、ただ翻弄されるばかりだった。
「やっ、そんな、つよくしちゃ……っ」
「どうして? 早く楽になりたいんだろ?」
 大樹は手の動きをますます速めて、こちらを急き立ててくる。
 本当に一切の容赦がない。さらに耳朶を舌先でいたぶられ、甘く噛まれれば、火照った体はすぐに蕩けていく。
「や、あぁ、でるっ、あ……あぁあッ!」
 激しい責め立てに呆気なく達してしまい、誠は体を震わせながら白濁をびしゃびしゃとまき散らした。
「これはひどいな」
 ベッドに染みがじんわりと広がっていくさまを見て、大樹が小さく呟く。
 いつもの誠なら、真っ赤になって狼狽するところだが、今はそのような気も起きなかった。体の熱は一向に治まる気配がなく、まだまだ物足りないと訴え続けていた。
「……脱ぎたい」
 汗ばんだ肌に張り付く布の感触が煩わしくて、ポツリと口にする。
 大樹に手伝ってもらって服をすべて脱ぐと、そっと彼の体に寄り添って顔を近づけた。キスして、とねだるように視線を交わせば、唇がねっとりと押し当てられたのだった。
「ん、んんっ……」
 大樹の首に腕を回しつつ、口を開けて舌を迎え入れるなり、吸いあげて舌同士を絡ませ合う。触れるか触れないかの加減で上顎をくすぐられれば、同じように相手の上顎をくすぐった。
 徐々に濃厚なものへ変わっていくキスに、うっとりとする。
 ただ、もっと強い刺激が欲しいのも事実で、
「大樹」
 唇を離して、先を催促するように名を呼ぶ。
 大樹は切れ長の目を細めて、口角を上げた。
「何を期待しているんだ?」
 低い囁きが思考力を奪っていく。理性など少しも残っておらず、まるで操られているかのように自然と口が動いた。
「い、挿れて――大樹のが、欲しいっ……」
「……まるで発情期の犬だな」
 恥ずかしげもない懇願に大樹は苦笑し、備え付けのアメニティのなかからローションパックを取ると、パッケージを破りつつ、再び背後に腰を下ろしてくる。
 いつものように、指で慣らしてもらえると思ったのだが、
「手、貸して」
 大樹が手を取ってくる。何かと思えばローションを垂らされて、そっと秘所に宛がわれたのだった。
「えっ」
「欲しいなら自分でやって」
 大樹の言葉に愕然とする。そのようなことは一度もやったことがない。
 どうすればいいか困っていると、中指を掴まれて入口に当てられる。
「いつも俺がやってるみたいに。できなかったら手伝ってやるから」
「………………」
 躊躇は、ほんの一瞬だけだった。
 熱に浮かされたように頷くと、指をゆっくり沈めていく。思いの外すんなり入ったところでおずおずと動かせば、クチュクチュという控えめな水音が立った。
「んぅ……」
「感じやすいところ、わかる?」
「よ、よくわかんない」
 首を振ると、窄まりを解す手に大樹の手が重ねられる。
「この辺りか?」
 手を動かされて、指先がある一点に触れた瞬間、全身が総毛立ったのを感じた。
「っ、あ!」
「そこ、叩いたり押し上げたりして」
「んっ……ん、はぁっ」
 トンと軽く叩いただけで快感の波が押し寄せてきて、内壁が指を締めつける。背筋を駆け巡る震えに、濡れた吐息を漏らした。
「ん、あっ、んんっ……」
「誠が一人でそんなところ弄るなんて、いやらしいな」
「だって、大樹が、あ……っ」
 大樹に見られていると意識すれば、やり場のない羞恥心が沸き立つ。
 それでも、今さらやめることなんてできなかった。逸る気持ちを抑えきれずに、指の動きは次第に大胆なものへとなっていく。
「そろそろ指増やせる?」
 大樹に頭を撫でられながら訊かれる。一旦指を引き抜くと、もう一本添えて、再び中に押し入れた。
「っ……ん、んんッ」
 誠のそこは、容易く二本の指を呑み込んでいく。
 たどたどしい動作で慣らしていくのだが、十分に快感を得られないことに、だんだんと焦れてきてしまう。堪らず背後を振り返った。
「や、あぁ……うまくできないっ」
「手伝うよ」
 大樹が手を添えてくる。そして、彼の長い中指が、するりと体内に潜り込んできたのだった。
「ん、あぁっ」
 意図せぬ指の動きに内壁が戦慄き、押し広げられていく。
 感じやすい箇所を擦られるたび、快感が頭を駆け巡るも、胸の疼きがひどくなって辛抱ならない。訴えるように大樹の瞳を見つめた。
「も、いいからぁ。大樹の……ほしいってばあっ」
 思い切って、甘えるような声色で精一杯――平常時の自分が聞いたら、卒倒してしまうくらい――の懇願をする。
「ちゃんと解さないでどうするんだ」
「やぁっ、もうやだ……はやくちょうだい」
 子供が駄々をこねるように頭をブンブンと振ると、大樹はため息をついて秘所から指を引き抜いた。
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