硝子の大瓶

しゃんゆぅ

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高い壁の向こう
自転車に乗った私より高い灰色の向こう
沢山の電車が走っている様なそんな音がする
やめて違う
私の目指している場所は
疲れた目をした人が沢山入った箱ではなく
時間とうりに移動する箱でもない


向かい風の中私は自転車を漕ぎ続ける
本当にこの先なのだろうか
合っているのだろうか、それとも
怖い恐ろしい辛い痛い


漕いで漕いで漕ぎ続けてふと目を上げると
灰色の壁に打ち付ける大きな水の塊を見た
遠く果てしない水の塊を見た
海だった
風が轟々と吹きすさび
まるで自身も壁になったかのように灰色の壁に打ち付ける
何処までもどこまでも広い


終わりだと思った
この灰色の壁の向こうに行けば
違った
きっとまだまだ始まりだったのだ
時折飛沫が顔にかかる
冷たい
不思議と恐れはなかった

まだ恐れていなかった
私の胸にあるのは
この海と真逆の穏やかな温かさだった
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