murder spirit〜快楽殺人鬼の怨念〜

薊野義弘

文字の大きさ
上 下
1 / 4
悪魔からの手紙

第1話「隣の悪夢」

しおりを挟む
 東京都某所のとある夜。

人通りの少ないある通りの中、記者の仕事をしている若い女性はあるものから逃げていた。

自分の後ろに真っ黒な影が迫って来ている。

女性の身体は既に幾度となく拷問を受けた痛々しい傷が多数見られる。

恐らく彼女は何者かに監禁され、ひたすら拷問を受けた後、隙を見て逃げ出したのだろう。

スカートの中から足を伝って流れる血や、女性が押さえてる腕の傷口からも流れる鮮血は、所々建物の間から入る月の光によって照らされている。

そして、惨い事に指が切断されている。

女性は怪我の痛みを我慢しながらも必死になって走り続ける。

既に息も喉が痛くなるほど上がっていたが、逃げ切らなければ殺される。

その女性にも何者かは分からないが、少なくとも分かっていることは、この女性の知り合いではないと言う事。

「はぁっ...、はぁっ...!誰か...、誰か!」

逃げても逃げても引き離せない。

しかも追ってくる影の足音はなく、その場で響くのは女性の苦しそうな息の音、女性の履くハイヒールが地面を蹴る音のみ。

その黒い影の正体は建物の影でちょうど見えないが、満月の光で一瞬何かがキラッと光った。 

 それは間違いなく鋭い刃物だった。

黒い影が持っている物は拷問に使っていた細長いナイフであった。

「いやっ...、死にたくない!死にたくない!」

女性は恐怖のあまり涙を流しながら、心の中で助けを求めた。

だが、その願いは届かないであろう。

女性が走っているところは住宅地の裏路地、しかも一本道だった。

それでも女性は人通りの多い場所に出るために走り続ける。

しかし、その女性はハイヒールに慣れていなかったせいか、足を挫いて転んでしまった。

「痛っ!!」

黒い影が目の前に来た。

その黒い影は口元に不気味な笑みを浮かべて、ナイフを足めがけて振り下ろした。

ナイフは女性のアキレス腱に刺さり、激痛が走る。

「ぎゃあああああ!」

すぐに逃げようと試みたが、痛みで足は動かない。

というより、人はアキレス腱を切ると動けなくなる。

黒い影もそれを狙っていたのだろう。

今度は眼球めがけて刺した。

ぐりぐりと奥まで刺し込んでいく。

「ぎゃあああっ……!!!!い...ぎぎ...っ!ああああああああっ!!!!」 

どうやら一瞬で殺すつもりはないようだ。

ここまで来てまだ拷問をするのか。

「お願い……!!誰にも言わない!警察にも言わないからぁ……!助けてぇ……!」

黒い影は再びナイフを構える。

女性が片目で力を振り絞って黒い影の顔を見た。

その瞬間黒い影が見せた顔は、全身に鳥肌が立つほどのまさに猟奇的な顔だった。

「いやあああああああああ!!!!」

が、叫んだ次の瞬間ナイフは自分の喉を貫通し女性は死んだ。


                ーーーーー序章ーーーーー
[次のニュースです。昨夜8:00頃、東京都二子玉川ふたこたまがわの住宅地の裏路地で惨殺された女性の遺体が発見されました。被害者は〇〇に勤める新聞記者の沢村由利さわむらゆりさん(26)。遺族の方の話によると沢村さんは昨日誘拐されていて、警察に電話した後、犯人から黒い手紙が届いたとのことです。遺体には拷問を受けたと思われる傷が腕や足、腹部、頭部に数カ所あり、指が幾つも切断され、例の連続殺人犯の仕業と見て、警察は捜査を続けています。]

「......またこのニュースか。最近本当に物騒だな。」

東京都の住宅地に住む少年.清涼院霊治せいりょういんれいじは警戒するような目で朝のニュースを見ていた。

そのニュースの内容は最近起こっている例の連続殺人事件である。

この事件は謎が多く、霊能力者である父親は能力を使い、警察の捜査に協力している。

現場の痕跡から犯人を特定する方法で父の得意分野なのだが、未だに犯人に繋がる証拠がない。

流石の父もこの事件には頭を抱えていた。

そしてこの少年もまた、霊能力を使える。

幼い頃から霊に触れる事が出来たり、話せたりする事が出来た。

その為、周りからはよく変な子供として扱われ、なかなか友人が出来なかった。

それでも中学までに数少ない友人が出来、高校ではそれを逆に凄いと言う人が多く、沢山の友人が出来、今に至る。

ーーーーーーーーー

霊治は制服を着用し、ネクタイを整えて居間へと向かう。

そこには既に和服姿で新聞を読みながら茶を啜る父親の姿があった。

「おはよう、父さん。」

「ああ、おはよう。」

霊治は父親と自然と挨拶を交わす。

そして座布団に座り、用意してある朝御飯を食べる。

「いただきます。」

「最近この町は事件が起きてるからな、学校まで送ろう。蓮見さんも一緒にな。」

 蓮見というのは、向かい側の家に住んでる幼馴染の蓮見彩はすみさやかであり、霊治の友人の一人である。

蓮見の家は清涼院家と仲がいい。

「ああ、ありがとう。支度したら迎えに行くよ。」

朝の支度を終え、家の門を出る。

彩の家に行き、インターホンを鳴らすとすぐに出てきた。

今日も可愛らしい笑顔を見せてくれる。

「おはよう、霊治!」

「ああ、おはようさやか。最近物騒だから今日は父さんが一緒に送ってくれるみたいだぞ。」

「あ、本当?私正直怖かったから助かるよ。」

霊治は蓮見と一緒に車に乗り、学校まで送って貰った。

 「今日は本当にありがとうございました。最近凄く怖くて……。」

「いやいや、いつでも遠慮しないでいいんだ。じゃあまた帰りの時にな、霊治。」

「ああ、ありがとうな。じゃあ行ってくる。」

教室に入るとみんな険しい顔や怯えた顔で今日のニュースの事を話してた。

無理もない。これだけ人が殺されているのだから。

すると1人の女子がやって来て2人に挨拶を交わした。

「あっ清涼院くん、彩、おはよう!
今朝のニュース見たよね?」

「ああ、連続殺人犯のやつだろ?これでもう4件目だ。」

「うん本当、恐いよね...。」

その女子はかなり震えていた。

被害者がみんな若い女性だからだろう。

 すると2人の後ろから男子がやってきた。

「おーす、霊治、蓮見!」

「ああ、お前朝から元気だな。」

挨拶を交わした男子は友人の浅川諭あさかわさとる

家は貧乏だが兄弟想いの優しい奴だ。

「なあ今日の課題写させてくれよ!昨日はその、...分かるだろ?」

「...ああ分かってるよ、ほら。」

「あざす、助かるわ!」

諭の家は貧乏なため家の家事はほとんど彼がやっている。

その忙しさのあまり部活にも入らず、課題もやる時間がない。

そのためこうやって朝霊治が課題を写させてやっている。

諭は間に合わせようと急いで課題に取りかかった。


 しばらくすると担任が入ってきた。

「ほら、みんな席につけ!生徒指導から話がある。最近連続殺人犯がこの東京にいるだろ?そのためしばらく休校になった。それから今日は授業も午前まで、部活もなしだ。皆早く帰れよ。なるべく数人で帰り、人気のないところは避けるように。」

学校から臨時休業命令が出され、午前までの授業となった。

本来はインフルエンザなどの感染者が多かった場合にあるのだが、これだけ人が多く殺されている街で学校に通うと言うのは自殺行為に等しい。



ーーー放課後ーーー

HRホームルームが終わり、予鈴が鳴る。

「帰ろう?霊治。」

「ああ。」

「じゃあな、霊治!」

「ああ、気をつけろよ。」

諭や霊治は男だから狙われる心配はまず無いだろう。

だが危険なのは彩だ。

何としてでも守らないといけない。

 俺は父親に迎えを頼もうと携帯で電話を掛けた。

「ああ、父さんか?うん、迎え頼むよ。」

しばらくすると、校門の近くに車がやって来た。

その後迎えの車に乗っている時、霊治と父は微かに霊気を背後から感じた。

「「!!」」

(今のは!?)

霊治が警戒心丸出しの顔で後ろを向く。

しかし、その時にはもう霊気は綺麗さっぱり消えてしまっていた。

登下校どっちもかなり警戒した方が良さそうだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

赤い部屋

山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。 真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。 東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。 そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。 が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。 だが、「呪い」は実在した。 「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。 凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。 そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。 「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか? 誰がこの「呪い」を生み出したのか? そして彼らはなぜ、呪われたのか? 徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。 その先にふたりが見たものは——。

タクシー運転手の夜話

華岡光
ホラー
世の中の全てを知るタクシー運転手。そのタクシー運転手が知ったこの世のものではない話しとは・・

すべて実話

さつきのいろどり
ホラー
タイトル通り全て実話のホラー体験です。 友人から聞いたものや著者本人の実体験を書かせていただきます。 長編として登録していますが、短編をいつくか載せていこうと思っていますので、追加配信しましたら覗きに来て下さいね^^*

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

終焉の教室

シロタカズキ
ホラー
30人の高校生が突如として閉じ込められた教室。 そこに響く無機質なアナウンス――「生き残りをかけたデスゲームを開始します」。 提示された“課題”をクリアしなければ、容赦なく“退場”となる。 最初の課題は「クラスメイトの中から裏切り者を見つけ出せ」。 しかし、誰もが疑心暗鬼に陥る中、タイムリミットが突如として加速。 そして、一人目の犠牲者が決まった――。 果たして、このデスゲームの真の目的は? 誰が裏切り者で、誰が生き残るのか? 友情と疑念、策略と裏切りが交錯する極限の心理戦が今、幕を開ける。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結済】ダークサイドストーリー〜4つの物語〜

野花マリオ
ホラー
この4つの物語は4つの連なる視点があるホラーストーリーです。 内容は不条理モノですがオムニバス形式でありどの物語から読んでも大丈夫です。この物語が読むと読者が取り憑かれて繰り返し読んでいる恐怖を導かれるように……

処理中です...