神殺し革命

薊野義弘

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神の楽園

第6話「“神殺し“のレオナード」

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砂塵が薄まっていき、遂に少年らしきシルエットが見えた。

その中から少年のものらしき声が聞こえた。

「翔兵……俺が……死んだって?……へっ!そりゃ……面白い冗談だな。」

少年は不敵な笑みを浮かべ、そのエメラルドの瞳を光らせていた。

「!!」

遂に少年の姿が見えるほど砂塵が薄くなり、その姿を目にとられる事が出来た。

(そんな馬鹿な!!あれほどの攻撃で傷一つ負ってないなんて……!!)

少年は傷一つ負っていないどころか、服すら破れていなかった。

バオラニクスの方を見ると、手が切り落とされていた。

切り落とされた方の手は切り刻まれていた。

(まさか……攻撃を瞬時に避けつつ斬撃を与えていたのか!?)

レオナードは目にも止まらぬスピードで怪物の顔の前まで来て空中で剣を構えた。

「悪いなバオラニクス……これは市民全員の恨みだ。
“旋風斬り“!!」

レオナードは空気が爆発したように飛びながら剣で怪物の体を縦に真っ二つに切り裂いた。

バオラニクスは真っ二つに切断され、大きな音を立てて地面に倒れ込んだ。

それを見ていたガルサニアは驚きを隠せず口が開いたまま動かなかった。

「……!!!」

レオナードは驚きと粉砕骨折により動けないガルサニアの元へと戻ってきた。

「大丈夫か?……って、大丈夫じゃねえよな。ほら、肩貸してやるよ。」

「……すまない。」

レオナードは肩を貸して街の西側へと歩いていった。

「私は情けないな……天騎士のくせに街を守れないなんて……」

「……。何言ってんだよ、街を守ったのはお前だろ。」

「え……?」

レオナードの言葉を聞き、ガルサニアは呆然とする。

「あんたが必死に守ろうとしなきゃ、俺は間に合わなかったと思うぜ?あんたがあそこまで持ち堪えたから倒せたんだ。胸を張れよ。」

「……!!……1つ良いか?」

「ん?」

「君は本当に何者だ?」

その質問に対し、レオナードは顔を背けつつ答えた。

「……ま、今更隠せねえよな。5年前の革命の首謀者って言えば分かるか?他の奴らには黙っててくれよ?」

「……!!あの時の……!?……どおりで強いわけだな。もちろん、誰にも言わないさ。」

ガルサニアも流石にもう驚かないようだ。

苦笑いを浮かべ、目を落とした。

「……頼みがあるんだが。」

「何だよ?」

「私と……友人になってもらえないだろうか?私は今まで軍でひたすら身体を鍛えていた。ただその事にしか専念しなかったせいか……友人は誰一人いないんだ。」

「……いいぜ、なろうじゃねえか!友人!」

レオナードはニッ……と、満面の笑みを浮かべた。

それに対してガルサニアも嬉しそうな笑顔を見せ、礼を言った。

「……あ……ありがとう……!それから……今日の礼をしたいんだが。」

「ああ……そりゃ無理だ……俺はしばらくこの街を離れるからな。」

「いつでもいい!君がこの街に帰ってきた時、恩を返したい。」

「……なら、≪サラマーニュ≫で御馳走してくれよ。あそこ気に入ってんだ!」

≪サラマーニュ≫というのは、昼にレオナード達が食事をしたレストランである。

あのレストランはヴィナスティーユでも評判の店だ。

「……分かった、いくらでも御馳走しよう!!」

「約束だぜ、ガルサニア。」

「……ああ、レオナード!」

お互い名前で呼ばれた事が嬉しく、ガルサニアは顔に出てしまっていた。

しばらく西側へ歩き続けていると、向こうから共和国軍最高司令官、天騎士長、天騎士副長、天騎士長補佐、そして大統領までが来るのが見えた。

おおかた共和国軍は調査遠征、大統領は他国に交渉に行っていたところ報告を受け帰ってきたと言うところだろう。

「ガルサニアーーーー!!!!」
 
「だ、大統領!!天騎士長まで!!!!」

ガルサニアは慌てて敬礼をしようとするが、骨折でうまく立てない。

天騎士長達が駆け寄り、手助けをしようとする。

「大丈夫か!?無理するな!!」

「……バオラニクスはどうした?」

天騎士長の質問に対しガルサニアは、

「バオラニクスは……この少年が……」

と、言い掛けたがレオナードが遮り敬礼をして答えた。

「伝承の魔怪物バオラニクスは、天騎士翔兵.ガルサニア様が討伐しました!!」

「何っ!?」

天騎士長や大統領は目を丸くして驚いていた。

「……えっ!レ……レオ……」

“レオナード“と言い掛けたが、レオナードは目で“胸を張れ“と伝えた。

「……!!」

その目では伝わらなかったものの、ガルサニアはさっきのレオナードの言葉を思い出した。

(あんたが必死に守ろうとしなきゃ、俺は間に合わなかったと思うぜ?あんたがあそこまで持ち堪えたから倒せたんだ。胸を張れよ。)

「……!!ロナンディア共和国.国軍本部天騎士翔兵.ガルサニア!!魔怪物バオラニクスから市民を守る事に成功しました!!任務完了です……!!!!」

共和国軍への任務は、『怪物から市民を守り抜け』だった。

倒したのはレオナードだが、レオナードの言う通り彼があそこまで持ち堪えなければ、間違いなくヴィナスティーユは消滅していたであろう。

ガルサニアは骨折で敬礼が出来ないものの、肩を貸してもらっている姿勢でそう叫んだ。

レオナードは満面の笑みを浮かべ、その場を去っていった。

大統領はガルサニアに対し、頭を下げて礼を言った。

「ガルサニアくん、ありがとう。君のおかげで市民は皆守られ、この国は守られた。本当にありがとう……!!」

“ロナンディア共和国.マルティネス大統領“

それに加え国軍最高司令官、天騎士長、天騎士副長、天騎士長補佐も彼に対し敬礼をするのだった。

「ああ……!あの、どうか頭を上げてください!!私は任務を遂行しただけですから!!」

天騎士トップはともかく国のトップである大統領が自分に対して頭を下げて礼を言う。

突然の状況にガルサニアは慌てふためき、大統領に対し何とか頭を上げるように言った。

ようやく大統領は落ち着き、後日改めて礼をすると言う事で首都ユレイジアの街の1つ、リアデシア市にある仮官邸でしばらく過ごし、ヴィナスティーユ市の復興に努めるという。

ガルサニアは天騎士長達に隣街のヒュバニーに連れられ、そこの病院で治療を受ける事になった。

ガルサニアは治療を受けている最中も、レオナードの事で頭がいっぱいだった。

(それにしても……魔獣種がこのエルシオンに存在していたとは……。)


ーレオナードー

一方レオナードは既にヴィナスティーユを出ていた。

馬車などに頼る事はなく、歩いてウォンロまで行く事にした。

「さーて……旅は…長くなりそうだな。」

レオナードは溜息をつき、腕を伸ばして背伸びをしていた。

これは……これから神聖大陸エルシオンに起こる大災害の予兆となる出来事であった。








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