優柔不断なちょろインは求婚者からの溺愛を断れない

episode.75

「え、じゃあリオンはスタンリー様の婚約者だったのね！」
私達は馬車の中で意外にも意気投合して仲良くなっていた。

「そうなんです。シンディ様にも婚約者はいらっしゃるのですか？」
私はいないのは知ってるけど一応聞いてみた。
何故なら彼女はヒロインがセシルルートを選択するとセシルを取り合うから。
だから婚約者などいるはずないのだ。

「私はいないのよ。でも実は婚約者候補として名前が上がってる人はいるの」
（え、そんな人が居たとは知らなかったわ）

「スタンリー様とも仲が良いみたいだからリオンも知っているかもしれないけど、セシル様っていう方なの」
（え！もう婚約者候補に上がっているのね！）

「知ってます。この間偶然お会いしましたよ」
私はレイと魔法石のお店に行った時偶然会っている。
（なるほど、ヒロインがいないからもう二人はくっつく感じなのね）
私はうんうんと頷く。

しかしシンディは難しい顔をして視線をそらす。
「でもあんまり乗り気じゃないのよね。私達の両親が仲が良いから彼ともたまに会う事があるのだけど、馴れ馴れしくていやなのよ」
まさかの答えに私は言葉を失う。

「私ぐいぐい来る人が苦手というか、硬派な感じが好きなのよね。それに気になっている方もいるし……」
セシルではないとなると一体誰なのだろう。

私が名前を聞くとシンディは頬を赤らめながら答えた。
「リオンだから言うけど、リオンの婚約者のお兄様よ」
私は少し言葉に詰まってしまった。
「えと、グレイ様ですか？」
そうよとシンディは答える。

どうやら同じ学年で授業のグループも同じだったりで彼に惹かれたらしい。
でも両親がセシルを気に入って押しているみたいで、だからといってグレイにも気持ちを打ち明けたりはできていないようだ。
もしシンディとグレイが結婚したら私の義姉になるのかと考える。
それはそれで全然いいと思ったので私はシンディを応援する事にした。

なので今度私とレイと四人で遊ぼうと勝手に提案してみた。
シンディは快く了承してくれた。
後は私がレイを誘いレイ経由でグレイを誘ってみようと思う。