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episode.59

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「意識してるっていうか、アルみたいなかっこいい人が近くにいたら緊張しちゃうのは普通でしょう?」
私は少し頬が赤くなった。

「リオンがそんな風に思ってくれてるなんてすごく嬉しいです。困られせるのはわかっているのですが今は独り占めさせてくれませんか?」

アルバートはそう言って私を引き寄せ抱きしめてきた。
私はすぐ離してもらわなくちゃいけないのにその腕を振り解けないでいる。
「アル、こういうのはレイに怒られちゃうからダメだよ。勉強も二人きりにならないって約束してるし」

アルバートは私の耳元で囁やく。
「リオンは怒りますか?」
「私は怒ってないけど、よくないなって思ってる」

「じゃあこれは私が勝手にしている事でリオンのせいじゃありません」
アルバートは抱きしめた腕を緩めたと思ったら、私にキスをした。
一度唇を離したかと思ったら角度を変え何回もしてくる。
私は苦しくなってアルバートの胸を押し離した。

「アル、キスはしちゃダメだよ」
私は唇を手で拭いながらアルバートから離れる。

「最初はリオンに会えて嬉しくて、でも婚約者がいたから困らせたくないと思い身を引いていましたが、ダメですね。好きすぎてどんどんリオンの事が欲しくなってしまいます」
アルバートは私から視線を外し、寂しそうな目元を見せる。

「もう嫌になってしまいましたか?」
アルバートは私に拒絶され、捨てられた子犬のような目をしている。

「嫌にはなってないよ……けどもう二人きりにはならないって約束してくれる?」
「わかりました。約束します」
アルバートはそう言って再び私を抱きしめた。
「もう、アル。こういうのもダメなの」
私はそう叫んだがアルバートは私を抱きしめたままだった。
昔からの幼馴染のせいかどうもアルバートの事を強く拒否できないでいる。
よくないとわかっていても突き放した後の悲しい表情を見たくないのだ。
この考えが良くないのもわかっている。
今回限り、そう思い私もアルバートの背中に手を回した。
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