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episode.38

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「いきなり来てしまって申しなかったね」

なぜか王子が今日私の家に来た。
一応連絡はあったのだが、急でしかも個人的に尋ねてくるとの事でうちのメイド達が慌てて準備をしてくれた。

確かにこの前のお茶会でまた来ると言っていたけど、こんなにすぐ来るとは思っていなかった。
王子は相変わらず微笑を浮かべ、私の目の前に座っている。

「あの、殿下。今日は一体どのようなご用件でいらっしゃったのですか?」
もしかして前回何かあったのだろうか。
私は緊張の面持ちで王子を見つめた。

「実は渡したい物があってお持ちしたのだ」
そう言って長細い箱を私に手渡した。
「ハンカチのお礼だ。開けてみてくれ」

「えっ!そんなお礼なんていいのに……」
私はそう言いつつ箱を開けてみた。
中には青い宝石のようなものがついたペンが入っていた。
すごく高級そうなものである。

「リオン嬢ももうすぐ入学だろう。だから是非それを使ってほしい」
「ありがとうございます。でもハンカチのお礼でこのようなものは申し訳ないですね」
「気にしないでくれ。私がプレゼントしたかったのだ。それにそこまで高級なものでもないぞ」

王子は私の心を見透かしたように話す。

「では毎日の授業で使いますね」
私はありがたく頂く事にした。
本気で断ってもせっかくきてもらったのに悪いからである。
王子はプレゼントを渡して満足した様で帰って行った。
忙しいのにわざわざ時間を作って来てくれたようだった。

私はなんとなくペンを見つめた。
何か思い出せそうな感じがする。
(うーん、なんだろう。ここまで出て来ているのに……あ!)

この宝石って確か王子ルートの婚約の時にもらう指輪についているものだ。

なぜかそれがペンに付けられている。
しかもこの宝石はとても貴重で国内だと手に入らないものだった気がする。

(これいくらするんだろ……)

こんな高級品を毎日の授業で使うのは贅沢である。
(こんなペン使ってるなんて私はどんな学生よ…。というか、もしかして私って結構王子に気に入られているのかな)

とりあえずペンに罪はないので使う事にする。
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