優柔不断なちょろインは求婚者からの溺愛を断れない

episode.13

（聞き覚えのある声…）

私が振り返ると金髪青い目、美しく整った顔の青年が立っていた。
（うわぁ！あれは！）

彼の名はクリスティ・アルベール。
この国の王太子殿下で、攻略対象。
自分に群がる令嬢が嫌いでほとんど人前には出てこない。
そんな設定だったはず。

おそらくほとんどの人が彼の顔を知らない。
私は知っているが知らないふりをした方が良さそうだ。

私はメインキャラに出会って高鳴る胸を押さえ質問に答えた。

「人を探していたのですが、迷ってしまって、もう戻りますのでご安心ください」
（あんまり喋ったり、王子に興味ないみたいな反応するとフラグが立っちゃうかもしれないし）

くるりと後ろを向いて立ち去ろうとした。
「待ってください。そっちじゃないです。本当に迷っているみたいなので途中までお送りしますよ」

そう言って私に近づき手を差し伸べた。
「どうぞ、エスコートします」
私は手を取るしかなかった。

（あああ、なんでこんな事に…）
クリスティは私の歩調に合してゆっくり歩いてくれている。

チラリ。横目で彼を見る。
（やっぱり王子はイケメンだなぁ。攻略キャラに会えるなんて、なんか感動！なぜか今だにレイの兄のグレイにはあった事ないし）

「ん？なんですか？」
私がちらちら見過ぎて視線に気づかれてしまった。