求婚者達に溺愛されすぎて死にそうです！ 〜乙女ゲーム攻略ダイアリー〜

episode.25

私は今一人のご令嬢とベンチに座っている。
彼女はメアリー。
ゲームキャラの一人でヒロインのお助け役だ。
見た目も茶色い髪のセミロングで容姿も悪くはないが可愛いすぎず、ヒロインのサポートという感じだ。

直接的にメインキャラに関わるわけではないが、ヒロインが選択をミスりそうになるとアドバイスをしたり、攻略したいキャラの情報をこっそり教えてくれたりする。
そんな彼女となぜ一緒にいるかというと、遡ること数時間前。


部屋で勉強していた私はひと段落ついたので、気分転換に街に行ってみる事にした。
（この前レイと遊びに行った時に気になるお店があったから行ってみようかな）

お店に行く前に少し喉が渇いたので飲み物を買い歩いていると、角を曲がるところで女の人と鉢合わせしそうになった。

ぶつかりはしなかったが、私はびっくりしてのけぞったので飲み物が自分の腕にかかってしまった。

「ごめんなさい大丈夫かしら？ああ！お洋服が濡れてしまっているわ」
慌てた様子で彼女はそう言ってハンカチを取り出し私の腕を拭いてくれる。
その子はまさかのヒロインのお助けキャラのメアリー。

「全然大丈夫ですよ。ほとんど濡れていませんし」
私は気にしなかったが、メアリーはいやいやと言って水に濡らして拭き取った方がいいと言うので公園のベンチに来たところだ。

メアリーはハンカチを濡らしポンポンと洋服を拭いてくれる。
「これで大丈夫だと思うわ」
彼女は申し訳なさそうにこっちをみる。

「この後どこかに行く予定はあったのかしら？」
私は前回来た時気になったお店に行こうと思っていたが、それを言うと彼女が気にしそうなのでもう帰るところだと言った。

「それならよかったわ。そういえば…」
何か思ったようにメアリーは私の事を不意に見つめる。

「年が近そうに見えるのだけどもしかして同級生かしら？私は魔法学校の1年なの」
貴族は大体この学校に通っている。
入学者数がとても多いので同じ学年でも名前も知らなければ顔もわからない生徒もいる。
だから見た目が同じくらいに見える私に同級生？と聞いてきたのだ。

（あれ？もしかしてこの流れってうまくいけばヒロイン事聞けたりする……？）
「私は来年入学なんです。でも婚約者が1年なので、もしかしたら会っているかもしれないですね」
「まぁそうなのね！婚約者の方はなんて言うお名前なの？」
私は一呼吸おいて名前を口にした。
「レイ・スタンリーというのですがご存知ですか？」