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第七章

61 side ジュゼッペ その2

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 これは夢かなにかかしら。…だって、或る意味人生の危機を…まさか一目惚れして少し恋心を抱いていた人が助けに来るだなんて。

「セランスト・オルティアナ…?君をこいつの婚約者にした覚えは無いが?」

「それは当然です」

「ふん。なら君の妄想か…帰りたまえ」

「いえ。貴方が知らないだけで、既に婚約は結ばれています。王家にも許可は頂いてますので」

「なんだと…!」

「ギャルツ公爵。…トリミア侯爵はもちろんご存知ですよね?」

「……ならどうした」

「つい最近、ジュゼッペ嬢はトリミア侯爵と養子縁組をし…無事トリミア家の人間となったんですよ」

「…何を寝ぼけた事を言っている。私は養子縁組の許可を出した覚えは無い」

「貴方の許可など必要ありませんでしたからね。…養子縁組の規則をご存知ですか?」

「馬鹿にしているのか!」

「まさか、とんでもない。…ただ、養子縁組の規則としては等の虐待的行為をしていた場合、親族の許可は必要ないとされています。貴方が今までジュゼッペ嬢にしていた行為は明らかにそれに該当します」

「何を馬鹿な…」

「よって、貴方の許可など無しに養子縁組を組めたわけです。そうしてジュゼッペ・ギャルツでは無くジュゼッペ・トリミアとなった彼女の婚約者が私というわけです」

「そんな戯言…誰が信じるか。……貴様、自分が今不法侵入している事に気づかないのか」

 そういうと、何故か勝ち誇った顔をする。

「オルティアナ家の人間が、そんな事をして良いとでも?…ふ、公爵家のわりには礼儀がなってないようだな!」

「その言葉、そのままお返しいたします。…私は、ここへ不法侵入しに来たのでは無く、婚約者を助けに来たのですから」

「……誘拐?…は!貴様頭がおかしいのか?」

「いえ。…手続きをすませ、既にトリミア家の人間となった彼女をどんな事情であれ本人の同意無しにこのギャルツ家に連れてきたなら……それはでは無く完全にですよ?」

「ふ、ふざけるな!!第一その養子縁組に許可もしてない上にそれ自体知らなかったんだぞ!」

 他家の令嬢を誘拐するなんてことはあってはならない。処罰もあるし、体面を保てなくなる。

「さぁ。そんな事は知りませんよ」

「何っ…!」

「いい加減気づかれた方が良い。貴方は……いや、このギャルツ家は私にはめられたんですよ?…ふ、最もこの家はこのような事をしなくとも時期に無くなるでしょうけどね」

「戯言を…」

 明らかに追い詰められている。

「このギャルツ家がしてきた数々の不正を殿下が知らないとでも?甘く見るのも大概にした方が良い」

「………」

 意気消沈とは、正にこの事を言うのでは無いだろうか。それにしてもセランスト様凄いな。







 私はただ呆然と見ているだけだった。
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