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第六章
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しおりを挟む翌日。
今日もジュゼッペ様と買い物をしていた。
「結局、前回は見るだけ見て終わってしまい…ドレスを買えなかったのです」
「そうですか…」
「でも、今日は買います!」
「良いと思いますよ」
そんなわけで、ジュゼッペ様は少し張り切っていた。
「ジュゼッペ様…一日しか経ってはいませんが、何か進展などは…?」
「そ、そんな、たった一日でどうこうはなりませんよ…それに昨日は見かけることすら無かったので…」
「あ、そうですか…」
「まだお名前すらわからないのですが、やはり気になります…」
「ははは……」
名前を教えるべきか…。
そもそも兄だというべきなのか…。
どうするべきか結局結論はでず。
「ねぇヒルユ、これなんてどうかしら?」
「サイズは合いますか?」
普通ならオーダーメイドをするのだが、ジュゼッペ様は特にこれが着たい!というのが無いらしく、既にできている物の中から選ぶ派なのだそう。
「お嬢様……どうするおつもりですか?」
「どうしていいかわからないのよ…」
「もういっそのこと幻滅させて諦めてもらうのはいかがですか」
「リーシェ…凄いこと言うわね」
「夢を見させてしまう方が残酷な気がしますよ……セラン様が恋愛事に興味無いのはお嬢様が一番ご存知でしょう」
「そうね……」
小声で話しているため、ジュゼッペ様には届かない。
「……これにするわ!」
「かしこまりました。お買い上げありがとうございます」
ジュゼッペ様がドレスを決めたようだ。
「では、手続きをお願いしたいのですが」
「私がやります」
「お願いね、ヒルユ」
「あ…書類があちらの部屋にあるのですが」
「伺います」
そう言ってヒルユと商人の一人が隣の部屋へと行った。
「失礼します」
そう言って護衛騎士の一人が入ってきた。
「リーシェ殿、ガイ殿が用があるとのことです」
「あ……昨日の続きでしょうかね」
「行ってらっしゃいリーシェ」
「はい」
リーシェは護衛騎士に連れられ、部屋の外へと行った。
「…遂に新しいドレスを買ってしまいましたわ…」
「そうですね」
「これを機に……良いことが……あれ……ば……………」
「…ジュゼッペ様?」
「ん……」
気づくとジュゼッペ様は寝てしまった。
「…?」
疲れていたのだろうか。
もしかして、兄様のことを考えすぎて一日中寝られなかったとか?
「恋に悩む乙女……」
その姿はとても可愛らしい。
そう思ってしまった。
「計画通りだ」
「え?」
────その瞬間。
私の目の前は暗闇で覆われた。
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