28 / 41
28.二度目の再会
しおりを挟む翌日の朝。
ルルメリアはよほど楽しみだったのか私より早く起きて私を起こしにきた。
「おかーさん! あさだよ! おーさんとあそぶひだよ!!」
「うん……?」
娘の元気な声で強制的に布団から起こされた私は、眠い目をこすりながら朝ごはんを準備した。
「ふふっ」
ルルメリアはいつも以上に気分が上がっているようで、席に座ってからずっとニコニコしていた。その様子を見ているだけで幸せになれた。
食事を済ませると、お気に入りのワンピースを着ている。
「おかーさん、あたしこれきてくの! どう!?」
「うん、似合ってるよ」
「えへへ」
くるりと回って見せるルルメリア。やはり年頃の友達はこの子にとっても特別なようだ。
準備を済ませると、オースティン様と会う前にハンナちゃんとハンナちゃん母に会いにパン屋さんへ向かった。
「あっ! はんなちゃん!」
どうやら先に到着されていたようで、ルルメリアが見つけた瞬間すぐに駆け出した。
「るるちゃん!」
とても可愛らしい声が聞こえたかと思えば、ハンナちゃんが視界に映った。ハンナちゃんの様子を見てみると、彼女もまたルルメリアと会えるのを楽しみにしていたようだった。
そしてその奥にいるお母さんに視線が移る。
「あっ……!」
「あら、やっぱり!」
そこにいたのは、バザーでお世話になり、ピクニックでルルメリアの帽子を拾ってくれたお母さんだった。
「ごめんなさいね、私が名乗ってなかったから怪しくしちゃったわよね。ハンナの母、マギーです。よろしくね」
「マギーさん。私はルルメリアの義母クロエです。ご無沙汰しております」
彼女とは不思議な縁があるようだ。改めて軽い挨拶を済ませる。
「すみません、お家に行くときいたのですがご迷惑ではないでしょうか」
「大丈夫よ! この前一緒にいたお母さん方の子どもも一緒なの」
「そうなんですね」
「えぇ。だから安心して」
他の子もいるのなら、幾分か申し訳なさは消えて心配も薄まる。
「ルルメリアのこと、お願いします。何時まで遊ぶか予定はありますか?」
「うちのハンナもだけど、皆楽しみにしてたみたいだから、せっかくならお昼を食べて、少し遊んでから解散にしようか思ってるの。そうね、時間で言うと二時くらいかしら」
お昼まで!? それはさすがに申し訳ないという気持ちが込み上げてくる。
「そんなによいのでしょうか……」
「いいのよ! 家の場所もあるから、子どもたちが集まって遊べるのは数少ない機会だから。もちろん、クロエさんさえ良ければなのだけど」
そう言われて、ルルメリアの方をチラリと見る。そこにはハンナちゃんと楽しそうにお喋りするルルメリアがいた。
「それでは午後二時頃、お迎えに行きます。それであの、こちらつまらないものなのですが」
「あら! いいのに」
そういうわけにはという表情をしながら、マギーさんに学校近くにあるお店の美味しいと評判のクッキーを渡した。
「では二時にお待ちしてるわね。それじゃ、家まで案内するわ」
「はい、お願いします」
こうしてルルメリアとハンナちゃんをそれぞれ呼ぶと、そのままマギーさん宅へと向かった。
場所はパン屋さんから少し離れており、歩いて三十分ほど経った距離だった。
「ハンナちゃん、ルルちゃん!」
そこには既に集まっていた子どもたちが、嬉しそうに二人を向かえてくれる。他のお母さん方とも改めて自己紹介をして、ご挨拶を済ませた。
送り出す時に、私はルルメリアの頭をなでて一言伝えた。
「ルル。楽しんできてね。でも、良い子にするのよ」
「うん! あたしいいこにできるよ!」
「そうだね」
「おかーさんもおーさんと楽しんできてね!」
「……うん」
それはあまり頷けるかは微妙なところだけど、せめてルルメリアの分までは楽しもうと思った。
ルルメリアに手を振り、マギーさんに一礼すると、私はオースティン様の来訪に備えて自宅へ戻るのだった。
38
お気に入りに追加
654
あなたにおすすめの小説
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
会うたびに、貴方が嫌いになる
黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
長身の王女レオーネは、侯爵家令息のアリエスに会うたびに惹かれた。だが、守り役に徹している彼が応えてくれたことはない。彼女が聖獣の力を持つために発情期を迎えた時も、身体を差し出して鎮めてくれこそしたが、その後も変わらず塩対応だ。悩むレオーネは、彼が自分とは正反対の可愛らしい令嬢と親しくしているのを目撃してしまう。優しく笑いかけ、「小さい方が良い」と褒めているのも聞いた。失恋という現実を受け入れるしかなかったレオーネは、二人の妨げになるまいと決意した。
アリエスは嫌そうに自分を遠ざけ始めたレオーネに、動揺を隠せなくなった。彼女が演技などではなく、本気でそう思っていると分かったからだ。
ヤンデレ騎士団の光の聖女ですが、彼らの心の闇は照らせますか?〜メリバエンド確定の乙女ゲーに転生したので全力でスキル上げて生存目指します〜
たかつじ楓*LINEマンガ連載中!
恋愛
攻略キャラが二人ともヤンデレな乙女ーゲームに転生してしまったルナ。
「……お前も俺を捨てるのか? 行かないでくれ……」
黒騎士ヴィクターは、孤児で修道院で育ち、その修道院も魔族に滅ぼされた過去を持つ闇ヤンデレ。
「ほんと君は危機感ないんだから。閉じ込めておかなきゃ駄目かな?」
大魔導師リロイは、魔法学園主席の天才だが、自分の作った毒薬が事件に使われてしまい、責任を問われ投獄された暗黒微笑ヤンデレである。
ゲームの結末は、黒騎士ヴィクターと魔導師リロイどちらと結ばれても、戦争に負け命を落とすか心中するか。
メリーバッドエンドでエモいと思っていたが、どっちと結ばれても死んでしまう自分の運命に焦るルナ。
唯一生き残る方法はただ一つ。
二人の好感度をMAXにした上で自分のステータスをMAXにする、『大戦争を勝ちに導く光の聖女』として君臨する、激ムズのトゥルーエンドのみ。
ヤンデレだらけのメリバ乙女ゲーで生存するために奔走する!?
ヤンデレ溺愛三角関係ラブストーリー!
※短編です!好評でしたら長編も書きますので応援お願いします♫
悪役令嬢に転生したので、やりたい放題やって派手に散るつもりでしたが、なぜか溺愛されています
平山和人
恋愛
伯爵令嬢であるオフィーリアは、ある日、前世の記憶を思い出す、前世の自分は平凡なOLでトラックに轢かれて死んだことを。
自分が転生したのは散財が趣味の悪役令嬢で、王太子と婚約破棄の上、断罪される運命にある。オフィーリアは運命を受け入れ、どうせ断罪されるなら好きに生きようとするが、なぜか周囲から溺愛されてしまう。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる