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22. 告げられる結果

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 無事にお茶会の選考は幕を閉じた。

 予想通り、夫人がたの評価は曖昧なものになり大公による勝敗は下されなかった。それでもリブル夫人はお嬢様に対してこれ以上無い高評価をされた。それだけでも、お嬢様的には満足だったようだ。ベアトリーチェ嬢は低い評価はもらわなかったものの、望んだ結果にはならず不満たっぷりの態度でその場を去っていった。

 こうして1つ目の選考が終わりを告げた。

 2つ目の選考はある程度決まっているようだが、詳細を決定後すぐに伝えられるとされた。

 その場を離れてすぐにお嬢様は恥ずかしそうに笑った。

「色々あったけれど、とにかく今は何か食べたいわ」

 その言葉に心の底から同意し、急いで別館にいる料理人さんに食事の用意を頼んだ。

 結局、ランドグラシャを食べることは無かったものの、良い気分で昼食を食べれたので結果的に良しとしよう。

 一息つくと、食後の紅茶をお嬢様へお出しした。

「お疲れ様でした、お嬢様」

「ありがとう。無事に終えることができて本当に安心したわ」

 どうやら私が思っているよりもお嬢様は緊張されていたようで、ようやく雰囲気が柔らかなものへとなった。

「勝敗がつかなかったことが残念でなりません」

 申し訳ない気持ちが自然とこもる。

「そうね。でも、私的には本当に満足なの。トルム語を本場の方と話せたことや、久しぶりに穏やかなお茶会ができたことを含めて本当に楽しかったわ。リブル夫人とは個人的に今後もやり取りさせていただけることになったしね」

「そうなのですか?」

「えぇ。いわゆる、お友達というものよ。リブル夫人から手紙のやり取りを提案された時は本当に嬉しかったの」

「それは良かったです」

 お嬢様はお嬢様なりに多くの収穫ができたようだ。本人が幸せそうにしているのを見ると、これで良かったかもしれないという感情が生まれてくる。

「リブル夫人の話を聞けば聞くほど、自分の足で他国へ行きたいと思ってしまうわ」

「トルム国以外にも行きたい国があるのですか?」

「えぇ、もちろん!」

 問いかけに対していつも以上に高めの声色で返ってきた。

「ずっと世界を巡りたいと思っているの。貴族視点で考えると、見識を広めるためという理由よ。けど、一個人としての理由は世界に広がる多種多様な景色や文化を自分の目で見たいという好奇心かしら。高い確率で叶わないと感じているけれど、夢見るのは自由でしょう?だから語学の勉強に力をいれたりしていたのよね」

「納得の実力にございます」

「褒めてもらえて嬉しいわ」

 公爵家それも筆頭の家に生まれたからには、お嬢様はきっと成すべき多くのことがあるせいで願いを叶えられないのだろう。今回の縁談問題を含めて、権力争いに巻き込まれることも少なくなかった筈だ。立場を投げ出して世界に飛び出すことも不可能ではないが、お嬢様は家族を犠牲にしたくなくてできないと思う。
 
 いつかお嬢様が少しでも多くの国に足を運べるよう、そっと願った。

「それにしても、2つ目の選考は大方決まっていると言われましたね。何が行われるのでしょうか」

「恐らくパートナー適正を見極めるのではないかしら」

「パートナー適正、ですか?」

「えぇ。もうすぐ王都での社交界シーズンになるの。そうなると、義務的に殿下も何度かは出席しなくてはいけなくなるわ。その時に、私とベアトリーチェ様がそれぞれパートナーを務めて最終的には比較するのではないかしら」

「なるほど。田舎にこもってばかりで行ったことがなく、想像もつきませんでした……」

 貴族は一度は行くのが義務付けられるものだが、あくまでも爵位を持った者のみが王へ挨拶をすれば良い。その為私とライナックは一度も参加したことがない。

「申し訳ありませんお嬢様……今回は何も役に立てそうにありません」

「そんなことを言わないでシュイナ。当日私をうんと綺麗にしてくれるのはシュイナでしょう」

「……誠心誠意、全力を尽くして磨き上げます」

 お茶会に関する知識も心許ないほどだったが、パーティーとなるとそれ以上に知識も経験もない。できることに全力を尽くそうと決意した。

「そこまで気張らなくて大丈夫よ。パーティーで重要なのは年始と年末のものよ。今回のは春シーズンのパーティーだから、気負いすぎずに参加してくるわ」

「なるほど」

「次の選考がパーティーだった場合の話だけどね」

 少し自信なさげに微笑んだお嬢様だったが、その予想は的中することになる。

 フィーディリアの花はまだ散る気配はなく、それが春が続くことを示していた。
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