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最終章
最終話
しおりを挟む穏やかな風が吹く。
晴れやかな日差しが差し込む元、庭園を駆ける足音が聞こえる。
「殿下ー! 走っては行けません!! 危険にございます!!」
「平気だよ、キナ!」
「そうだよ、大丈夫だよ!」
「なりませんっ!!」
一人の侍女が、王子と思われる二人の影を必死に追っていた。楽しそうに駆け抜ける二人の影は、お互いに微笑みながら走っていたが、突如現れたドレスにぶつかった。
「わっ!」
「うっ!」
「捕まえた!」
そう言ったドレス姿の主は、駆けていた影を抱き締めると笑った。
「母様、ずるだよぉ」
「どこから現れたの?」
「先回りはずるじゃないわよ、レオ。ルイ、すぐそこで隠れてたの」
しゃがみこんで二人の頭を優しく撫でると、走っていた二人は残念そうに、でも嬉しそうに降参した。
「レオン殿下~! ルイス殿下~! お待ちください……!」
「二人とも、あまりキナを困らせないのよ?」
「「はーい!」」
息をきらしてようやく追い付いた様子の侍女は疲れきっていた。それを見かねた母親は息子達を嗜める。
「それじゃ、そろそろお部屋に戻りましょうか」
「帰ったらお勉強?」
「そうねぇ、走ったから喉が渇いたでしょう。お茶にする?」
「お茶がいい!」
「賛成!」
右と左それぞれの手を繋ぐと、侍女は後ろからゆっくりとついていった。
「ねぇねぇ母様、僕とルイスにもいるのかな。運命の相手」
「もちろん。絶対にいるわ」
「でも、僕とレオンは双子だから被っちゃわないかな?」
「二人は双子でも、それぞれ一人の人でしょう? そう考えれば、繋がってる運命はそれぞれ違うものよ」
「違うもの!」
「それぞれのもの!」
二人の王子は顔を見合わせると「やったぁ!」と言いながら笑いあった。
「でも見つからなかったらどうしよう」
「確かに。母様、見つからなかったらどうしよう?」
二人が不安げに見上げた。母親が言葉を返すよりも先に、一人の王子の体が宙に浮いた。
「わぁっ! お父様!!」
「不安に思うことはないぞ、ルイス」
「あ! ルイスだけずるい! 父様僕も!」
「おいで、レオン」
二人の王子を抱えると、愛しい妻に近付いて頬に唇をおとした。
「フィナ、今からお茶会か?」
「そうですよ。セドも一緒にいかがです?」
「是非とも参加しよう」
「「やったー!」」
「ふふっ」
父親の参加に二人は喜ぶと、母親はその可愛さゆえに微笑んだ。
「レオン、ルイス。番は信じていれば必ず現れる」
「本当に?」
「あぁ。信じていたから父様は母様に出会えたんだ」
「運命だ!」
「そう、まさに運命だ。ここから先の人生、どう生きるかは二人次第だが、番を求めるなら信じなさい。希望を捨てなければ……生きている限り、必ず出会えるから」
父親の落とされた言葉に、二人の王子は力強い眼差しで頷いた。
母親は、愛おしそうに家族を見つめるのだった。
二人の元に番が現れるのは、まだ先のお話。
完
▽▼▽▼
ここまで読んでくださった皆様に、心より感謝申し上げます。
本作は完結するまでに非常に長い時間を要してしまった作品ですが、無事に完結までたどり着けることができました。
これも、更新が止まっても読み続けてくださった皆様のおかげにございます。
本当にありがとうございます。
本編は完結いたしましたが、書ききれなかったお話を番外編でゆっくり更新したいと思います。
現在予定しているのは、各登場人物のその後についてです。
また、最後駆け足になってしまいましたので、書ききれなかったものは番外編にて書ければと思っております。
もしよろしければ、そちらもご覧いただければと思います。
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現在は他に一つ『悪評を気にせず自分らしく生きることをモットーにしていたら、何故か隣国の大公に溺愛されています』を更新しておりますので、よろしければ覗きにきていただければ幸いです。
最後になりますが、完結までお付き合いいただいた皆様、誠にありがとうございます。重ねて感謝申し上げます!
咲宮
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