上 下
133 / 133
最終章

最終話

しおりを挟む



 穏やかな風が吹く。
 晴れやかな日差しが差し込む元、庭園を駆ける足音が聞こえる。

「殿下ー! 走っては行けません!! 危険にございます!!」
「平気だよ、キナ!」
「そうだよ、大丈夫だよ!」
「なりませんっ!!」

 一人の侍女が、王子と思われる二人の影を必死に追っていた。楽しそうに駆け抜ける二人の影は、お互いに微笑みながら走っていたが、突如現れたドレスにぶつかった。

「わっ!」
「うっ!」
「捕まえた!」

 そう言ったドレス姿の主は、駆けていた影を抱き締めると笑った。

「母様、ずるだよぉ」
「どこから現れたの?」
「先回りはずるじゃないわよ、レオ。ルイ、すぐそこで隠れてたの」

 しゃがみこんで二人の頭を優しく撫でると、走っていた二人は残念そうに、でも嬉しそうに降参した。

「レオン殿下~! ルイス殿下~! お待ちください……!」
「二人とも、あまりキナを困らせないのよ?」
「「はーい!」」

 息をきらしてようやく追い付いた様子の侍女は疲れきっていた。それを見かねた母親は息子達を嗜める。

「それじゃ、そろそろお部屋に戻りましょうか」
「帰ったらお勉強?」
「そうねぇ、走ったから喉が渇いたでしょう。お茶にする?」
「お茶がいい!」
「賛成!」

 右と左それぞれの手を繋ぐと、侍女は後ろからゆっくりとついていった。
 
「ねぇねぇ母様、僕とルイスにもいるのかな。運命の相手」
「もちろん。絶対にいるわ」
「でも、僕とレオンは双子だから被っちゃわないかな?」
「二人は双子でも、それぞれ一人の人でしょう? そう考えれば、繋がってる運命はそれぞれ違うものよ」
「違うもの!」
「それぞれのもの!」

 二人の王子は顔を見合わせると「やったぁ!」と言いながら笑いあった。

「でも見つからなかったらどうしよう」
「確かに。母様、見つからなかったらどうしよう?」

 二人が不安げに見上げた。母親が言葉を返すよりも先に、一人の王子の体が宙に浮いた。

「わぁっ! お父様!!」
「不安に思うことはないぞ、ルイス」
「あ! ルイスだけずるい! 父様僕も!」
「おいで、レオン」

 二人の王子を抱えると、愛しい妻に近付いて頬に唇をおとした。

「フィナ、今からお茶会か?」
「そうですよ。セドも一緒にいかがです?」
「是非とも参加しよう」
「「やったー!」」
「ふふっ」

 父親の参加に二人は喜ぶと、母親はその可愛さゆえに微笑んだ。

「レオン、ルイス。番は信じていれば必ず現れる」
「本当に?」
「あぁ。信じていたから父様は母様に出会えたんだ」
「運命だ!」
「そう、まさに運命だ。ここから先の人生、どう生きるかは二人次第だが、番を求めるなら信じなさい。希望を捨てなければ……生きている限り、必ず出会えるから」

 父親の落とされた言葉に、二人の王子は力強い眼差しで頷いた。

 母親は、愛おしそうに家族を見つめるのだった。



 二人の元に番が現れるのは、まだ先のお話。

                 完


▽▼▽▼

 ここまで読んでくださった皆様に、心より感謝申し上げます。

 本作は完結するまでに非常に長い時間を要してしまった作品ですが、無事に完結までたどり着けることができました。

 これも、更新が止まっても読み続けてくださった皆様のおかげにございます。
 本当にありがとうございます。

 本編は完結いたしましたが、書ききれなかったお話を番外編でゆっくり更新したいと思います。
 現在予定しているのは、各登場人物のその後についてです。 
 また、最後駆け足になってしまいましたので、書ききれなかったものは番外編にて書ければと思っております。
 もしよろしければ、そちらもご覧いただければと思います。

 『フラグを折ったら溺愛されました』
 私にとっても非常に思い入れが深い物語です。
 この作品を通して読者の皆様にお会いできたこと、心より嬉しく思います。

 現在は他に一つ『悪評を気にせず自分らしく生きることをモットーにしていたら、何故か隣国の大公に溺愛されています』を更新しておりますので、よろしければ覗きにきていただければ幸いです。

 最後になりますが、完結までお付き合いいただいた皆様、誠にありがとうございます。重ねて感謝申し上げます!
                咲宮
 
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(298件)

夜桜
2023.04.16 夜桜

完結お疲れ様でした〜(*´ω`*)

解除
夜桜
2023.04.07 夜桜

すみません、読み返してたら見つけまして、確認していただければと。
八章90話
圧倒的に迎えの馬車が→あっという間に かな?と。

解除
みかん
2023.03.08 みかん
ネタバレ含む
咲宮
2023.04.07 咲宮

貴重な感想ありがとうございますm(_ _)m
返信が遅れてしまい大変申し訳ありません。
テオルートへの考察ありがとうございます。みかん様の仰る通り、自業自得で罪悪感は残る形になりました……。それを背負って忘れずに生きていくことが、彼ができる償いなのかなと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。

解除

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

『別れても好きな人』 

設樂理沙
ライト文芸
 大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。  夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。  ほんとうは別れたくなどなかった。  この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には  どうしようもないことがあるのだ。  自分で選択できないことがある。  悲しいけれど……。   ―――――――――――――――――――――――――――――――――  登場人物紹介 戸田貴理子   40才 戸田正義    44才 青木誠二    28才 嘉島優子    33才  小田聖也    35才 2024.4.11 ―― プロット作成日 💛イラストはAI生成自作画像

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました

Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、 あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。 ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。 けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。 『我慢するしかない』 『彼女といると疲れる』 私はルパート様に嫌われていたの? 本当は厭わしく思っていたの? だから私は決めました。 あなたを忘れようと… ※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。

あなたの嫉妬なんて知らない

abang
恋愛
「あなたが尻軽だとは知らなかったな」 「あ、そう。誰を信じるかは自由よ。じゃあ、終わりって事でいいのね」 「は……終わりだなんて、」 「こんな所にいらしたのね!お二人とも……皆探していましたよ…… "今日の主役が二人も抜けては"」 婚約パーティーの夜だった。 愛おしい恋人に「尻軽」だと身に覚えのない事で罵られたのは。 長年の恋人の言葉よりもあざとい秘書官の言葉を信頼する近頃の彼にどれほど傷ついただろう。 「はー、もういいわ」 皇帝という立場の恋人は、仕事仲間である優秀な秘書官を信頼していた。 彼女の言葉を信じて私に婚約パーティーの日に「尻軽」だと言った彼。 「公女様は、退屈な方ですね」そういって耳元で嘲笑った秘書官。 だから私は悪女になった。 「しつこいわね、見て分かんないの?貴方とは終わったの」 洗練された公女の所作に、恵まれた女性の魅力に、高貴な家門の名に、男女問わず皆が魅了される。 「貴女は、俺の婚約者だろう!」 「これを見ても?貴方の言ったとおり"尻軽"に振る舞ったのだけど、思いの他皆にモテているの。感謝するわ」 「ダリア!いい加減に……」 嫉妬に燃える皇帝はダリアの新しい恋を次々と邪魔して……?

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。