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八章
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しおりを挟むパーティー参加が確定すると、卒業公演の研究と平行しながら王妃教育兼パーティーまでの予習が本格的に始まった。
出席するゼロ国の貴族の顔と名前を貴族名鑑で覚えることや、サン国とは些細な点で異なるマナーの確認などとやることは山積みだった。
それに加えてダンスの授業も始まった。
(今まで舞踊ばかりしていたから、社交界での踊るようなタイプのダンスは凄く久しく感じる)
考えてみれば、長い間社交界のパーティーに参加していなかった為にこの類いのダンスは本当に久しぶりに経験するものだった。
舞踊学科ということもあり、授業は問題なく済んだものの、相手をしてくれたのは女性の先生だった。身長や体の大きさが異なる男性との練習は一度もしなかった為、少し不安がよぎった。
(……でも当日はそんなに踊らない気がする。ましてや他の男性なんて)
誘われるわけがない、もし誘われても断るつもりでいた。練習はしているものの、セド以外の男性と至近距離で居続ける理由はない上に不安にさせてはいけないと考えたからだ。
もし当日踊るとしてもセドとのみだろう。
(だからこそ練習をしておきたいのだけど……こればかりは想像で感覚を掴むしかないわね)
練習相手を用意してもらうのも変な話なので、授業が終わった後でも一人でステップの確認をしていた。
「……いちに、さん。いちに、さん」
呟きながら集中してステップを踏むと、気付けば曲が終わった。そのタイミングを見計らっていたかのように扉の方から声が聞こえた。
「ダンスの練習をしているのか、フィナ」
「セド、いらしてたんですか」
「……あぁ」
こちらに近付く様子は何故か少しだけ暗いように感じた。
「……何かありましたか?」
「……フィナ、できればその。パーティーでのダンスはあまりしないでくれるか?必要最低限で」
「あぁ……心配なさらないで下さい。元々セド以外と踊るつもりはありませんよ。セドと踊る時に間違えないために練習を」
「そうだったのか……!そうか」
「ふふ、心配しました?」
「凄く」
暗い表情が一瞬で消え去ると、セドはゆっくりと片手を差しのべた。
「フィナ。俺も久しぶりに踊るんだ。だから練習しようと思ってな。一曲どうだろうか」
「喜んで」
「できる限りリードする」
「信じてます」
お互いに微笑み合うと、曲をかけて踊り始めた。久しぶりだという言葉がまるで嘘のように、セドのリードはしっかりとしてとても頼もしいものだった。
ほとんど身を任せるだけで終わるようなダンスだったが、とても心地よくいつまでも傍にいたいと思うほど、この距離感は愛おしかった。
暖かく柔らかな視線で見つめ合いながら、ダンスの練習に励んだ。
この様子なら本番も大丈夫そう。
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