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七章
82 side ?
しおりを挟む幼い頃から病弱で、体調が良い日よりも悪い日の方が多かった。妹のレーネは凄く良い子で、どんな時でも心配そうに面倒を見てくれた。
決して楽しい訳では無かったけど、色々な人の助けもあって絶望することはなかった。悪くない人生だったと思う。
そのままゆっくりと、平凡な日々を過ごせればそれだけで満足だった。
まさか自分が誰かの番だとは夢にも思わなかった。
彼と出会って、人生観が一変した。
運命の出会いが存在すること、人を心から愛しいと思うこと、命の重たさを知った。
初めて死にたくない、ずっと生きていたいと思えた。それくらい彼の存在は大きかったのだ。
感じたことのない感情は、私に幸せと絶望を同時に運んできた。
どんなに頑張っても彼の隣に居続けられないこの体を心底嫌った。
番だったから、出会えたから、恋を知ったから、生きたいという欲がでたから。
だからといって、この病弱な体は何一つ変わらない。永遠にこのままなのだ。それが本当に辛くて、苦しくて。それはやがて絶望に変わっていった。
でもだからこそ幸せだった。彼といられるその時間が。それを日常として過ごせることが何よりも重要だったのだ。彼の隣にいることが生きる意味となって、終わりが早くきてしまうとしても、幸せな日々に変わりはないから。
そう思いながら過ごしていた筈なのに、彼をどこまでも苦しめてしまった。
自分の口から「終わりが早いから」「死期が近い」なんて口にしたことはなかった。そんなことは、事実であったとしても言わなかったのに。それがかえって彼の中で現実として突きつけられたのかもしれない。
私にとって彼は掛け替えのない人。幸せそのもの。
彼と出会って経験した恋愛は、何にも変えがたい幸福そのものだった。最高の恋愛だった。
けどその想いは届かず、彼の胸を苦しめた結果、彼はこの恋を悲恋だと呼んだ。
そんなことない。
ありえない。
そう伝えたかったのに。
どうすれば伝わったのか、今ではわからない。
けど願い続けるのはただ一つ。
これは悲恋じゃない。その想いが届きますように、と。
誰かが私が残した手紙を手にして、想いを伝えてくれることをいつまでも願う。
それだけが、唯一の未練だから。
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