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七章

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 お昼ごはんは、町で有名な食堂に案内してくれた。

「あら、アンナじゃない。久しぶりね、帰ってきてたの?」
「レーネさん!お久しぶりです」
「隣の可愛い娘はお友達?」
「そうなんですよ、可愛いでしょ」
「初めまして、シーナといいます」
「よろしくね~!」

 二人揃ってカウンター席に座る。丁度お昼の混雑時間が終わった後で、店内でお客さんは私達だけだった。

 レーネとアンナが呼んだ女性は、この食堂を切り盛りしている女主人。
 美味しい食事を終えると、そのまま二人で悲恋について尋ねた。

「レーネさんは既婚者って知ってますけど、悲恋について聞かせてくれませんか?」
「悲恋?それが卒業発表のテーマなのね」
「そうなんですよ」

 話を聞くと、レーネさんは何年も前に既に結婚をしており二人の子供もいるとのこと。本人曰くどこにでもある普通の恋愛だった為に、経験から悲恋は語れないと言われた。

「恋愛をするなかで怒ったことはあったけど、物語みたいなすれ違いとか悲恋はなかったのよね」
「そうですか」
「あ、そうだ」
「「?」」
「私ではないんだけど。私の姉がね、そういう恋愛をしていたのかもしれないの」
「お姉さんって確か」
「うん。十五年前に亡くなってるわ」
「……」
「そのお姉さんが、ですか?」
「そうなの」

 レーネさんには姉がいたそうだが、とても病弱な方で元々長く生きられない方だったと言う。

「姉さんは病弱だったんだけど、亡くなる五年ほど前から恋人がいたみたいで。私は相手については知らないけど。忙しい人みたいで、最後まで会えなかったのよね」
「そうなんですね」
「うん。姉さんは滅多に自分の恋愛話はしなかったのだけど、一度だけ呟いたことを覚えてるの。“自分の恋は決して悲恋じゃなかった、幸せだ。でも証明することができなかった”って。」
「幸せ……」
「証明できない……」
「姉さんにとってそれだけが未練だったみたいで。でも私にも証明しようがなくて」

 どこか寂しそうに俯くレーネさん。

「恋人との手紙を読んでも、姉さんが何を証明したかったのかさっぱりわからなかった。私に読み解く力がないのもそうなんだけど……。そうだ!よかったら二人とも読んでみない?」
「さ、さすがに人の恋文を読むのは」
「覗き見するんじゃなくて、未練を晴らすって考えて読めば平気よ。人助けだと思って、ね」
「そう言うんだったら……」
「シーナは?どうかしら」
「……レーネさんさえ良いのなら、読んでみたいです」
「わかった、取ってくるわ!」

 アンナと同じで他人の恋文を勝手に見ることは多少気が引けたが、レーネさんのお姉さんが残した悲恋に関する未練が気になった。

 レーネさんが取ってきた箱には、手紙が大切に保管されていた。その中の一通を無作為に選んだものを渡される。

「相手からの手紙ということもあって、姉さんの本心は見れないのよね……」
(……待って、私この筆跡を知ってるわ!)

 渡された手紙に記された文字には、どこか見覚えがあった。




 もしかして、禁書のあの本と関係があるの?
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