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七章
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しおりを挟む悲恋の研究を兼ねて、今日はアンナと町に調査に来ていた。アンナの故郷でもあるトラン町は王都からそう離れていないため、何とかセドから許可を取ることに成功した。
もちろん護衛つきだが。
(幸いなのは、護衛がテオルート様でないことかな)
今回は向こうに別件の仕事があるとして別の者となったが、もしかしたら同行するのも嫌という程嫌われてる可能性は大きい。
「ごめんねシーナ。研究調査といっても、もしかしたら手伝いもさせられるかもしれない」
「大丈夫よアンナ。お話を少しでも聞ける機会があるならありがたいわ」
「その点は任せて!」
アンナの友人として行くため、身分はもちろん留学生で護衛も影ながらとなる。
アンナ曰く、トラン町には変わり者が多く様々な恋愛について聞けるらしいのだ。もちろん純粋に番を見つけた者もいる。豊富な研究材料と言われて誘われた。
「いつ来てもパッとしない町だわ」
「そう?充分素敵な景観よ」
「シーナは優しすぎる」
到着すると、まずはアンナの両親に挨拶を済ませた。そしてアンナの知人に片っ端から恋愛談について話を聞いた。
「で?叔父さん。結局恋人は作らないわけ」
「おいおいアンナ。作らないわけないだろう。俺は運命の番を信じてるのさ。きっと俺のことを見つけ出してくれるってな」
「他力本願じゃない。自分から探さないわけ」
「探したら運命と言わないだろ?ある日突然、思わぬところで出会う。これが運命だろ」
「……そう言って何年過ぎたのよ」
アンナの呆れぶりを見ると、アンナの叔父はずっとこの調子らしい。
「じゃあ。その出会えない時間を悲しいとは思わないわけ」
「思わないねぇ。会えないのもまた、定められた運命と言うわけさ」
「駄目だ、言ってること理解できない」
「子どもには難しかったか?」
「私はもう子どもじゃありません」
親しげな様子を見ながら、思わずくすりと笑う。
「隣のお嬢ちゃん。君は何か質問は無いのか」
「シーナ、無視していいから」
「大丈夫よアンナ。では叔父様、一つだけ質問を」
「おう、いいぞ」
「叔父様にとっての悲恋が何かをお聞きしたいです」
禁書の物語が多く語るのは、出会えないことこそ悲恋、だった。だが彼はそれを悲恋としないなら。他に考えがあるのだろうか。
「悲恋……そうだなぁ、捨てられる恋とかか?もし好きな人ができて、その人に選ばれなかったら心底悲しいな」
「確かに」
「なるほど」
想像とは違う回答だったが、また新しい恋愛観を見れた気がする。
話をしてくれたアンナの叔父に感謝を述べてその場を後にした。
「ごめんね、変な人すぎたわ」
「ううん、勉強になったよ」
「うぅ、シーナが優しすぎる」
「本当だからね?」
まるで世辞のように捉えられてしまいそうだが、これは本心。自分とは価値観の違う人の方が、異なる答えを持っているから。
その後も何人かに話を尋ねて回った。興味深い話ばかりで、尋ねがいのある話ばかりだった。
時刻はすっかり昼を過ぎ、お昼ごはんの時間を迎えた。
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