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六章
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しおりを挟む夏休みも終盤に差し掛かると、ギルバートさん達が家族全員で王城へ訪れた。
久しぶりに孫に会えるとシトさんが聞きとして話す姿を見て「そう言えばお祖父ちゃんだった……」ということを思い出した。
家族水入らずに過ごすんだろうと思っていたら、丁寧にナターシャが挨拶に来てくれた。
「せんせーい!!お久しぶりです」
「元気にしてましたか、ナターシャ」
「はい!」
飛び付く勢いで顔を見せてくれる。暖かく迎えると、嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。別れてからまだ数ヵ月も経っていないのに、懐かしく感じてしまった。
近況という程のものではないが、雑談をして時間を過ごすとギルバートさんが迎えに来た。先に戻るように言われたナターシャは「また教えてください!約束ですからね、先生!」と勢い良く告げて行った。
「今日も先日も、娘が本当にお世話になりました」
「いえ、元気そうで何よりです」
どうやら改めて礼を、と言うことで挨拶に来てくれたようだった。
「わざわざすみません」
「いえ、こちらから足を運ぶのが筋かと」
爽やかな笑みを浮かべながら改めてお礼を言われると、少し深刻そうな表情を浮かべた。
「どうかされましたか?」
「いえ……少々気になることがございまして」
「何でしょう」
「テオルートの事です」
「…………」
思わぬ話題に一瞬表情が固まる。こういう時に仮面を崩して動揺を見せてしまう辺り、まだまだ王妃教育が足りないと反省してしまう。
その反応を見たからか、ギルバートさんは慎重に話し始めた。
「テオルートは昔から伯父上……陛下に絶対的な敬意と尊敬を持っていました。それが延長した為に、隠密部隊の統括をしていると言っても過言ではありません」
「………」
「あくまでもテオルートがそれを抱いてるのは伯父上限定です。……なので、少し得たいの知らない不安が過りまして。こんなことをフィリシーナ様に告げるのもおかしな話なのですが、どうか気をつけてください。確信めいた話ではありませんが、警戒に越したことはないかと」
実の兄弟でも何かを察知している姿を見ると、いよいよ本格的にテオルートさんと向き合わなくてはならないと本能が告げる。
「……ありがとうございます。一つお伺いしてもよろしいですか?」
「何なりと」
「テオルートさんについて、もっと詳しく教えて欲しいんです」
「…………わかりました」
例え嫌われていたとしても、ここから目をそらしてはいけない。その原因を突き止めて、どうにか行動に移さなければ。
そう考えるのはできるが、実際どうするかはなにも目処が立っていなかった。
とにかく、自然に関われる機会を待とう。変に接触すれば刺激を与えてしまうかもしれないから。
頭のなかでぐるぐると策を練りながら、ギルバートさんの話に耳を傾けた。
学校再開まで待つ方がよいのかも。
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