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五章

61 side ローゼ

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 念願が叶った。

 ずっとお会いしたかったお兄様に会えた。これだけで胸が暖かい気持ちでいっぱいになる。

 久し振りに会えた嬉しさの反動で、別れの時は気分が想像以上に沈んでしまった。帰国前に必ずもう一度会いに行くことを一方的に取り付けて、馬車に乗り込んだ。

「……ローゼ、その。よかったな」

「はい!」

 恐らく私の口角は上がりっぱなしだろう。それに対してフィリウスが複雑な想いなことも、再会のあの時から感じている。

「久し振りにお会いできて……胸がいっぱいです」

「それは良かった。ローゼの言う通り、全く恨まれていなかったな」

「安心しましたか」

「あぁ、とても安心した」

 挨拶する直前までは緊張を感じていたが、穏やかなお兄様の様子を受けて、一瞬で余計な力が抜けたのがわかった。

 お兄様こそこういう場面はよく緊張してしまう人だが、国王陛下の後の一侯爵ではそれも必要ないだろう。

「良かったです、無事に挨拶ができて」

「……そうだな」

 どこか寂しさを含む笑みは、私の胸をくすぐる。

「……ずっと、紹介したかったんですよ」

「息子達のことだろう?従兄弟同士だと言うのに、初めて会うのがこんなに遅くなって申し訳なかったな」

「確かにそれもそうですね」

「?……あぁ」

「もちろん息子達も紹介したかったですよ。自慢の息子ですから」

 一呼吸して、フィリウスの瞳を見つめる。

「でも私が一番お兄様に紹介したかったのは貴方ですよ?何せ誇るべき旦那様ですからね」

 これは間違いなく本心だ。
 自分の選択に間違いも悔いも一切なく、ただ幸せな花道だけを歩んでいることをお兄様に伝えたかった。そしてその幸せを作ってくれたフィリウスは、私にとって掛け替えのない存在なのだ。

「フィリウス。私は貴方と共に歩む道を選んだことを今でも正しい選択をしたと思っています。もちろんこれからも幸せにしてくれるんですよね?」

「あぁ……あぁ、もちろんだよローゼ……!」

 番である私の関心がどこかへ行ってしまうのではないかと、彼が常々心配にしてきたことはもちろんわかっている。

 だからその度に、こうして何度も言葉にするのだ。

「でしたら、帰国前にもう一度会う時は一緒に行きましょうね?お兄様も喜んでくださるわ」

「ローゼが許してくれるのなら、私ももう少しお義兄様と話がしてみたい」

「もちろんですよ!今更なんてことはありません!老い先はまだまだ長いんですから、これからどんどん親睦を深めましょう」

「それが一番だな」

 ようやく見ることのできたフィリウスの笑顔に安堵しながら、再びお兄様達に会える時に胸を弾ませていた。


 
 心配性な貴方も大好きですよ。
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