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五章
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しおりを挟む「お兄様……っ!!!」
扉が開かれた瞬間、お父様の姿を捉えたローゼ叔母様は一目散に駆け寄った。
その姿は幼い妹そのもので、初めて見る姿だった。
それは侯爵も同じようで、嬉しいようなそれでもどこか悔しいような苦しいような形容しがたい表情となっていた。
叔母様は本物か確かめるように、お父様の手を握る。
「ローゼ……元気にしていたかい」
「はい……」
二人の様子を見ると、あぁ本当にこの二人は兄妹なんだと謎の気持ちが込み上げてきた。
「お兄様は……老けられましたね」
「それについては反論できないな。事実だから」
「それでも健康そうで何よりです」
「お互いに」
笑みを向け合う二人の姿は、こちらまで嬉しくなるものだった。セドとシトさんでさえ暖かな目を向けていた。
水を差すのも悪いと思い、少しの間二人の再会を見守っていたが、父親のもどかしい思いを察したシンが口を開いた。
「お母様?再会を邪魔して悪いのだけれど、お互いに紹介してもらっても」
「そ、それもそうね!」
「あ……すまない」
場を立て直して挨拶を交わす。
「妹がお世話になっております。お会いするのは初めてですよね」
「は、はい」
「お兄様、夫のフィリウスです。貴方、兄のイグニードです
公爵と侯爵同士挨拶をする隣で、私はシンとエディさんにラドを紹介していた。
「シーナ!久しぶりね!!」
「久しぶり、シン!エディさんもご無沙汰しております」
「いやこちらこそ」
「それで?そちらのイケメンがシーナの弟ね?」
「そうなの」
「…………初めまして」
「あたしはジェシンよ。こっちは兄のエディド」
「ラドナードです」
「よろしく」
不思議なものを見る目で自己紹介をする。
「ラドナード君、うちの弟はかなりの変わり者だが気にせず接してくれるとありがたい」
「は、はい」
「お兄様、言い方ってものがあるでしょう」
「最適解だと思うんだが」
「ふふふ」
「はは……」
珍しいシンの弟らしい姿を見て微笑ましくなる私と、反応に困るラド。
「それにしても不思議なものだな。従兄弟だと言うのにこの歳になって初めて会うというのも」
「完全にお父様のせいね」
「それには同意だな」
「……確かに不思議な気持ちです」
「あたしたち従兄弟よね?もっと砕けた話し方でいいのよラドナード」
「え」
「それもそうだな。是非兄と呼んでくれ。弟はいるがいないようなものだからな」
「ちょっとお兄様?!」
「シーナ、こんなに可愛い弟がいたら嬉しいものだろ」
「えぇ、とても」
「確かに可愛いけど!あたしも可愛いでしょ!」
「ジャンルが違う」
まともな掛け合いを見るのは初めてかもしれない。新鮮な二人のやり取りを見ながら、ラドは大丈夫か確認するとクスリと笑っていた。
シンは確かに印象強いよな……驚くのも無理ない。
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