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五章
閑話 嬉しい報せ
しおりを挟むローゼ叔母様視点です。
△▼△▼△▼
シーナがゼロ国へ来てから二年以上が経過した。番というものに不安を抱いていた彼女はいつの間にかいなくなり、自分なりに愛と向き合う強かな女性へと成長していた。その成長を自分の娘のように見守るのはとても楽しかった。
自分と重なる部分もあったが、圧倒的にシーナの立ち回りの方が上手だった。私の時は拒絶していることが多かったから。
最低でもシーナは月に一度、必ず顔を見せに来てくれる。そこにジェシンがいることもあれば、旦那様の横やりが入ることもあった。それが新たな日常として組み込まれたが、穏やかな日々に変わりはなかった。そしてまた夏を向かえるのだった。
「母様、こちらにいましたか」
「エディ、どうしたの。まさかまたあの人が面倒を起こしたのかしら」
執務中でもお構いなしに脱走し、私を探すものだからエディはいつも手を焼いている。昔は気づかれない場所で過ごそうとしたが、意味がないことに気づいてからは自由にしている。
「いえ。幸いにも仕事に打ち込んでおります」
「……何かあったの?」
十年以上連れ添ったからこそわかるが、あの人が仕事に長時間打ち込むのは極稀だ。
「その答えはこの封の中にあるかと」
「手紙……私宛に?」
「はい」
「あら、シーナからね。一体どうしたのかしら」
シーナとは夏を向かえてからはまだ会うことができてないが、手紙でのやり取りは最近は無かった為に驚きながら封を開けた。
「…………えっ」
内容を読むと、自然に手が止まる。
「……そんな」
それはまさにサプライズと言えるだろう。
「……お兄様が、こちらに……ゼロ国へいらっしゃるのね」
手紙でのやり取りは少しだけしていた実の兄。勘当されたこともあり、この国を離れることができずにいた。もう会うことはないと割り切っていたが、あまりの衝撃な話に嬉しくなる。
「そのようです。ちなみに父様宛に王家から招待を受けました」
「招待?」
「はい。是非とも王城に滞在してほしいとのことです」
「まぁ……」
シーナと陛下の配慮が胸に染みる。
「実は私とシンも呼ばれまして。ですので数日間空けても平気なように、執務を片付けています。あんなに本気で仕事をする父様は初めて見ますよ」
「家族として会えるのね……それは本当に嬉しいわ」
私がそう感じるのをわかっているからか、あの人はその後も一心不乱に仕事に打ち込んでいた。疲れた姿は中々見なかったが、頑張ってくれているあの人に感謝を込めて優しく接した。「ローゼが天使だ…」と感動しながら抱きつかれたが、今回ばかりは抱き返した。その後はジェシンも加勢して、何とか終わらせられたようだ。
久しぶりに、本当に何十年ぶりにお兄様に会えるのが嬉しくてたまらない。
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