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五章
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しおりを挟むあれから二年経ち、私は20歳を迎えた。三年間通うこととなっていた専門学校も、今年で卒業となる。学生として過ごす最後の夏は、普通ならば進路に悩み不安な期間となる。だが、私はある程度卒業後の流れは決まっているために、他の学生と比べて平和な夏を迎えられた。
この二年の間、個人的に舞踊の技術はとても向上したと思う。学校内に設置された舞台に所謂身内だけの発表として披露する機会は何回かあった。ニナ先生が現役で活躍していてお金を取る本格的な舞台には、学生なので当然ながらに上がっていない。一度だけでいいから上がりたいという気持ちと、今は別の事を色々取り組まなければならないという焦りが心の中で混ざりあっている。
実は一年前から、少しずつ王妃教育を始めた。元々自国では王太子妃教育を行っていたため、幾分かは楽なものだった。しかし、歴史や他国との交流に関しては学んでも学びきれないものがあり、まだまだ学習が足りないと感じる。将来、公の場でセドの隣に立つための知識がまだ十分に身に付けられていない。これに関しては努力するのみだ。
それでも比較的穏やかな夏休みに突入し、今日はいよいよラドとお父様がゼロ国へと訪問しに来る。
「やはり嬉しいですか」
「えぇ、もちろん」
到着予定の時刻となり、出迎えのために裏門へと向かっていた。
私とセドの婚約は卒業後に発表されるために、今はまだ伏せられている。その為に一応の配慮として、サン国からの訪問は秘密裏に行われている。
ラドはラドで次期国王としての教育に励む日々を過ごしていたようだ。素質が十分にあるとされたラドだが、周囲の貴族に文句を言わせないためにも圧倒的な能力を持とうと努力し続けているという。お父様はそれにある意味振り回されるのだとか。とは言え、まだ現サン国王はご健在なのでラドが即位するのも先の話だが。
シトさんとは初対面となるが「有能な弟君に会えるのがとても楽しみだよ」と穏やかに笑っていた。優秀な人から弟がそう評価されると、とても胸が踊るというもの。それと同時に、ラドに負けないよう自分ももっと励もうと感じた。
「フィナ」
「セド、二人は来ましたか?」
「もうすぐだそうだ」
「それは良かった。何だかセドも楽しそうですね?」
「イグニード殿に会えるのが嬉しくてな」
「それはお父様も喜びますよ」
「そうか?だと良いのだが」
裏門前で待機を少しすると、いよいよそれらしき馬車が見えてきた。
今回実はローゼ叔母様も、王城へと来ている。お父様としては本当に何十年ぶりとなる妹との再会だそうだ。当然ながらに侯爵も来てはいる。
すぐそこに馬車が見えながらも、早く二人の顔が見たいと強く思った。
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